ハンドフリーな恋 II

瑠奈がトイレを出たところでみたのは、異常に気持ち悪くニヤニヤしながら手にもったチョコレートを握りつぶしている寒汰の汚らしい姿であった。

「ゲヒーーーーーー!お前、トイレ長いな。俺に会えたのが嬉しくてマ◯コ洗ってたんだろう?ゲヒヒヒヒ」

あの気持ち悪い顔を異常に紅潮させた寒汰が言った。

なんと寒汰は瑠奈がトイレに入っている一時間の間、ずっと女子トイレの前で瑠奈を待ち伏せしていたのである。

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寒汰はタガログ語も英語も全くできない。

フィリピン初心者に対して「お前はもっとタガログ語を勉強しないとダメだ!」と言う癖に、自分自信はその初心者よりもタガログ語ができないのだ。

何せ、ブレックファストメニューのことを和製英語で「モーニングセット」と呼んだり、EDSA が「えっさ」に聞こえるほどの凄まじい語学力をしているのである。

スニークアウトやショーアップの意味を勘違いしたままそれが正しいと思い込んでいる痛い人間より、さらに語学能力が劣るのだ。

英語だろうがタガログ語だろうが、日本語以外の言語を覚えるなど全く無理なのである。

そんな寒汰が持って帰れる女は、日本語が話せる元じゃぱゆき娘くらいしかないのだ。

だから寒汰がこれまでマニラベイカフェで連れて帰った女はほぼ全員元じゃぱゆきなのであった。

売春婦が大量にいても、寒汰にとっては選択の余地がない。彼女らの大半は日本語が話せないからだ。

そして、元じゃぱゆき娘の瑠奈はその寒汰の数少ないターゲットの一人だったのである。

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ガタガタ震え、小便をもらしかけている瑠奈に寒汰が何かを差し出した。

それは、寒汰の体温で完全に溶けて異常に汚らしく凄まじく臭くなったあのチョコレートであった。

もちろん、寒汰が買ったものではなく、ホテルのフロントからくすねてきたものである。

「おい、お前、これ食え。バレンタインデーに俺からチョコレートもらって嬉しいだろう?ゲヒヒヒヒ。」

恐怖におののく瑠奈には、それが何かの血に見えた。

「ひぃっ!やめて!」

と、瑠奈は叫んで寒汰の手を振り払った。どろどろに溶けたチョコレートが飛んでいった。

マニラベイカフェの常連たちも何が起こったのか振り向いた。

「おい、なんだお前、俺のチョコレートがいらないのか? 恥ずかしがるな。フィリピン人チョコレート好きだろう。いくらでも食え。」

寒汰は、ほこりがたんまりついたチョコレートを拾ってきてまた瑠奈に差し出した。

それを見ていた売春婦景子はぽつりと言った。

「私たちフィリピン人は確かにチョコレートが好きだけど、あんなチョコレートだけは死んでも食べたいとは思わない。瑠奈、可哀想に。」

しかし、寒汰はそんな他人の冷たい視線にも気づかずに瑠奈にずんずんと詰め寄った。

「ゲヒヒヒ、今日はバレンタインだ。お前、これ食う。そしてお前俺にもっと惚れる!俺、モテモテ!俺、偉い!ゲヒッヒヒヒヒッヒヒ。」

妄想と現実の区別がついていない寒汰であった。

寒汰がモテるのは自分のブログでだけであり、現実の寒汰は釧路のスナックでも、フィリピンパブでも、マニラベイカフェでもどこでも、世界中の女性から最も忌み嫌われるタイプ。いわゆる生理的に受け付けられない男なのだ。

しかし、寒汰にその自覚はなかった。

しまいに瑠奈は泣き出した。

「もう、許してよ。これ以上、私につきまとわないでよ。私が何をしたっていうのよ?あんたみたいな気持ち悪い男につきまとわれるくらいなら地獄に落ちた方がましよ!」

しかし、タガログ語が全く分からない上に、異常に妄想癖の強い寒汰にはこれが全く違うように聞こえていた。

「チョコレートなんていらないの。私が欲しいのは、あなたのあ・い・だ・け。愛情がいっぱい欲しいな。前はホテルに連れていってもらえなかったから今日はお洒落して待ってたんだ〜。今日こそは一杯仲良くしようね♪」

世界でもトップクラスの妄想力を誇る寒汰には付ける薬はなかった。

「ゲヒヒヒヒ、お前そんなに俺とホテルに行きたいか。俺、モテモテ!俺、偉い!偉すぎる!ゲヒーーーーーーー!」

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とうとう瑠奈はぶち切れて暴れ始めた。瑠奈が必死の形相で寒汰に罵声を浴びせるようになると、さすがに寒汰も嫌われているのが少しは分かったようだ。

「おい、お前、『こんなものいるかー!』『ホテルに連れて行け!』『飯じゃなくカネよこせ!』と言っているのか。なんだ俺の体とカネ目当てということか。がっかりだな。」

瑠奈は寒汰とホテルなど一言も言っていない。これまた寒汰の凄まじい勘違いなのであるが、かろうじて瑠奈が寒汰を嫌がっていることだけは伝わったようである。

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嫌われていると分かった寒汰は機嫌が悪くなった。瑠奈から離れ、持ち込んだJINROチャムシルをガブガブと飲み始めた。

「あんな女とは二人っきりで飯を喰うことはないな。ホテルで一緒に過ごす気持ちを抱かせる娘は、そう居るものではない。一目惚れでもしそうな可愛い綺麗な娘でも、言葉や態度が一瞬でも悪いと嫌な予感がするから俺は敬遠してしまうだけだ。」

「恋でも出会いでも………日本で長い人生を送り、幾度もフィリピンに渡航して男と女の関係も知り尽くしている俺。『知恵の悲しみ』だな。知ってしまうことで、それまで「美味い」とおもっていたものが不味く感じたり、「楽しい」と思えたものもつまらなくなるものだ。」

日本では女性に異常に嫌われて「20年以上たった今でもあの気持ち悪い人間を思い出すだけで吐き気がする」と女性に口をそろえて言われる寒汰。写真を見ただけで「4500ペソどころか4500ユーロもらっても無理。どんなにお金がなくてもこんなのは相手にできない。」と言われる寒汰、そんな寒汰が、

「男と女の関係を知り尽くしている」

と、どの口で言うのだろうか。

さらに自分が嫌われたからと言って「あんな女とは飯を一緒に食うことはない。ホテルで一緒に過ごしたいとは思わない」「金が目当て」とは、どんな負け惜しみなのか。

そういう見え見えの負け惜しみを言うからますます女にも男にも嫌われる。それが23年前から変わらないことを寒汰は気づいていなかった。

そして、寒汰はJINROチャムシルをまたしてもガブガブ飲みながら独り言を続けるのだった。

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「フィリピンの恋の際大なる障害は『アンフェア』。『ハンドフリーな恋』の幻想のベールが剥がされ、つまらない金銭関係が簡単に透けて見えることだ。全然燃えない。つまんない。」

これを聞いていた周囲の日本人が呆れ返ったような顔をした。

当たり前である。「ハンドフリーな恋」とは一体どんな恋なのか。両手を縛られたまま、ハグ禁止でする恋なのだろうか。

文脈から考えて、「自由恋愛」あるいは「金の絡まない恋」と言いたいようだが、前者なら free love 後者なら cost-less love あるいは unconditional love というところだろうか。

(※ 隣の席の同僚によると non material-based love, non materialistic love あたりが良いのではないかとのこと。また、love from a non gold-digger という表現もあるとのこと。gold digger は面白い。)

いずれにせよ、「ハンドフリーな恋」はありえない。フィリピンに行く人間は手が使えないのであろうか。

さすがはモーニングセット英語の寒汰である。

英語がわからないならわからないと素直に言えばいいのに、無理して背伸びするから恥をかくのである。

「ハンドフリーな恋」、手を使わない恋愛(一体どんな恋愛なのか?)が世の中に実在するかどうかはわからないが、少なくとも寒汰の頭が知性フリーなのは誰の目にも明らかであった。

(ハンドフリーな恋  完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

12 Responses to ハンドフリーな恋 II

  1. デバンガーZ says:

    様々なエピソードを拝見するに、氏の問題点は「語学が出来ないこと」ではないように思えてきた。
    なぜならば、小生の拙い観察経験においても、指差し会話帳を使ったり、はたまた日本語オンリーであったりも、比国や泰国の夜を十分に楽しみ、かつ店の女性からも好感を持たれる(少なくとも嫌われない)遊び方をしている方々を散見するからである。
    要は「語学が出来ない」のではなく「そもそもコミュニケーション能力(姿勢や意欲も含む)がない」のが氏の最大の問題点ではないだろうかと思われ。

    • 全くそうですね。
      寒汰は根本的にコミュニケーション能力に欠けますね。
      20年以上前、国鉄勤務時代、そしてスナック舞子に通っていたことから変わらないようです。
      日本語でも全くコミュニケーションがとれなかったようですw

      もちろん語学も全くできません。
      基本的に地道な努力を全く行わない人間ですから。
      でも、それでいて他人に対して
      「お前はもっとタガログ語を勉強しろ」
      と、偉そうに言い放つのは滑稽ですねww

  2. gaga says:

    老師、相変わらずの見事な翻訳、だてに寒汰研究家を名乗っているわけじゃありませんね。

    まあ巷には何も知らないのに自称フィリピンベテラン、日本語すら危ないのに語学のエキスパート等危ない人が沢山いますから(爆)

    ピーナはチョコレートが死ぬほど好きですね。以前、暗黒喫茶のウエイトレスにテキーラ1杯飲んだら明治アーモンドチョコレート1粒あげるってやったら大盛況でテキーラのボトル2本空いちゃいました。翌日二日酔いで休んだウエイトレスが居る程ですよ。

    チョコレート3箱、テキーラ2本、ピザ等で5000ペソ以上遣ってしまいました。失業中ですからあまりお金は遣えないんですけど、偉人マザーテレサも「自分が痛みを感じてください。」って言ってましたからホテルからガメて来たチョコレートをプレゼントするなんて事は恥ずかしくて想像も出来ませんでした。

    お陰でブラ外したり、おっぱい触るくらいじゃ誰も怒りません。せいぜい「後で別の場所でね!」って言われるくらいです。

    どうも寒汰氏は小学校時代の先生に言われた

    「人の嫌がることを進んでやれる人間になれ」

    という言葉を間違って解釈して現在に至っている気がします、、、、

    • joe says:

      はっはっはっ!面白いですね。
      「人の嫌がることを進んでやれる人間になれ」を
      『人の嫌がることろ進んでやれ!』とDNAに刻んでしまったんでしょうね♪

    • タイガー says:

      私も大笑いしましたww

      「人の嫌がることを進んでやれる人間になれ」

      なるほど寒汰大先生は言葉通りに実行されてますね。
      俺も見習おっとw

    • いつも正確な情報のレポートありがとうございます。

      チョコレートの件、教えていただいた内容をできるだけエントリに取り込んでみました。

      5千ペソ、有効な使い方だと思いますよw
      ただ、ウェイトレスにレイプされそうですねw

      ホテルのフロントからがめたチョコレートをプレゼントするとか、
      それを恥ずかしげもなく自分のブログで書くとか
      (ケチることが偉いこと、他人に自慢できることだと思い込んでいるのでしょう)
      ありえない男ですね。

      「人の嫌がることを進んでやれる人間になれ」は、今日のエントリで使用させていただきましたw

  3. JAM says:

    フィリピンの恋の際大なる障害は『アンフェア』

    際大なる障害とは???

    ぎゃはははは

    • 寒汰ブログは珍語のオンパレードですねww

      際大なる障害とか、IMEで普通に変換されない誤字をなぜかけるのか、とても不思議ですww

  4. gaga says:

    キッタないオサーンの相手をして大金を欲しがるのはフェアです。

    大金を払ったのに裸足で逃げられるのはアンフェアです。

    キツイ仕事で給料が高いのはフェア、楽な仕事で安月給も「楽だから仕方がない」と思えるのでフェア。

    安くて不味いレストランはフェア、高くて美味しいレストランもフェア。

    両者の関係が長続きするのはフェアであるかどうかが関係します。「同じレベルで愛し愛されてる」と思うカップルは長続きする傾向にあるそうです。

    素晴らしいサービスには沢山チップをあげたくなりますね。

    アンフェアな場合、フェアにしたいという気持ちが発生するので執着してしまうそうです。

    愛人に大金をつぎ込んだから別れるまであと何発やればお風呂屋さん並みのコストになるなどと考えてしまうのはその執着らしいです。

    非常識人がホテルからガメてきたチョコレートをあげて感謝されないと思う事はアンフェアだと思う気持ちです。それにより非常識人に執着が発生し、毎月成田からマニラに向かうわけです。

    世界の常識的なフェアの考えから大きく逸脱しているのがフィリピンだと思います。嵌って抜けられなくなる人が多いのはそこに原因があると思います。

    強烈なタンブンをしても顔色ひとつ変わらなくなればフィリピンから解脱できるでしょう。

    • フェアネスと関係の長さの考察、ごもっともだと思います。
      アンフェアだとフェアにしたい、元をとりたいというのも納得です。

      これは、文化人類学的には「交換」心理的な負債で説明します。
      いずれ、プラスティックブログの方で書こうと思っていますが、少しだけ紹介すると
      人間は、表のコミュニケーションの裏側にもう一つ別のコミュニケーションを行っています。

      「お、今日も綺麗だね。いつもほんとに素敵だね。」
      と女性に言う場合、女性に対して「貸し」をつくろうとしているわけです。
      (状況によっては失敗します。気分を害すれば逆に借りをつくることになります。)

      「貸し」をつくると多くの場合、将来返してもらうことが期待できます。
      この貸し借りを好意/悪意の交換と名づけます。
      人間は表面上のコミュニケーションの裏でこういうことを潜在意識の中でやっており
      これは人間の関係性を築く上で基本的な作用になっています。

      人は理屈では納得できても感情的に納得できないことがあるのは、この裏の好意/悪意の交換がイーブンになってないことが理由です。

      それでも、教養のある人間、知性の高い人間はこの裏が少なく、理屈の比重が高いのですが、
      暗黒な人間は裏コミュニケーションの比重が高くなります。

      雇われて、金ももらっているのに雇用主の悪口ばかりを言ったりするのはフィリピンによく見られますが、
      それは彼らが表の契約関係より、裏コミュニケーションの比重が高いことに起因します。

      ま、それについてはプラスティックブログの方でいずれ詳しく説明したいと思います。

      自称フィリピンベテランは「日本の常識、世界の非常識!俺、フィリピンに来て国際派になった!俺、偉い!」と言う人が少なくないのですが、
      フィリピンの常識のほうが遥かに世界的に非常識だということに気づいてないですよね。

      ま、それに気づくような人はフィリピンから解脱している可能性が高いというのは仰るとおりですw

  5. vinci says:

    以前から疑問に思っていたのですが、英語もタガログ語もできずに、フィリピンでどうやってお姉ちゃんをくどくのでしょうか?
     やっぱり、日本語のできるお姉ちゃん限定なのでしょうか?
     指差し手帳もありますし、人それぞれでしょうが、なんとなく気になって・・
     それ以前に日本語しかできないのにマニラまで行って心配じゃないのでしょうか?(まぁ、私も英語タガログは中途半端レベルですが)
    大きなお世話でしょうけど・・・
    素朴な疑問ですw

    • はっきり言います!口説けてません。
      ただ、お姉ちゃんたちは、彼らが何をしたいかは何も言わなくてもよくわかっているので
      金が期待できる場合は、体を開くだけですよ。

      ま、若くてカッコよかったり、語学以前に女の子うけするコミュニケーション能力を持つ人(おじさんでもたまにいるので侮れないです)なら語学は関係なく口説けるでしょうけど。

      そう、日本語がしかできないのに、しかもガイドブック程度すら全く読まずに海外に行く神経は信じられません。
      そんな人間が大量にいるのが魔尼羅の不思議なところです。

      イミグレカードの書き方をわざわざブログに書いたり、それをありがたがって読むような人間の生態は
      非常に興味深いですね。

      他の国にそんな珍獣たちはまずいませんよw

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