マニラベイカフェそばのレストランにて I

児玉は長い前髪が特徴の若い日本人である。

今回、マニラで仕事に出張できていたが、仕事も早く終わったので、噂のマニラベイカフェへとやってきたのである。

マニラベイカフェでは多くの女が色めき立って児玉を見つめた。

若い日本人は珍しいからである。

なお、マニラベイカフェに居る女を観察していると面白いことが分かる。

彼女たちは、好みの男が来ると目を輝かせて秋波を送るが、寒汰のような異常に気持ち悪い嫌な男が来るとそっぽを向く。

それでも、しつこく粘着質にそういう気持ち悪い男に見つめられると

彼女たちは腕を組み、上目遣いで口を半開きにして苦笑を浮かべるのだ。

これは、彼女たちの拒否サインなのだが、他人の気持ちが全く分からない、特に女とまともにつきあったことが57年間一度もない寒汰には、この拒否サインが見抜けるわけもなかった。

寒汰はこの拒否サインを見るたびに「ゲヒヒヒヒ、俺に惚れているな。ゲフッ」と正反対に勘違いしているのであった。

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児玉が連れだした女の名前はこずえ。幼い顔だが年齢は23歳である。

まずは食事を一緒にしようということになり、こずえに連れられて児玉はマニラベイカフェの近くのレストランに入ることになった。

そのレストランに入った瞬間、児玉は吐きそうになった。

凄まじく臭いのだ。

あまりに高濃度の放射線が発散されている場所では独特の臭気がするというが、その臭いはまさにこんなものだろうか。

その臭気の元は、もちろん、あの男、人間プルトニウム、寒汰であった。

寒汰は今日も一人で「ゲヒヒヒヒ」と嫌な笑い声を浮かべながらグッチャグッチャと汚らしく食べ散らかし、

いつものJINROチャムシルをガブガブと飲んでいた。

もちろん、JINROチャムシルは勝手に持ち込んで、水と氷は店から無料でくすねているのである。

普段はマニラベイカフェで何時間でも粘って座っている寒汰であるが、最近はマニラベイカフェにいる女どもに総スカンを食らっているのでさすがに出入りしにくくなっていた。そこで、こんな近くの店で粘っているようだった。

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この日、児玉とこずえはトコトンついていなかった。

店内にはその凄まじく臭い寒汰のそばしか席はあいていなかったのである。

しかし、これは当たり前である。他の客は誰も異常に臭くて気持ち悪い寒汰のそばなど座りたくないからである。

モーセが紅海をひらいたように、寒汰が店に座るとその周辺の席からは人がいなくなるのが常であった。

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席に座ったものの、こずえはとても嫌そうな顔をしていた。

実は、こずえは以前から何度も寒汰にマニラベイカフェで声をかけられていたのである。

寒汰の見た目は異常に気持ち悪い。

寒汰は不自然に染めた髪の黒さも異様だが(毛染め薬代をケチるために近所のドブ川のドブを塗りつけているという噂もある)、あの獣のような目付きも尋常ではない。

そしてなにより脂肪が垂れ下がっているとしか形容のしようがない不摂生きわまりないような外見は、女にとって生理的に受け付けられないのだ。

寒汰があの獣のような気持ち悪い目付きでじーっと眺めてくると、こずえはいつも腕を組んで上目つかい、そして口元に苦笑いを浮かべる、あの拒否のポーズをいつもするのだったが、寒汰はそれを全く勘違いしてこずえが自分に気があると思い込んでいた。

57年間、一度も女と付き合ったことのない寒汰には女の気持ちというものを全く理解できるわけがなかった。

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こずえも恐ろしく嫌そうな顔をしているのを見て、児玉は「この店はやめて別のところに行こうか?」と言った。

「オオ」とこずえが頷いて席をたとうとした瞬間、その後ろにいた悪臭獣、寒汰が突然声をかけてきた。

「ゲヒヒヒヒ、こずえ、お前、男を連れているのか。俺に紹介しろ。ゲヒヒヒヒ」

あの例の地の底から響いてくるような太く低い嫌な声だった。

こずえは思わず身震いした。

なお、この日、寒汰の方からこずえに声をかけたのであるが、寒汰は自分のブログにこう書いている。

(こずえに)声をかけられれたからそれなりに(話をした)

いつものことだが話を180度、勝手に作りかえる寒汰であった。

ちなみにエダモト(仮称)でも寒汰が無理やり他人の話に割り込んでくることは多いが、みずから望んで寒汰のような気持ち悪い臭い男に声をかける人間は誰一人居ないという。

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寒汰はいきなり、児玉に言った。

「おい、お前在日か?」

児玉は、面食らった。海外、特にマニラで話しかけてくる日本人にろくな人間はいないが、いきなり「お前は在日か」と聞いてくる人間などいない。

児玉は在日でもなく、在日に対してプラスもマイナスもなんの感情も持っていなかったが、いきなり「在日か」と言われると無性に気分が悪くなった。

たった一言でここまで他人を不快な気持ちにさせる男は児玉の務める会社、クサナーレにいる上司の土屋以外では初めてだ、と児玉は思った。

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「ゲヒヒヒヒ、マニラに居る東洋人は、日本人、在日人、韓国人、中国人の4つがいるんだ。どうだ?俺は物知りだろう?偉いだろう?尊敬しただろう?ゲヒヒヒ」

いきなり声をかけてきて、なぜそこまで在日にこだわるのか、児玉には全く分からなかったがとにかく不快な気持ちだけは倍増した。

実は、寒汰が在日にこだわるのは、子供のころ、母親が寒汰を完全に無視して他の在日の人間の相手ばかりをしていたことに起因するようだ。

しかし、そんな寒汰の個人的な感情など他人の児玉には知った事ではない。

初対面でいきなり「お前、在日か」と聞かれて気分がよいはずがない。

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「俺か?俺はな、正義の味方なんだ。年収が3千4百万円もある偉い男なんだ。お前の2倍以上あるだろう?どうだ?俺は偉いだろう?俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ。」

初対面でいきなり自分が正義の味方と名乗る男はいない。しかも聞かれてもいないのに年収を言い始めるとは常軌を逸している。この男は気が狂っているのだ、そう児玉は思った。

「ゲヒヒヒ、そうだ。いいものを見せてやろう。」

そう言うと、寒汰は突然、水をお椀に入ったご飯にぶっかけて水浸しにした。

そして、それをスプーンでぐっちゃぐっちゃとかき混ぜながら、汚らしく食べ始めた。

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あっけにとられたのは児玉とこずえだけではない。

店内にいた誰もが驚いた。

仮にもまっとうなレストランでそんな異常な行動をする人間など見たこともないからだ。

ぐっちゃぐっちゃと嫌な音をさせて汚らしくご飯を食べ終わった寒汰は、あの獣のような気持ち悪い目でこずえを凝視して言った。

「ゲヒヒヒヒ、お前ら、フィリピンの貧乏人はこうやって飯を食うんだろう? どうだ? これで相互理解が深まったな。ゲヒッヒヒヒッヒヒヒッ!」

フィリピンでも本当の本当の貧乏人が全く何もおかずがないとき、ごはんに水をかけて食事をすることは極稀にある。

しかし、それでも、お茶漬けのようにご飯を水に浸すわけではない。

そもそもフィリピンの皿ではご飯を水には浸せないのだ。

さらに、そんな食べ方は間違っても外出先のレストランでは絶対にしない。

そんなものをいきなり見せつけられて「お前ら貧乏人の食い方だろう?」と言われても、バカにされているとしか思えない。

そんなもので相互理解が深まるわけがない。

憎しみが募るだけである。

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児玉とこずえがあきれ果てているところにさらに止めをさすことを寒汰は行った。

寒汰は児玉たちが来るまで、鯖を汚らしく食べ散らかしていた。

身はもうほとんど残っていなかったのだが、その鯖の食べさしを汚らしいビニール袋に突っ込んで、こずえに渡したのである。

「おい、お前らフィリピン人は余り物を持って帰るんだろう?俺のたべさしがもらえて嬉しいだろう?俺を尊敬しただろう?俺を好きになっただろう?ゲヒヒヒヒ」

日本以外の国ではレストランでの食べ残しを持って帰る文化があるが、本当の食べ差しをもって帰るのは自分の分か、せいぜい家族までである。

他人のためなら、持ち帰り用に別にオーダーをするのがマナーである。

ろくに知らない男にいきなり食べさしを渡されても、それは嫌がらせでしかない。

喧嘩を売っているのかと思えるほどである。

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寒汰などの自称フィリピンベテランによくある傾向なのだが、「フィリピン人を大事にしろ」「売春婦を尊重しろ」と偉そうにいう人間に限ってフィリピンの文化も精神性も、女性心理も全く分かっていない。

彼らは自覚してないようであるが、そういう偉そうなことを言う人間に限って深層心理ではフィリピン人を見下し、バカにしていており、自分の優位性を誇示して自分の日頃のストレスのはけ口にしているのである。

少なくともフィリピン人や女性心理が分かっている人間が、いきなりレストランでご飯に水をぶっかけて食うことなどしない。

自分の食べ差しを見ず知らずの人間にいきなり渡すこともしない。

自称フィリピンベテランが他の人間に「フィリピン人を大事にしろ」「売春婦を尊重しろ」というのは、自分が理解もしていないので怒られたことを他人に転嫁しているだけなのである。

つまり自称フィリピンベテランは、自分たちの誤った行為の自覚がない上に、その咎を他人に押し付けることだけは熱心なのである。

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

正義の味方の友達

寒汰は自分のことをよく「正義の味方」と呼んでいた。

未曽有の震災、東日本大震災が起こった後、人助けをするどころか真っ先にフィリピンに逃げてきた寒汰。

毎日買春をしているのに加えて、最近では義援金詐欺まで行っている寒汰のどこが「正義の味方」なのか、常人には理解しがたいのだが、

やはりスーパーヒーローには一般人には理解出来ない崇高な考えがあるのだろう。

なお、筆者や寒汰リークスメンバーが意見が一致したところは以下の三点である。

  • 自分で「正義」とか「正義の味方」という善人はいない
  • 非常時こそ人間の本性が分かる
  • 非常時に真っ先に逃げ出す奴は友人としても人間としても信用できない。付き合いたいと思わない

なお、常軌を逸した「正義の味方」寒汰は、エダモト(仮称)トラベルにも数々の破壊工作を行っていた。

寒汰が紹介する客は尽く凄まじい迷惑客で、エダモト(仮称)トラベルは寒汰が誰かを連れてくるたびに大損をしていた。

本日もそんな寒汰が紹介した迷惑客についいてとりあげたい。

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リストランテ「ぼんやり味」(仮名)経営 土屋氏(仮名)

土屋はレストランチェーン「ぼんやり味」の経営者である。

寒汰の紹介でエダモト(仮称)トラベルを経由して5つ星のマバホホテルに宿泊するようになった。

なぜ、わざわざエダモト(仮称)トラベルを経由して、ホテルの予約するのか筆者には大きな謎だったのだが、どうもフィリピンに通うフィリピンベテランの大半が自分ではホテルの予約すらできない、凄まじい語学力の持ち主たちであるのが理由のようだ。

なお、Agoda が日本語インタフェースを備えたことは、彼らにとって世界の三大発明より大きな革命的事件だったと言われる。

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マバホホテルでは朝食に和定食付、ビュッフェ付等選べるのだが、土屋は和定食で予約していた。しかし、当日になってビュッフェの席に座ったので、ウェイトレスに和定食の場所はそこではないことを指摘された。

すると土屋は激怒した。土屋や英語にならない英語で怒鳴り散らしはじめ、レストランは騒然となった。

そこで、日本語が話せるマネージャーが呼ばれてやってきた。

マネージャーは平身低頭に土屋にも分かるように丁寧に日本語で説明した。

すると、あろうことか、土屋はそのマネージャーの頭を殴打した。

信じられない凶行である。土屋は普段、部下に味音痴をばかにされて、よほどストレスがたまっているのだろうか。

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なお、土屋はどうも友だちが全く居ないらしく、いつ見ても一人で食事をしているそうだ。

友達がいない理由を聞かれたらきっとこう言うのだろう。「我、群居せず」

群れないことと、友達がいないことは全然違うのだが。

ブルサマール自動車(仮名)勤務 キムチ悪央(わるお)

悪央(わるお)は、世界に冠たるブルサマール自動車に勤務する男である。

(※ プルトニウム(Pu)「プ」ではなく犬の Bull の「ブ」である。また温度の形容詞であるサーマル thermal ではなく、Samar 島のサマールである。英語や中学生レベルの物理を少しでも知っていれば絶対に間違うわけがない。しかし知ったかぶりをして偉そうに原子炉を語る寒汰の友人、悪央が勤務するのはプルサーマルではなくブルサマール自動車なのであった。)

悪央は身につけているものから金回りがいいと思われるのだが、それでも外見が異常に気持ち悪い

やはり異常に臭くて気持ち悪い寒汰に紹介されてくるだけのことはある。

エダモト(仮称)に訪れる人間も皆、寒汰と親しげに話している人間には気持ち悪い人間の率が異常に高いと話している。

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この悪央は、ホテル内でも大声で怒鳴り散らすことが多かった。だからホテルの従業員も嫌でも悪央がどんな人間か分かってしまう。

そんな悪央の口癖はこうだった。

マニラで女を買うのは千ペソで十分だ!

さすが、寒汰の友達である。

年収が3千4百万円(本当はその半分にも満たない)もあると豪語するくせに、20ペソ単位で女に値引きを迫る寒汰に近い精神性を持っているようだ。

何ペソで女を買おうが個人の自由だが、それをホテル内に響き渡るような声で何度も叫ぶのは狂っているとしか思えない。

また、この悪央は他人や女に対する気遣いが全くなく、ホテルに連れ込まれた女は皆ゴキブリを丸ごと飲み込んでしまった直後のような悲惨な表情を浮かべているそうだ。

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さて、マバホホテル内には有名なレストラン、バッカナーレ(仮名)で事件は起こった。

なお、バッカナーレは The best restaurants in the Philippines (そういう Award があるのは筆者は知らなかったが)にも選ばれたことのある高級店である。

そこに悪央が怒鳴りこんだ。

「俺、下痢になった。このレストランの水のせいだ!」

それを聞いたマネージャー、普段から悪央の悪質な振るまいによほど嫌気がさしていたのだろう、きっぱりとこう言った。

「誠に申し訳御座いません。キムチ悪央様は非常に重要なお方だとお伺いしておりまして粗相があってはいけないと思い、

特別にエビアンで氷を作る様、指示しておりました。やはり氷が原因なのでしょう…. 申し訳御座いません。」

すると、悪央は照れ笑いを浮かべながらこう言った。

お腹の痛いの治っちゃった!

おおかた、レストランのせいにして憂さ晴らししようとでも思っていたのであろう。

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このように、寒汰がエダモト(仮称)トラベルに紹介した客は尽く騒動を起こし、ホテルやエダモト(仮称)に迷惑をかけている。

しかし、寒汰は今日もネモトにて無銭飲食を行いながらこういうのだった。

「ゲフーーーーー!エダモト(仮称)が大きくなったのは俺のお陰だ。俺、正義の味方! 俺、偉い!ゲヒヒヒヒ。」

マグロ子おばちゃん(仮称)のため息も日々深くなるばかりである。

(完)

フィリピンベテランの証

(下記の話は、兵藤和也さんから間接的に伺った話です)

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ある時、兵藤和也(仮名)はパサイの日本食料理屋、エダモト(仮称)でマグロ子おばちゃん(仮称)と談笑していた。

兵藤和也はまだ30代前半。マニラに来る日本人では若い方である。

ただ、若いと言っても語学力もあり、海外への渡航慣れもしていて順応性の高い兵藤和也はタガログ語もきちんとした文法で話し、行動能力はマニラ在住者も舌を巻くほどであった。

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そこに、突然、凄まじい悪臭が漂ってきた。

そう、あの寒汰が店に入ってきたのである。

店内に侵入してきた寒汰は誰も呼んでいないのに、勝手に兵藤和也の席に座り、馴れ馴れしく話題に割り込んできた。

どうも寒汰はネモトは自分の店、そこにいる客はすべからく自分のファンだと勘違いしているようだった。

そして、寒汰は人の話をさえぎって、聞かれてもいない自慢話を延々としはじめたそうだ。

ちなにに、この寒汰に対して兵藤和也が寒汰に抱いた第一印象はやはり「気持ち悪い」だったそうだ。

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「お前はダメだ!俺のようなモテ男になるにはまだまだだな。ゲヒヒヒ」

57歳の肉が垂れ下がって異常に醜く臭い気持ち悪いジジイが何を戯言を言うのか、と兵藤和也は思った。

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「お前は女心か分かっていない!でもな、俺は女心を知り尽くしているんだよ。ゲヒヒヒヒ」

母親以外の女性には半径5メートル以内には近寄られたことがなさそうな気持ち悪いジジイが女心を語るとはどんな冗談なのか?

頭がおかしいのではないかと兵藤和也は思った。

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「お前はダメだ!もっとタガログ語を勉強しろ!ゲヒーーー!」

少し話をすれば相手のタガログ語のレベルは分かるものである。

少なくとも寒汰が話すのは凄まじい日本語の発音で、しかも数単語しかタガログ語を知らないのは誰の目にも明らかだった。

その寒汰がタガログ語が流暢な兵藤和也に「タガログ語を勉強しろ」と言うのには、滑稽にもほどがある

兵藤和也は内心寒汰を馬鹿にした。

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兵藤和也がバカにしたのが、伝わったのか、寒汰は少しむっとしたようだ。

「いいか? 俺はな、フィリピンベテランなんだ。毎月フィリピンに来てるんだ。どうだ?すごいだろう。俺がな、フィリピンベテランの証をみせてやろう。ほら、これだ? どうだ?すごいだろう?ゲヒヒヒヒ」

寒汰が兵藤和也に見せたのは、Quota Visa だった。

兵藤和也は呆れた。

フィリピンに住んでいるわけでもない、ただ毎月通うだけなら別に Quota Visa (永住権が付与される)などいらない。

いや、出国税を毎回徴収されるわけだからむしろそんなものはない方がいい。

しかし、この寒汰は自分がフィリピンベテランだと自慢するためだけに4万ドル(約320万円)の金を積んで Quota Visa を取得したらしい。

そんなものを自慢する気がしれない、と兵藤和也は心底寒汰を見下した。

そもそも、寒汰は普段、一ペソ単位で金をけちるくせに、こういう無駄に数百万円も使うことが多い。

ケチや節約家どころか、単に金の使い方を知らないだけである。

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バカらしいので、兵藤和也は寒汰を置いて、とっとと帰ろうとした。

すると、場の空気が読めないらしい寒汰はこう言った。

「おい!これから飲みに行くぞ!ゲフッ」

兵藤和也は非常に不快な気分になった。何故こんなに汚らしい気持ち悪いジジイにいきなり命令口調で言われなければならないのか。

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どうも寒汰は相手が若いと舐めてかかる癖があるようである。

若い相手や自分よりフィリピン歴が浅い相手を連れ回して偉そうに説教することで、普段自分が周囲にバカにされている憂さを晴らしているようなのである。

しかし、たいていの人間は、少し付き合えば寒汰がろくにフィリピンのことを知らないことは見抜いた。

そして、嫌気がさした彼らは皆、寒汰とはすぐに距離をとるのである。

だいたい寒汰のようなトラブルメーカーに付き合っていると危険極まりない。

危険から距離を取る」とは、まさにこのことだろう。

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兵藤和也は気持ち悪い寒汰の誘いはきっぱりと断り、その後エダモト(仮称)には寄りつかなくなった。

男前で、おばちゃんにも優しい兵藤和也が寒汰のせいで店に来なくなり、マグロ子おばちゃん(仮称)の寒汰への憎しみもまた一層深まったという。

(完)

20ペソの節約で失う物 II

(下記の話は、マバホホテルのマネジメントから聞いた話です。)

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寒汰がエダモト(仮称)に紹介した客は尽くとんでもないトラブルメーカーばかりだった。

以前のエントリで紹介したとおり、エダモト(仮称)の担当者が謝っても「謝ればすむもんじゃない」と怒鳴りちらし

金を返そうとすると「金を返せばすむもんじゃない」と、延々と怒鳴り散らした男も寒汰の紹介した男であった。(実話です)

さらに、今日紹介するのはまた別の寒汰が紹介した客である。(これも実話です)

「マバホ・ホテル」(仮名)は、マニラが誇る5つ星ホテルの一つである。

ここにある時、ねもとトラベルから紹介された男、臨界男が宿泊した。

そう、この臨界男とはあの寒汰が紹介した客なのだった。

臨界男はホテルの部屋を恐ろしく汚く荒らし回ったあげく、その連れの女が部屋で髪を染めたらしく、シーツもバスタオルも台無しになってしまった。

当然、ホテルは客にシーツ代、バスタオル代を請求した。

すると、臨界男はかんかんに怒り出したのである。

「俺は、ホテル代を数千ペソも払った。だから俺は何があってもこれ以上、20ペソでも余分に払わねえぞ!」

ホテル代が何千ペソだろうが、ホテルの備品をダメにしたらその分支払いをするのは常識ある大人としては当然である。

どう考えてもホテルの請求は正当だと思うのだが、それを詐欺呼ばわりする人間は脳みそが臨界状態だとしか思えない。

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この臨界男は、ホテルとエダモト(仮称)トラベルの両方に嫌がらせのような抗議を執拗に行った。

何度も何度も、営業妨害かと思うほど電話攻撃をしたそうだ。

そして、マバホホテルのマネージャーはとうとう決断した。

「この臨海男はうちのフロントに出入り禁止の登録しとけ。エダモトにもこの客の評価トリプルCで送りかえしとけ!」

さすがは寒汰の友達、臨界男、マバホホテルの出入り禁止となった。

類は友を呼ぶというものであろうか。

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それにしてもマニラはさすがに暗黒都市である。

5スターホテルといえど、さ日本で大倉や帝国などに泊まることのない臨界男のような人間が客層なのだ。

だから想像を絶するトラブルが数多くあり、苦労が絶えないそうだ。

そもそも、仮にも5スターのホテルに泊まるからには、金だけでなく客にそれなりの品格が求められるのである。

バスタオルやシーツを台無しにするような非常識な女を連れ込むこと自体おかしいし、万一シーツやタオルを台無しにしたら気持よく払うのが5スターホテルの客としてのマナーである。

出入り禁止になるまでごねて弁償額をケチるような客は客ではない。

臨界男や寒汰のように、20ペソ単位でケチる客は、たった20ペソと引換にもっと大きな何かを失っていることに気がつかないようなのである。

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なお、エダモト(仮称)トラベルでは、今や寒汰が客を紹介するたびに担当者は顔が真っ青になるそうだ。

寒汰がこれまでに紹介した客でエダモト(仮称)トラベルは大損害をうけている。

しかし、寒汰の押し付けがましい紹介を断ると寒汰本人の執拗な嫌がらせを受けてさらに損害を受けることになるので、泣く泣く引き受けているのが現状だそうだ。

(20ペソの節約で失う物 完)

20ペソの節約で失う物 I

この日も寒汰はパサイの日本食料理屋、エダモト(仮称)に来ていた。

通常よりも長い魔尼羅滞在である。

それも仕方がない。異常に怖がりの寒汰は釧路に帰るのに福島上空を飛ぶのが怖いのだ。

震災が起こった直後は、福島上空を飛ぶのを怖がってフライトを変更したり、

福島上空半径千キロは飛行するなと、JALのカウンターでだだをこねて、一騒動を起こしたほどなのである。

そもそも釧路から羽田に飛ぶのに福島上空千キロも離れたら、沖縄以外の日本のどこにも着陸できない

そもそも、釧路も千キロ圏内なので、離陸すらできない。

しかし、社会の知識がゼロにも等しい寒汰にはそんなことも分かるわけがなかった。

ともあれ、異常に小心者の寒汰はガタガタブルブル震えながらマニラにやってきた。そしてそのまま日本に帰る様子はなかった。

福島上空を飛ぶことがなにより怖いのだ。そのことを想像するだけで小便を漏らすことはもちろん、脱糞してしまいそうになる寒汰であった。

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テレビでは避難所の様子が映されていた。

それを見て、寒汰は大声で怒鳴った。

「おい!政府の奴ら、ちゃんと食料を避難所に送れ!被災者は食事も満足にとってないんだぞ!その気持を考えたことがあるのか!お前らは食事抜きだ!」

そう叫びながら、寒汰はムシャムシャバリバリと、下品に無料の付き出しを食べた。

既にこれで69個目だった。無料のものなら、いくらでも食べる寒汰であった。

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「全く、毛布もちゃんと送ってるんだろうな!寒がっている被災者の気持ちをちょっとは自分も体験してみろってんだ。」

そして、寒汰はマグロ子おばちゃんに大声で叫んだ。

「おい!マグロ子!ちょっと暑いぞ!俺がいる時は気温23度設定。1度でも狂わせるな!といつも言ってるだろ!? 俺が快適じゃなくなったらどうするんだ? 今日も金は払わんぞ!ゲフッ」

誰よりも暑さにも寒さにも我慢しない寒汰であった。

さらに、いつも金を払わない寒汰であったが、この日も無銭飲食するつもりのようだ。

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「ゲヒヒヒ、政府批判をする俺ってかっこいいな。俺、正義の味方!俺、偉い!ゲヒーーーーーーーーーッツ!」

寒汰は自分のことを「正義の味方」と言うのが口癖だった。

しかし本当の正義の味方なら、人が困っているときに真っ先に母国から逃げ出したりしないものなのだが。

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「おい!そこのお前、帰る前に俺に金を払っていけ。義援金だ。俺はな、釧路だから全然被害は受けてないが、震災で俺の心が傷ついたんだよ。だから俺に金を払え。ゲヒヒヒヒ。震災で金を儲ける俺は賢いだろう?」

寒汰が声をかけた男は宮城出身で津波で親戚の行方がわからなくなっていて悲しみにくれていた。

しかし、寒汰はそんなことはからっきし気にしていなかった。

他人が受ける一万の苦しみよりも、自分の取るに足りない感情の方が大事なのである。

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「おい!お前、俺のことをケチだと思ったのか?」

寒汰はあの猛烈な悪臭を漂わせ、獣のような気持ち悪い目をぎらつかせながら、隣の客に絡んだ。

「俺はな、ケチじゃないんだ。年収3千4百万円もある俺がケチなわけがないだろう?ゲヒヒヒヒ」

年収の額とケチさは全く別だった。さらに寒汰の経営する臭皇(くさおう)の売上が3千4百万円なのであって、寒汰の年収はその半分以下なのだ。しかし、算数すらできない寒汰には店の売上が自分の年収と思い込んでいた。

「俺はな、年収三千四百万円もあるんだ。お前の収入の倍以上あるだろう?どうだ?俺は偉いだろう?ゲヒヒヒ」

寒汰は世の中の全ての企業が、国鉄並の安月給だと思い込んでいた。

銀行や外資企業につとめていれば、半分の千七百万円どころか二千万円以上の年収のある人間は珍しくないのだ。

しかし、国鉄勤務時代に一度も昇進できなかった寒汰にはそんなことが分かるわけもなかった。

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「おい、マグロ子!お前の出身地は福島なんだってな?じゃあ今回被害にあったな。」

(※ マグロ子おばちゃんの出身地は本当に福島です。エダモト(仮称)に居らっしゃる方は、お気遣いください。)

周囲のものは少し驚いた。他人の心がどんなに傷ついても気にしない寒汰でも、さすがに福島出身者には気遣いをするのか、と皆が思った。

しかしその期待は数秒後に裏切られた。

「お前の親族、全員死ぬな!放射能でやられて100%ガンになるぞ。ゲヒヒヒヒヒヒ」

寒汰は心の底から嬉しそうに笑った。他人を不安がらせるのがなにより好きな寒汰だった。

「福島の原発はな、核弾頭だ。もうすぐ核爆発するな。ドカーーーーン!ゲヒヒヒヒ」

原発では兵器のような核爆発はおこりようがない。そもそもシステムが全く違うのだ。もちろん、小学生レベルの理科の知識もない寒汰にはそんなことは分からなかった。核と名前がつくものは全て核爆発すると思い込んでいるのだ。

また、寒汰は放射線を浴びたら必ず死ぬものだと思い込んでいた。

どうも知性が寒汰並だと、世の中の現象はすべて「ある」「ない」の二つの状態しかないと思うようである。

確率が高くなる、低くなるということは全く理解出来ない。

凄まじく単純な脳みそであるが、ホモサピエンスを超えた珍獣では致し方ないのであろう。

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「おい!福島だけじゃないぞ。東京もな、すぐに死の灰が降って壊滅だ。お前らが今食べてる魚はな、日本から輸入した魚なんだ。だからな、プルサマールが入っていてお前らはすぐにガンになるな。ゲヒーーヒヒヒヒッッヒヒヒヒ!俺は物知りだろう?俺は偉いだろう?俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ」

寒汰はプルサーマルをプルサマールと勘違いしていた。英語ができないので、フィリピンのサマール島 Samar と温度の形容詞である thermal が同じに思えるからだった。

さらに、普通のウラン燃料の燃料棒の中にもプルトニウムが入っていることなど小学生レベルの理科の知識すらない寒汰には分かるわけがなかった。

それにしても、寒汰がでっちあげるデマの中身はひどかった。そんなとんでもないデマもとい嫌がらせを言う男など、誰も尊敬できるわけがなかった。

しかし、他人の気持ちを傷つけることには全く無頓着で、なにより自分が知ったかぶりすることだけに関心があった。

知ったかぶりさえすれば、人が褒めてくれると思い込んでいるのだ。

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「プルサマールはな、プルトニウムのことなんだ。プルトニウムはな、半減期が2万4千年あるから放射線が強い物質なんだ。一粒でも飲んだら確実にガンになって死ぬんだよ。いいか?魚を食べたお前らは全員死ぬんだ。確実に死ぬな。ゲヒヒヒヒヒ」

ちなみに、多くのマスコミも未だに大きな勘違いしてるが、放射性物質は一般に半減期が短いものほど強い放射線を出す。

考えて見ればあたりまえで、同じ原子数ならば、半減期が長いということは、時間あたりに崩壊する原子の数は少ない、安定した物質だということなのだ。

さらに半減期が短ければその後生成される娘核も放射性物質の可能性があり、さらに時間あたりの放射線は強くなる。

だから原子の数と原子あたりの放射線強度が同じならば、半減期が短い物質ほど要注意なのである。

プルトニウムが怖いのは半減期が2万4千年あるからというよりは、モル単位での放射線強度の強さ、そして人体への吸収が比較的高く内部被曝しやすいことだった。

(しかし、プルトニウムは重たい原子で拡散しにくいため、原子炉から離れたところに住む人間に与える影響は少ないと言われている)

言われてみれば小学生でも理解できる理屈だったが、小学校の理科すら理解出来ない寒汰には分かるはずがなかった。

寒汰にはそもそも半減期が何かすら理解できてなかったのである。

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冷え込む被災地よりも、寒々しい空気がエダモト(仮称)を漂っていた。

寒汰のとんでもない知ったかぶりはもちろんだが、あまりに他人の感情を考えない発言に皆、しらけていたのである。

そんな空気の中、頭の弱い takeshi の素っ頓狂な声があがった。

「凄い!凄い!寒汰さんは物知りだ!寒汰さんほど科学に詳しい人はいない!寒汰さんが世界で一番頭がいい!凄い!」

知らない他人が聞けば嫌味かと思うような発言であったが、寒汰はそれを聞いて至福の表情で笑い転げた。

「ゲヒヒヒ!俺、褒められた!ゲヒヒヒヒ!俺、頭がいい!俺、物知り!俺、知恵オタク!俺、偉い!俺、偉すぎる!ゲヒーーーーーーーーーッツ!」

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「おい!マグロ子!このエダモト(仮称)があるのは俺のお陰だろう?俺は今週も客を紹介してやったよな。俺の貢献は絶大だな。ゲヒヒヒヒ」

それを聞いてふさぎぎったマグロ子おばちゃんの表情がさらに曇った。

寒汰が紹介する客というのはいつもとんでもない迷惑客なのだ。

出迎えの車が遅刻しただけでクドクドと文句をつけてきて営業妨害した客がいたのは以前のエントリで紹介したとおりだが、

今週寒汰がエダモト(仮称)トラベルに紹介した客もとんでもない客だった。

(続く)

架空メールで架空友人

寒汰ブログには不思議な記述が多くあるが、その一つはなぜか友人へのメールの返事がブログに書いてある、ことである。

メールへの返事ならメールで書けばいいのに、なぜわざわざブログに書くのか?

この摩訶不思議な現象の理由が判明したので、このエントリで解説したい。

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寒汰には友人が居なかった。

子供の頃、全く友達がおらず、母親でさえ、寒汰は相手にせず、在日韓国人、朝鮮人の世話ばかりしていた。

(それが理由で寒汰は韓国人を激しく憎悪するようになったようだ。)

中学時代、高校時代も友達は一人もいなかった。知ったかぶりでホラふき話ばかりする寒汰は虐められ抜いていた。

国鉄勤務時代、青木先輩がキャバクラ通いに誘ってくれたのも単に数合わせ、というか虐められ役として必要とされていただけで、他には口を聞いてくれる同僚も居なかった。

フィリピンに嵌るようになって寒汰が所属していたフィリピン系サイト、マニラ☆マニアでも、「あ・魔尼羅(マニラ)」(仮称)でも、パライソ(仮称)でも、全く友達はいなかった。

他人が教えてくれた情報をさも自分が見つけてきたかのようにコピペして知ったかぶりして一人大騒ぎする寒汰を誰もが嫌っていた。

やがて寒汰は他人にかまってもらいたくて、サイトを荒らしまわるようになった。

しかし、自分のドメイン名が表示されていたので誰の目にも寒汰の犯行だと明らかだった。

荒らしているのが自分だとばれているのがわかった寒汰は「弱ってしまった。頭を抱えてしまった。そうだ!IPアドレスが改ざんされたんだ!」と子どもでもつかないような見苦しい言い訳をしてさらに嫌われた。

皆に見捨てられた寒汰を可哀相だと思った TOSHIYA さんが、哀れんで寒汰をカガヤンデオロやイロイロ、タイのバンコクに連れていってくれるようになったが、やがて TOSHIYA さんも、寒汰の異常な知ったかぶりと悪臭に嫌気がさして、寒汰とは縁を切った。

「あんな気持ち悪いおっさんと付きおうとってもしゃーないで。あっちいけやで。ほんま寒汰のおっさんは気持ち悪いし臭かったわ。今、思いだしただけで寒気しよるで。がっはっはっはっは」

さらに、寒汰は仕事場でも誰にも相手にされてなかった。

社長とは名ばかりで、寒汰の仕事など何もなかった。飲食チェーン臭皇(くさおう)は、寒汰が居ないほうがよほど円滑に業務がまわっていた。

寒汰は毎日自宅にこもってひたすらテレビのワイドショーを見て、2ちゃんで人の悪口を書くだけの生活を送るようになって10年以上がたっていた。

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寒汰のブログ「魔尼羅 盗撮バージン」「好きです買春フィリピンLOVE」にも全くといってコメントが入らなって久しくなっていた。

そこで寒汰は、他人のふりをして自作自演でコメントを入れるようになった。

自分でコメントをいれることで、自分が人気があると見せたいのだろう。

この自作自演のコメント、寒汰は完璧に偽装していると思っていたが、周囲の人間にはバレバレだった。

寒汰の恐ろしく特徴的な文章がそのままなのである。素人が見ても寒汰自身が書いているのが分かるほどだった。

寒汰はまたしても魔尼羅在住者の笑いものになった。

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寒汰は悔しがった。そこで、今度寒汰が考えたのが架空メールだった。

本当はありもしないメールをでっちあげ、自分に友達がいるかのように偽装したのだ。

たとえば3月7日のエントリで、寒汰は以下のように書いている。

友人からMailをいただきました。

在マニラ日系糖尿病患者の方。

糖尿病患者=罹病者がすべて、インシュリンを注射しなきゃ成らない状態じゃないですからね。

記憶が無くなる状態で、意識を失い搬送。

膵臓機能が低下しているだけではなくて、低血糖も問題なのでしょう?

まずはしっかり日本のちゃんとした医療機関で、「糖尿病」と決めつけないで総合的に検査をうける方が良いのと違いますかね?

この寒汰が「友人」というのはこちらの Akira さん

私は Akira さんとは直接やりとりしたことはないが、Akira さんの友人である K さんが内情を通報してくれた。

Akira さん自身がこちらのコメント欄にも書いていらっしゃるが、Akira さんと寒汰は知り合いですらない

もちろん、Akira さんから寒汰にメールを出したことはない。

「友人から Mail をいただきました」など大嘘である。

寒汰は Akira さんのブログを読んで、勝手にメールをもらった話をでっちあげたたけである。

「ゲヒヒヒヒ!俺、架空メールでっちあげる!俺、架空友達作った!俺、賢い!俺、偉い!ゲヒーーーーーーーッ!」

寒汰がブログにメールの返事を書く理由..それは、架空メールをでっちあげ、架空友人をでっちあげるためだった。

しかし、在フィリピン日本人社会は寒汰が思う以上に情報の流れが早かった。

架空メールも架空友達も、とっくにバレてマニラ在住者の間で笑いものになっていることに寒汰は気づいてなかった。

「あ・魔尼羅(マニラ)」(仮称)を荒らしまわっていたのがバレバレだった2005年から寒汰の稚拙な行動は常に周囲の失笑を買っていた。

そして2011年の現在も、マニラの某所では、寒汰の珍行動をネタに笑い転げる人たちの声がしているのである。

(架空メール 完)

プルトニウムとサマール島 II

「ゲヒヒヒヒ、お前、分かっているようだからいい話を聞かせてやろう。あのな、エッサコンプレックスがあるだろう?」

EDSAを寒汰は「エッサ」と呼ぶのだが、フィリピン人は誰しも エ「ドゥ」サと呼んでいる。

(このニュースでもフィリピン人のアナウンサー、レポーター共にはっきりとエ「ドゥ」サと発音している)

寒汰のように外国語のセンスがかけらもない人間にはどうも有声子音が正確に聞き取れないようなのである。

聞き取れない音はないものと認識するので、「エドゥサ」が「エッサ」に聞こえるようだ。

他にも Club Asia を「エーシア」と呼ぶ人間が多いが、これも有声子音の聞きとりに問題があるのが原因のようだ。

Asia の発音はもちろん、エー「シ」アではない。フィリピンでも米国でも英語は e’iʒə (エイジァ)である。

ご興味のある方は、下のページの左下にある「音声を聞く」ボタンを押していただきたい。有声子音の “ʒ” がはっきり聞き取れる。

http://translate.google.com/#en|ru|asia

さらにアンヘレスのことを「本当のスペイン語の発音はアンゲレスだ」とか「アンヘルスだ」と主張する人間がいるようだが、筆者が知る限り、スペイン語ではアンヘレスはアンヘレスである。

http://translate.google.com/#es|en|angeles

筆者はスペイン語はよく分からないのだが、「アンゲレス」「アンヘルス」というのは、日本人にしか通じない特殊な和製英語、和製タガログ語、和製スペイン語の類であると思われる。

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「エッサって?? エドサコンプレックスのことですか?エドサコンプレックスなら僕、大好きです!」

takashi は大きな声で答えた。takashi のエ「ド」サという発音の方がまだフィリピン人には通じるだろう。

8年間フィリピンに毎月通っている寒汰よりも takeshi の発音の方がより正しいとは皮肉なものだ。

「そうか、お前も好きか。ゲヒヒヒ。いいか?エッサコンプレックスに火の家という店があるだろう?あの店がいいんだよ。ゲヒヒヒヒ」

ここでフィリピン初心者の takeshi は、ぽかんという顔をした。EDSAコンプレックスの火の家とは、もしかして、あの店のことを言っているのだろうか。

takeshi の表情を見て寒汰はいらついた。

「なんだ?お前、火の家もわからないのか。英語が出来ないんだな。火の家だよ、ファイアーハウスのことだろうが。あれは火の家のことだろう?お前は英語をもっと勉強しろ!」

寒汰に限らず、フィリピン通いのオサーンは、ファイアーハウスを「火の家」と呼ぶ人間が非常に多いのだが、彼らは分かっていてわざと「火の家」だと言っているのだろうか?

筆者は長年ずっと疑問に思っているのだが、彼らはもしかして消防署の英語を知らないのではないのだろうか?

ファイアーハウスは内装も消防署をフィーチャーしているので間違えようがないと思うのだが。

彼らは消防士は「炎の男」で、消防車は「火のエンジン」だと思っているのだろうか。

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「あ、はい、やっぱりファイアーハウスのことでしたか。火の家って言うんですね。それ、フィリピン英語ですか?」

(※ もちろん、ファイアーハウスが「火の家」など、フィリピン英語ですらない。日本人オサーンたちにしか通じない特殊な言葉である。)

すると寒汰は激怒した。

「バカっ、ファイアーハウスが火の家だというのは正当なクイーンズイングリッシュだ。俺の英語力を尊敬しろ!」

寒汰は激怒した。そして、自分の「クイーンズイングリッシュ」を誇示するためか、大声でウェイトレスに声をかけた。

「おい、ミス、CR はまだ誰か入ってるのか?」

クイーンズイングリッシュどころか、ほとんど日本語である。

そもそも、現代の英語では客が店員に「Miss」と呼びかけることはまず無いし(逆に従業員が客を呼ぶ場合なら筆者は聞いたことがある)、トイレのことを英語では CR とは絶対に言わない。

調べたところ CR (Comfort Room) は、戦前の米語だという情報があったが詳細は不明である。いずれにしても、それがイギリス英語ということはありえない。

「どうだ?俺の英語は流暢だろう?俺はすごいだろう?俺を尊敬しただろう?ゲヒヒヒヒ」

相好を崩してニタニタと笑い転げた。自分の英語力の素晴らしさに酔っているようだ。

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CR など、フィリピンで「英語」と思われているが、実はフィリピン特有の表現で他国では通じない単語や表現は多い。

フィリピン英語は、アメリカ英語やイギリス英語とはかなり違うのだ。

さらに、フィリピン嵌りのオヤジが話す言葉はそのフィリピン英語ですらなく、日本人同士でしか通じない完全な和製英語なのだが、寒汰のような頭のおかしな人間にはそれが正統派のクイーンズイングリッシュと思えるようである。

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寒汰のようなフィリピン嵌りの日本人の多くは英語が全くできない。

正直言って信じがたいほどできない。

はっきり言って中学校卒業レベルの英語さえできない。

発音も文法も単語もめちゃくちゃである。

フィリピンのスタッフが会議であんな英語を使っていたら(英語にすらなってないが)、申し訳ないが私ならそのマネージャーに次の契約更新はしないように(つまりクビ)と伝えるレベルである。

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フィリピンに関わるようになって驚いたことはいくつもあるが、こと英語に関しては三度驚いた。

まず、フィリピン嵌りの日本人の英語の酷さに驚いた。彼らが英語だと思っている言語もはや英語にすらなってない。英語に似た別の何かだ。

あれでは周囲のフィリピン人もわかったふりをするのが大変だろうと思う。

そして、二番目に驚いたのは、そんな英語の酷さにも関わらず「俺、英語ができる!」という人間が多いことである。

何をどう勘違いしたか、寒汰のように自分が話すベタベタの和製英語(つまり英語ではなくて日本語)がクイーンズイングリッシュだと勘違いしている人間までいるから驚きである。

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筆者は外資系企業で長年つとめてきていて、10年以上、日常の業務をほとんど英語で行う環境にいる。

昨年からは米国の本社に移籍して働いているので仕事でも家でも周囲との付き合いも全て英語になっている。

しかし、自分の英語力はまだまだ恥ずかしいレベルだと思うし、毎日勉強してもしても全く足りないと思っている。

日くれて道遠しだとというのをつくづく感じる。

だから、寒汰のようなオサーンが「俺、英語ができる!」と自慢しているのをみると、その自信がどこから生まれてくるのか不思議で仕方がない。

いや、ある意味羨望さえ覚えるのである。

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そして、さらに驚いたのが、そんな出鱈目な英語(英語にすらなってないが)を話す人間を見て

「凄い!凄い!この人は英語がうまい!」

と、褒める人間がいることである。

どうみても、文法も単語も構文も、論理構成もめちゃくちゃな英語、発音も恐ろしく酷い英語、そんな英語を書いたり話したりする人間を褒めるのはどういう神経なのだろうか?

これがフィリピン特有のホスピタリティというものなのだろうか。

それとも強烈な嫌味なのだろか。

まさかあのような和製英語のオンパレードが英語だと本気で思っているのだろうか。

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「俺、英語得意!俺、凄い!俺、偉い!ゲヒーーーーーーーー!」

「凄い、凄い!寒汰さんは天才だ!」

今日も寒汰の奇怪な声と、takeshi の素っ頓狂な声が魔尼羅(マニラ)の空にこだましていた。

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余談になるが、フィリピンにハマる日本人が作り出す奇っ怪な和製タガログ語、和製英語には枚挙のいとまがない。

また、SMを未だにシューマートと呼び続けるように数十年前の呼称を未だに使い続ける場合も多い。

SMのホームページを見れば、はっきり spell out して◯◯パー◯ールと書いてある(もちろん英語で)。

もはやシューマートは正式名称でないことは明確にわかるのだが、多くの場合はその企業の正式発表より「マハルコがこう言った」「知り合いの日本人がそう言っていた」方が真実と思えるのだろう。

自分の目で見るものよりも、マハルコや他の日本人が言うことの方が真実と思えるのはどういう思考回路なのだろうか。

更に面白いのは、彼らはなぜ元々の名称が「シューマート」だったかも分からないようである。シューなど今や小学校で習う英単語なのだが。

SMを未だにシューマートと呼ぶのは、日本語が分からない外人の集団が平成の現代になっても未だにJRを「国鉄」と呼び続けるようなものだ。

日本人でさえもはや忘れかけている単語を保存してくれているのは文化人類学的には貴重でさえある。

ガラパゴスのイグアナ並に長年外界から遮断をされていた貴重な集団だからである。

(※ ところで、なぜ彼らが SM という abbreviation すら調べられないのか、鋭い指摘を頂きました。彼らは調べようにも英単語の綴りさえ分からないのではないか、というものです。筆者はこの説に驚きつつも納得しているところです。)

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空港にいるタクシーをイエロータクシーと呼ぶのもどうかと思う。見た目が黄色だからイエロータクシーなのだろうか。

空港のメータータクシーは既存のタクシー会社が運行しているのであって、別にイエロータクシーという特別なタクシー会社があるわけでもないのだが。

彼らは東京のタクシーのことをグリーンタクシーとかイエロータクシーと呼ぶのだろうか?

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これは知っている人も多いかと思うが、「ソクソク」はタガログ語では SEX を意味しない

ソクソクを SEX の意味で使うのはじゃぱゆきだけである。

普通のフィリピン人に「ソクソクターヨ」と言ってポカンという顔をされたことのある人は少なくないと思う。

「一緒にコンセントにプラグを差し込もうよ」など意味不明だから仕方ない。

それなのに、自称フィリピンベテランの寒汰は「ソクソク」はタガログ語で SEX を意味すると思い込んでいるのである。

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さらに、ロロロラも誤用が多い。ロロもロラもタガログ語で年老いた老人のことを指すわけではない

日本語の「爺」「婆」は祖父母の意味とは別に、年老いた人間に対する蔑称でもあるのだが、タガログ語は違うのだ。

(恥ずかしながら筆者もこれは知らなかった。)

つまり「あいつはジジイだから」と言う意味で「 lolo na siya kasi」と言うのはおかしいのである。

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フィリピンのことを知り尽くしているはずの自称フィリピンベテラン自称知恵オタクの寒汰がこれらを混同しているのはどういうわけなのだろうか。

正直言って、寒汰のような自称フィリピンベテランは、英語でもタガログ語でもない、別の言語を話しているとしか思えないのである。

(プルトニウムとサマール島 完)

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(※ 本エントリで紹介したおかしな英単語、タガログ語の収集に関しては、いもさん、ACさん、ぐーすさんのご協力をいただきました)