プルトニウムとサマール島 II

「ゲヒヒヒヒ、お前、分かっているようだからいい話を聞かせてやろう。あのな、エッサコンプレックスがあるだろう?」

EDSAを寒汰は「エッサ」と呼ぶのだが、フィリピン人は誰しも エ「ドゥ」サと呼んでいる。

(このニュースでもフィリピン人のアナウンサー、レポーター共にはっきりとエ「ドゥ」サと発音している)

寒汰のように外国語のセンスがかけらもない人間にはどうも有声子音が正確に聞き取れないようなのである。

聞き取れない音はないものと認識するので、「エドゥサ」が「エッサ」に聞こえるようだ。

他にも Club Asia を「エーシア」と呼ぶ人間が多いが、これも有声子音の聞きとりに問題があるのが原因のようだ。

Asia の発音はもちろん、エー「シ」アではない。フィリピンでも米国でも英語は e’iʒə (エイジァ)である。

ご興味のある方は、下のページの左下にある「音声を聞く」ボタンを押していただきたい。有声子音の “ʒ” がはっきり聞き取れる。

http://translate.google.com/#en|ru|asia

さらにアンヘレスのことを「本当のスペイン語の発音はアンゲレスだ」とか「アンヘルスだ」と主張する人間がいるようだが、筆者が知る限り、スペイン語ではアンヘレスはアンヘレスである。

http://translate.google.com/#es|en|angeles

筆者はスペイン語はよく分からないのだが、「アンゲレス」「アンヘルス」というのは、日本人にしか通じない特殊な和製英語、和製タガログ語、和製スペイン語の類であると思われる。

.

「エッサって?? エドサコンプレックスのことですか?エドサコンプレックスなら僕、大好きです!」

takashi は大きな声で答えた。takashi のエ「ド」サという発音の方がまだフィリピン人には通じるだろう。

8年間フィリピンに毎月通っている寒汰よりも takeshi の発音の方がより正しいとは皮肉なものだ。

「そうか、お前も好きか。ゲヒヒヒ。いいか?エッサコンプレックスに火の家という店があるだろう?あの店がいいんだよ。ゲヒヒヒヒ」

ここでフィリピン初心者の takeshi は、ぽかんという顔をした。EDSAコンプレックスの火の家とは、もしかして、あの店のことを言っているのだろうか。

takeshi の表情を見て寒汰はいらついた。

「なんだ?お前、火の家もわからないのか。英語が出来ないんだな。火の家だよ、ファイアーハウスのことだろうが。あれは火の家のことだろう?お前は英語をもっと勉強しろ!」

寒汰に限らず、フィリピン通いのオサーンは、ファイアーハウスを「火の家」と呼ぶ人間が非常に多いのだが、彼らは分かっていてわざと「火の家」だと言っているのだろうか?

筆者は長年ずっと疑問に思っているのだが、彼らはもしかして消防署の英語を知らないのではないのだろうか?

ファイアーハウスは内装も消防署をフィーチャーしているので間違えようがないと思うのだが。

彼らは消防士は「炎の男」で、消防車は「火のエンジン」だと思っているのだろうか。

.

「あ、はい、やっぱりファイアーハウスのことでしたか。火の家って言うんですね。それ、フィリピン英語ですか?」

(※ もちろん、ファイアーハウスが「火の家」など、フィリピン英語ですらない。日本人オサーンたちにしか通じない特殊な言葉である。)

すると寒汰は激怒した。

「バカっ、ファイアーハウスが火の家だというのは正当なクイーンズイングリッシュだ。俺の英語力を尊敬しろ!」

寒汰は激怒した。そして、自分の「クイーンズイングリッシュ」を誇示するためか、大声でウェイトレスに声をかけた。

「おい、ミス、CR はまだ誰か入ってるのか?」

クイーンズイングリッシュどころか、ほとんど日本語である。

そもそも、現代の英語では客が店員に「Miss」と呼びかけることはまず無いし(逆に従業員が客を呼ぶ場合なら筆者は聞いたことがある)、トイレのことを英語では CR とは絶対に言わない。

調べたところ CR (Comfort Room) は、戦前の米語だという情報があったが詳細は不明である。いずれにしても、それがイギリス英語ということはありえない。

「どうだ?俺の英語は流暢だろう?俺はすごいだろう?俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ」

相好を崩してニタニタと笑い転げた。自分の英語力の素晴らしさに酔っているようだ。

.

CR など、フィリピンで「英語」と思われているが、実はフィリピン特有の表現で他国では通じない単語や表現は多い。

フィリピン英語は、アメリカ英語やイギリス英語とはかなり違うのだ。

さらに、フィリピン嵌りのオヤジが話す言葉はそのフィリピン英語ですらなく、日本人同士でしか通じない完全な和製英語なのだが、寒汰のような頭のおかしな人間にはそれが正統派のクイーンズイングリッシュと思えるようである。

.

寒汰のようなフィリピン嵌りの日本人の多くは英語が全くできない。

正直言って信じがたいほどできない。

はっきり言って中学校卒業レベルの英語さえできない。

発音も文法も単語もめちゃくちゃである。

フィリピンのスタッフが会議であんな英語を使っていたら(英語にすらなってないが)、申し訳ないが私ならそのマネージャーに次の契約更新はしないように(つまりクビ)と伝えるレベルである。

.

フィリピンに関わるようになって驚いたことはいくつもあるが、こと英語に関しては三度驚いた。

まず、フィリピン嵌りの日本人の英語の酷さに驚いた。彼らが英語だと思っている言語もはや英語にすらなってない。英語に似た別の何かだ。

あれでは周囲のフィリピン人もわかったふりをするのが大変だろうと思う。

そして、二番目に驚いたのは、そんな英語の酷さにも関わらず「俺、英語ができる!」という人間が多いことである。

何をどう勘違いしたか、寒汰のように自分が話すベタベタの和製英語(つまり英語ではなくて日本語)がクイーンズイングリッシュだと勘違いしている人間までいるから驚きである。

.

筆者は外資系企業で長年つとめてきていて、10年以上、日常の業務をほとんど英語で行う環境にいる。

昨年からは米国の本社に移籍して働いているので仕事でも家でも周囲との付き合いも全て英語になっている。

しかし、自分の英語力はまだまだ恥ずかしいレベルだと思うし、毎日勉強してもしても全く足りないと思っている。

日くれて道遠しだとというのをつくづく感じる。

だから、寒汰のようなオサーンが「俺、英語ができる!」と自慢しているのをみると、その自信がどこから生まれてくるのか不思議で仕方がない。

いや、ある意味羨望さえ覚えるのである。

.

そして、さらに驚いたのが、そんな出鱈目な英語(英語にすらなってないが)を話す人間を見て

「凄い!凄い!この人は英語がうまい!」

と、褒める人間がいることである。

どうみても、文法も単語も構文も、論理構成もめちゃくちゃな英語、発音も恐ろしく酷い英語、そんな英語を書いたり話したりする人間を褒めるのはどういう神経なのだろうか?

これがフィリピン特有のホスピタリティというものなのだろうか。

それとも強烈な嫌味なのだろか。

まさかあのような和製英語のオンパレードが英語だと本気で思っているのだろうか。

.

「俺、英語得意!俺、凄い!俺、偉い!ゲヒーーーーーーーー!」

「凄い、凄い!寒汰さんは天才だ!」

今日も寒汰の奇怪な声と、takeshi の素っ頓狂な声が魔尼羅(マニラ)の空にこだましていた。

.

余談になるが、フィリピンにハマる日本人が作り出す奇っ怪な和製タガログ語、和製英語には枚挙のいとまがない。

また、SMを未だにシューマートと呼び続けるように数十年前の呼称を未だに使い続ける場合も多い。

SMのホームページを見れば、はっきり spell out して◯◯パー◯ールと書いてある(もちろん英語で)。

もはやシューマートは正式名称でないことは明確にわかるのだが、多くの場合はその企業の正式発表より「マハルコがこう言った」「知り合いの日本人がそう言っていた」方が真実と思えるのだろう。

自分の目で見るものよりも、マハルコや他の日本人が言うことの方が真実と思えるのはどういう思考回路なのだろうか。

更に面白いのは、彼らはなぜ元々の名称が「シューマート」だったかも分からないようである。シューなど今や小学校で習う英単語なのだが。

SMを未だにシューマートと呼ぶのは、日本語が分からない外人の集団が平成の現代になっても未だにJRを「国鉄」と呼び続けるようなものだ。

日本人でさえもはや忘れかけている単語を保存してくれているのは文化人類学的には貴重でさえある。

ガラパゴスのイグアナ並に長年外界から遮断をされていた貴重な集団だからである。

(※ ところで、なぜ彼らが SM という abbreviation すら調べられないのか、鋭い指摘を頂きました。彼らは調べようにも英単語の綴りさえ分からないのではないか、というものです。筆者はこの説に驚きつつも納得しているところです。)

.

空港にいるタクシーをイエロータクシーと呼ぶのもどうかと思う。見た目が黄色だからイエロータクシーなのだろうか。

空港のメータータクシーは既存のタクシー会社が運行しているのであって、別にイエロータクシーという特別なタクシー会社があるわけでもないのだが。

彼らは東京のタクシーのことをグリーンタクシーとかイエロータクシーと呼ぶのだろうか?

.

これは知っている人も多いかと思うが、「ソクソク」はタガログ語では SEX を意味しない

ソクソクを SEX の意味で使うのはじゃぱゆきだけである。

普通のフィリピン人に「ソクソクターヨ」と言ってポカンという顔をされたことのある人は少なくないと思う。

「一緒にコンセントにプラグを差し込もうよ」など意味不明だから仕方ない。

それなのに、自称フィリピンベテランの寒汰は「ソクソク」はタガログ語で SEX を意味すると思い込んでいるのである。

.

さらに、ロロロラも誤用が多い。ロロもロラもタガログ語で年老いた老人のことを指すわけではない

日本語の「爺」「婆」は祖父母の意味とは別に、年老いた人間に対する蔑称でもあるのだが、タガログ語は違うのだ。

(恥ずかしながら筆者もこれは知らなかった。)

つまり「あいつはジジイだから」と言う意味で「 lolo na siya kasi」と言うのはおかしいのである。

.

フィリピンのことを知り尽くしているはずの自称フィリピンベテラン自称知恵オタクの寒汰がこれらを混同しているのはどういうわけなのだろうか。

正直言って、寒汰のような自称フィリピンベテランは、英語でもタガログ語でもない、別の言語を話しているとしか思えないのである。

(プルトニウムとサマール島 完)

.

(※ 本エントリで紹介したおかしな英単語、タガログ語の収集に関しては、いもさん、ACさん、ぐーすさんのご協力をいただきました)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

10 Responses to プルトニウムとサマール島 II

  1. ぐーす says:

    ワロタ。 CA州のL.Aは ロスアンヘルスになるわけだ!! L.Aはロスといっても米人にはほぼ通じないけどLasVegasはベガスで通じるのが最近ちょっときになるのですがww

    • 違いますよ。アンゲレスですよw でも、本当にアンゲレスとかアンヘルスとか書いている人がいるんですよね。
      本当にスペイン語でそう言うのか、息の長い釣りなのかw

      LAは、USでは L と A の音がリエゾンするのが米国らしいですかね。カタカナのエルエーとはちょっと違う。

      Las Vegas はベガスだけで通じるんですね。それは意識しませんでした。

      しかし痛いオサーンに言わせるとサンフランシスコの略称は「サン」なんでしょうか?
      サンノゼもサンマテオもサンタクララも全部「サン」なのかもしれません。

      ニューヨークの略称もきっと「ニュー」ですね。
      「新鮮」過ぎてカッコイイですww

  2. AC says:

    Zamboangaをザンボアンガ、
    Zambalesをザンバレス、
    というベテランも多いですね。

    (ただし米国人などがそう読む/呼ぶのは個人的には許す w)

    • スペイン語では Z の発音は S と同じでしたっけ。
      Zamboanga がサンボアンガなんて有名なのに、「ザ」ンボアンガという人がいるんですね。

      語学が全く出来ない人って本当に有声子音と無声子音の区別が苦手ですねw
      日本語の有声子音と無声子音の区別もつかないのかもしれまん。
      そういえば、Visa を「ピザ」と呼ぶ人が居たとか居ないとかww

      Zambales はマニラに近い割には知名度がないですよね。おじさんたちの大好きなスービックがあるのにww

      米国人がそう読むのが許せるのは分かります。
      パリスもプラーグもズーリックも、それはそれである読み方として確立されてますからw

  3. joe says:

    僕も長い間「ソクソク」かと思っていました。Pパブで覚えたタガログ語は駄目ですね。(笑)

    正しく(?)は kantutan。 動詞になると mag が付くと思います。

    過去形になると nag が付くのかな?ちょっと曖昧。

    • かく言う私もかなり長い間、ソクソクは普通のタガログ語だと思ってました。
      フィリピンに来るようになって、お水系でないお姉ちゃんに「ソクソク」と言って通じないのでようやく気づいた次第です。
      いや、本当にPパブタガログ語を使ってたのは恥ずかしいです。アコディバ語族を笑えないレベルだったと思います。

      (不定相) kantutan
      (完了相) nagkantutan
      (未完了相) nagkakantutan
      (未然相) magkakantutan

      ですかね。
      mag 動詞なんて一番簡単なのに、ほとんど忘れてました。

      kantutan tayo だけははっきり覚えてましたがw

      • マタンダン ララキ says:

        セックス未来形はカントウタン、セックス進行形はキナカントウ、セックス過去形はキナントウ
        と思いますが。寒太のお話 面白いですが、結構自分にも当てはまる指摘が多く 、ドキドキしてます。

      • マタンダンララキさん、

        おっしゃっている変化は受動態の時の変化ではないでしょうか。

        たぶん、能動態は mag であってると思います。
        (私はタガログ語の動詞の勉強は基本形しかやってないので、たいして自信はないのですが)

        寒汰に関しては本質を見ぬかれてますね。
        寒汰ははっきり言ってどうしようもないクズですが、その行動の一つ一つを見れば、我々一般の人間も少なかず持っている欠点なのですよね。
        寒汰が滑稽なのも、また我々寒汰リークス研究班の関心をくすぐり続けるのも、そういう理由があるからです。

        もっとも、あそこまで人間の欠点を凝縮した存在にはあまり近づきたくはありませんがw 研究対象としては面白いですね。
        また、反面教師としては最高の存在だと思います。

  4. KJ says:

    paruparoってまだ言われています?

    うちの女子社員に聞いても通じなく、babaeroが正しいと教えて貰いました。寒汰いわくの日本語環境との日本のPP周辺だけの言葉みたいですね。

    あとべテラン。
    そう言われたらまだ若いし(最近加齢臭たっぷりですが)現役だと言い張りますw
    USでもexpertの意味で使うことあります?

    • paruparo で浮気者の意味は、本来のタガログ語ではないようですね。
      私の昔のブログエントリに、浮気者を意味する英単語をまとめているのがあるので、
      ご興味があればご覧ください。

      ただ、インドネシア語では、浮気者をさすのに蝶を意味する「クプクプ」を使うようです。
      検索すると自分の Tweet が出てきましたw

      ベテランは、微妙なところです。
      英語の veteran は「退役軍人」「退役した」という意味でもあるんですが、
      日本でいう「ベテラン」=熟練者 という意味で使うことも確かにあります。
      ソフトウェア業界の熟練経営者をCEOに引き抜いてきたら

      XX company hires software veteran as its CEO

      と新聞に書かれたりします。この場合の veteran 退役軍人を意味するようなネガティブな意味はありません。
      ポジティブな意味です。

      だから、フィリピンベテランは、とてもおかしな表現とは個人的には感じてますが、
      間違いとまで言い切れるかは微妙だと思っています。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。