フィリピンのかき氷と知恵オタク I

この日も寒汰はパサイの日本食料理屋、エダモト(仮名)に来ていた。

寒汰がエダモト(仮名)に来る時間はだいたい決まっている。

エダモト(仮名)トラベルのスタッフがまかないの食事をとっている時間を狙って来ることが多いのだ。

一緒に食事をしてくれる男も女もほとんど居ない寒汰にとって、エダモト(仮名)トラベルのスタッフは貴重な存在であった。

もちろん、エダモト(仮名)トラベルのスタッフにとってはいい迷惑なのであるが、他人の気持ちを一切考えたことのない寒汰は、エダモト(仮名)トラベルのスタッフがどれだけ嫌がっているかなど全く気にせず

いつもまくし立てるように話をするのが常であった。

この日も、シャブを打った直後の人間のように寒汰はエダモト(仮名)トラベルのスタッフに異常に興奮した様子で話しかけていた。

エダモト(仮名)トラベルのスタッフは、食事の中にゴキブリの大群が飛び込んできたかのごとく、嫌そうな顔をしながら寒汰の話を聞いていた。

.

「いいか? パスポートの更新はな、通常なら三週間もかかるだろう?でもな、俺はそれを三日間にする方法を知ってるんだ。どうだ?知りたいだろう?ゲヒヒヒヒ」

『バカの考えることなどどうせろくでもない』とエダモト(仮名)トラベルのスタッフは苦々しい顔をしながら返事もしなかった。

「そうか?知りたいか? じゃあ教えてやろう。それはな、『日本以外の海外公館で発給』を受ければいいんだよ。パスポートを紛失したことにして再発行してもらえば3日で新しいパスポートが手に入る。どうだ?俺は賢いだろう? 俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ」

やっぱり、犯罪か、バカの考える浅知恵などその程度のことだ、と呆れながらエダモト(仮名)トラベルのスタッフは流し聞いていた。

しかしスタッフの呆れる表情にも全く気づかず、さらに寒汰は調子にのって続けた。

「それにな、そうすれば有効なパスポートが2つ手に入るから便利だろう?どうだ?俺は賢いだろう?ゲヒヒヒヒ」

おまけに寒汰は何か悪いことでも考えているらしい。

スタッフはせっかくの食事をこの臭くて汚い男に台無しにされたこともあってムカムカしてきた。

『そういえば、寒汰の次のパスポートの更新は2012年の3月だったな。奴のパスポート番号は確か  TG◯8458◎9 。

この根性の腐りきった男が虚偽の申請をする前に、日本大使館領事部に通報しておくか』そうスタッフは考えた。

犯罪者が犯罪予告をしているのに、それを通報するのに善良な市民が躊躇う必要はない。

だいたい、この男には散々嫌な思いをされてきたのに、謝罪されたことすら一度としてない。絶対に通報してやる。

そう、スタッフは固く心に誓った。

そんなスタッフの正義の決心も知らないでシャブを打った直後の人間のように寒汰は一方的にしゃべりまくっていた。

「ゲヒヒヒヒ、俺はな、美人は嫌いなんだよ。美人は生意気だろう?俺が5000ペソ出すから中田氏させてくれと言っても一度もさせない生意気な女ばかりだ。だからな、俺はブスが好きなんだ。どうだ?俺は賢いだろう?俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ」

寒汰が本当は美人が大好きで、マニラ・ベイカフェでも必死で綺麗な娘を追い回している、しかし、全く相手にされないだけなのだ。

「頼む!凸凹なしでいい!デートだけでもしてくれ!」と頼み込んでいるのは魔尼羅では有名な話で、スタッフも何度も友人たちから聞いていた。

『何が美人が嫌いだ。美人が嫌いなのではなく、大好きで好きで好きでたまらないのに相手にされないから負け惜しみを言っているだけだろう?

だいたいお前はブスに5000ペソ払うと言っても、中田氏は断られてるじゃねーか。自分のその気持ち悪い顔を鏡で見てみろ。

普通の女ならどんなに金をもらってもテメーみたいな気持ち悪い男は相手にしないぜ!バーカ』

そうスタッフは内心で毒づいた。長年の寒汰の無礼な行動で、寒汰への怒りはもう爆発寸前までたまっているのだ。

.

寒汰はそんなスタッフの怒りに気づくこともなく、また一方的に話を続けた。

「ゲヒヒヒヒ。今度はかき氷の話をしてやろう。フィリピンのかき氷はまずいだろう?俺はな、その理由を知ってるんだ。なんといっても俺は知恵オタクだからな。ゲヒヒヒヒ」

スタッフはあきれた。寒汰は自分のことを「知恵オタク」とよく自称する。

が、その自称知恵オタクの知識はとんでもない間違いばかりである。

1990年代からフィリピンではスターバックスもあったしホテルで普通にうまいコーヒーも飲めたのに

「フィリピンにはインスタントコーヒーしかなかった」

と、凄まじい勘違いを平気で言う男なのである。

メニューに載っているBrewed Coffee の Brewed の意味も発音も分からないので、

インスタントコーヒーの注文しかできず、だからマニラ・ベイカフェにもインスタントコーヒーしかないと思ってるような低能な男である。

『知恵オタクというより無知オタクだろうが。どうせかき氷に関しても間違いだらけの勘違いを聞かされるだけだろう』

スタッフは心のなかでそうつぶやいたが、寒汰の勘違いはスタッフの想像を遥かに超えていることにこの時点ではまだ気づいてなかった。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

2 Responses to フィリピンのかき氷と知恵オタク I

  1. 芋洗坂係長 says:

    かき氷がまずい理由を楽しみにしておりますwww

    • ははは。元在住者某Kさんの受け売りですが「数十ペソの超群に食事の文句を言ったらいけない」ですねw

      その数十ペソの超群のかき氷がフィリピンのかき氷の全てだと思う寒汰ってww

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