モーセに並ぶ男 I

今日もマニラベイカフェ(旧LAカフェ)は、賑わっていた。

まともな風俗店では働けないようなストリートチルドレン同然の売春婦と、魂が暗黒にとらわれきった買春オサーンの醸しだす怪しい瘴気に包まれていたのだ。

その時、マニラベイカフェの前にタクシーが止まり、以上に臭く汚らしい男が降りてきた。

この男、普段はジプニーを使う。なぜならタクシーと違って運転手と話をしなくてすむからだ。

この男は8年間毎月フィリピンに通っているにも関わらず、未だに英語もタガログ語も全くできないのだ。

そう、男の名前は寒汰。フィリピン買春界のスーパーヒーローである。

この男が今日珍しくタクシーを使ったのはわけがある。

今日は連れがいたからである。連れの名前はノボル(※ 暗黒アルピニストの NOBORU さんとは別人です)。マニラに来るのが二回目の現地初心者のオサーンだ。

寒汰は小心者で一人だとタクシーの運転手と話すことすらできないが、連れがいると異様に気が大きくなり、タクシーに乗るのも平気なのであった。

寒汰は相変わらず偉そうな態度をとりながら、マニラベイカフェへと入っていった。子分のようにノボルが付き従った。もちろん、タクシー代はノボルが払ったのである。ドケチで有名な寒汰は、他人と一緒にタクシーに乗った際、料金を払ったことなどなかった。

マニラ初心者のノボルを案内してやるのだから、タクシー代などノボルが払って当然と寒汰は思っていた。

しかし、その実、すでにノボルの方が寒汰より遥かに英語もタガログ語もできることには二人とも気づいてなかった。

.

話がそれるが、寒汰のような自称「フィリピンベテラン」と何度か会って筆者が気づいたことがある。

筆者が英語で他の人間で話しだすと途端に面白くなさそうな顔をするのである。

まるで「チッ」と舌打ちしたいような顔である。

これは、鴨にしようと思っていた旅行客が実は英語ができる(筆者の英語など大したレベルではないが)ので、

鴨にしづらいと分かって不機嫌になるのだとばかり思っていた。

しかし、最近フィリピン暗黒学の権威からある指摘があった。

彼らが不機嫌になるのは、鴨にしようとかそういう以前の問題なのである。

基本的に自称「フィリピンベテラン」は英語ができない。それも信じられないほどできない。

はっきり言って全く英語ができない。

挨拶さえまともにできないレベルである。

確かに筆者もびっくりしたことがある。

あるフィリピンコミュニティである自称フィリピンベテランが得意げな書き込みを見た時だ。

「俺は長年フィリピンでビジネスをやってるが “Nice to meet you” なんて聞いたことがない!挨拶は『ハイ、どうもどうも』と適当にするだけだ!」

これには二重に驚いた。まず、教科書に初対面の挨拶として載っているのはたいがい “How do you do?” である。確かにこれは滅多に使わないが “Nice to meet you” とは違う

つまり、このフィリピンベテランは、中学校の英語の教科書の最初の一ページ目に書いてあることさえ正確に覚えてないのだ。義務教育の日本で中学校一年すら学校に行ってなかったのかと思えてしまう。

これには本当にたまげた。

しかしもっと驚いたのは、このフィリピンベテランは “Nice to meet you” を聞いたことさえないということだ。

筆者がフィリピンのオフィスに居て経験した限り、フィリピンでもまともな会社で初対面の挨拶をする時は、必ず “Nice to meet you”, “Great to meet you”  言う。100%言う。中には “How do you do?” と、教科書そのままの挨拶をする人間もいるほどだ。

そのフィリピンベテランは、フィリピンで長く自称ビジネスをしているのに、”Nice to meet you” さえ一度も聞いたことがないというのだ。

そもそも「どうもどうも」は日本語である。

こんなことはありえない。

このフィリピンベテランが「ビジネス」というのは、ビジネスはビジネスでもモンキービジネスのように怪しいものなのか、それとも彼は英語の聞き取りが全くできないのか、あるいは周囲のフィリピン人からまともな英語が一切通じない人間だとバカにされて、一番基本的な挨拶さえしてもらえないのどれかだろう。

こういう自称フィリピンベテランは奇っ怪な英語を生み出すことでも有名である。

以下はその一例である。

(いもさんが作成してくれたフィリピンベテラン英語リストがあるのですが、以下はその一部です。)

スニークアウト (バーファインせずに外で待ち合わせて会う意味で使う)

-> sneak out は「抜け出す」の意味。待ち合わせして会うの意味は全くない。どこかのオサーンの勘違いが sneak out の意味を勘違いしたのが広まったのだと思われる。

ショーアップ (KTVで女の子を並べる意味で使う)

-> show up は、現れる(ある場所にやってくる)の意味。KTVで女の子を並べるのは line up それと混同した勘違いが広まったと思われる。

モーニングセット

-> モーニングセットは和製英語。英語なら breakfast menu だろう。

これらは完全におかしな英語だが、自称ベテランは普通の英語だと思い込んでいる。

そして自称ベテランに説教されたかわいそうな初心者も、それがフィリピン英語だと信じて使っている。

しかし、これはフィリピン英語ですらない。

日本人の買春オサーンしか使わない完全な和製英語である。

そんな英語で話しかけられて、理解しないと怒鳴られるフィリピン人も可哀想である。

しかし、驚くことはさらにある。

こういう人間に限って「俺、フィリピンベテラン!俺、英語できる!」と自慢していることである。

はっきり言って中学校一年生以下の英語力のオサーンが自慢する気になるのは理解出来ない。

たとえば筆者は外資で長年勤め、今は米国に在住して英語環境の中で仕事をしているが、それでも自分の英語ができるとは全く思わない。

貧弱で恥ずかしいレベルだと思っている。日々勉強し続けていて、それでも全く足りないと感じている。

筆者の周囲のノンネイティブスピーカーも同様である。

そんな筆者からすると挨拶さえろくにできないのに「俺、英語できる!」と自慢する自称フィリピンベテランの度胸には、ある意味羨望すら覚える。

.

ともあれ、暗黒学の権威は、なぜフィリピンベテランは、そばで英語を話す日本人がいると不機嫌になるかを説明してくれた。

自称フィリピンベテランは、普段、「俺、英語ができる!」と自慢している。それは彼らにとって数少ないレゾンデートルなのである。

しかし、現実には彼らは英語ができない。全くできない。絶望的なほどにできない。

だから自称フィリピンベテランも、自分が英語ができないのは薄々自覚もしている。

普段は初心者相手に虚勢をはってごまかしているが、たまに英語が普通程度にはできる人間がいると、自分の実像を嫌というほど見せつけられた気になって、不機嫌になるというのである。

自称フィリピンベテランにとって英語が少しでもできる人間は鬼門である。

自分たちの大切なレゾンデートルを崩壊させかねない危険な存在なのである。

.

凄まじく英語ができない自称フィリピンベテランたちだったが、その遥か上を行くのが

かのスーパーヒーロー寒汰だった。

寒汰はタクシーの運転手と必死で会話しようと思っても、カタカナが単語レベルで思い浮かぶだけだった。

「ミー….まにらべいかふぇ…ウォント……..ごー…プリーズ」

寒汰のタクシーに同乗したことのある売春婦も、寒汰のこの凄まじいばかりの英語には失笑をこらえるのが大変だったという。

「あの太った気持ち悪いオサーン(寒汰のこと)、いつも、えっらそうな態度してるけど、英語もタガログ語も全然できないんだよ。女の子とも会話が成り立たないから日本語が話せる女の子しか連れて帰れないんだからw」

57年間、地道な努力は一切せず、全てのエネルギーを他人を妬むことにしか費やしてこなかったツケであろう。

なお、寒汰が最近、「マニラがつまらない」と言い始めているのは、彼が唯一会話できる日本語が話せる女の子が減ってきたからなのである。

.

バナナマンの日村 勇紀そっくりの寒汰がマニラベイカフェの店内にはいると、店に居た女たちが一斉に飛び退いた。

あたかも、モーセが紅海をきりひらいたかのように、寒汰の行く手に道ができるのである。

寒汰はそれを見て、連れのノボルに言った。

「おい!見たか?俺は人気者だから皆が道をあけるんだ。お前も俺のようになってみろ。ゲヒ!」

日本語環境の時だけは異常に強気な寒汰であった。

LAカフェで寒汰は異常に嫌われており、皆我先にと逃げ出そうとしているだけなのだが、超人的なほどに自分に都合のいい思考しかしない寒汰はそれに全く気づいてなかった。

あまりに寒汰の自信たっぷりさにノボルも

「はぁ?オラ、こんなの初めて見ただ。寒汰サは偉いお人なんでやんすね〜。」

と、妙な東北弁混じりの言葉でしきりと感心していた。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

8 Responses to モーセに並ぶ男 I

  1. AC says:

    おお、いきなり学生時代読んだサルトルとかを想起させるような、ここ何十年間耳にしなかった単語が。。。

    > 貧弱で恥ずかしいレベルだと思っている。日々勉強し続けていて、それでも全く足りないと感じている。

    ワタクシも同じでございます。。。

    皆さんガッツとチャレンジ精神に溢れてらっしゃるようで、羨ましい限りです>寒汰氏その他の方々

    私は米国だろうとフィリピンだろうと、そこに知り合いがいるでも立ち入るときに同伴する現地の人間がいるでもないのであれば、貧民街やらスラムに行くなんてできゃしません。連中と充分やりとりできるだけの言葉が満足にできないですし。ええ、怖いです、ビビリです。

    でも、「十戒」でモーゼの後に続く一人にもなれません。やっぱビビリなんです。てか、モーゼにお近づきになりたいとも思いませんが www

    • いやあ、フィリピンベテランの方々は素晴らしいです。
      自信を持つことの大事さ、危なさを身を持って教えてくれているわけですねww

      スラム街に、一人でいけないとは AC さんは、まだまだ甘ちゃんですね。
      寒汰氏のレベルになれば、一人どころか、自分自身が居なくても、スラム街探検ができてしまうんですよ。
      一度も行ったことがなくてもブログがかけてしまいます。

      ええ、他人の話をそのままコピペして、さも自分が行ったかのようなふりをしているだけなんですが、
      普通の人間は、そこまで厚かましい真似はできません。
      友人が一人もいない寒汰だからこそできるネ申木支です。

      私も早くその領域になりたいものです。
      あ、やっぱりなりたくはないなwwww

  2. GAGA says:

    先日、中国に行った時に知り合った日本人とご一緒させていただいたのですが、私から見ると流暢な中国語でした。

    「学校で勉強したんですか?」

    「初めて行った中国で言葉が全く分からなくて日本に帰って独学で勉強したんです。1年後に正確な発音ができるように再渡航したんですよ。でもまだまだ全然ですよ」

    会社の新年会で温泉に行きました。これからは国際化の時代だということでタイ人ピンクコンパニオン。私の拙いタイ語で「あいつ、タイ語ベラベラだよ」とあまり格好よくない評判が社内に流れました。

    ウエイトレス程度のフィリピン人下層階級に英語話せるか聞くと「コンティ」と答える場合が多いですね。もちろん仕事上のコミュニケーション程度は取ってますけど、、、、英語の映画はよく分からないし、疲れるそうです。英語を話すのは疲れるから客はフィリピン人が楽でいいそうです。

    よく「ユーハブメニーメニーマネー」と言われます。

    • 語学の学習ってほんとにいくらやってもまだまだですよね。
      私の知り合いでも、日本人では最高レベルに英語がうまい人がいるんですが、
      英会話学校に通ってますよ。
      まだ「L」の音が少し弱いとかで(私が聞く限りは完璧なんですが)修正してたり。

      それに比べ、暗黒系オヤヂは単純でいいですよね。
      少年漫画で、主人公が三日練習したら甲子園に行けたり、徹夜で勉強したら東大に入れるくらい
      世の中単純にできていると思ってるみたいです。

      語学もできるか、できないか、その二つしかないと思っているみたいですね。
      暗黒のデジタル思考と呼べばいいのでしょうかw

      フィリピン人は英語全然できないですよ。そりゃたまに出来る人もいますけど。
      まともな英語を話す人なんて本当に滅多にいないですよ。

      ユーハブメニーメニーマネーですか。素晴らしいですね。
      寒汰英語より500倍くらいまともな英語です。
      Countable か Uncountable かの区別がついてないだけじゃないですか。
      同語反復はご愛嬌です。

      ま、モーニングセット英語の寒汰からみたら完璧な英語に見えるのも仕方ないかww

  3. デバンガーZ says:

    フィリピン夜遊び関係のブログを読んでいて意味が分からないのはこれだったか!と、今回のエントリを見て理解したw
    今後は正しい意味ではなく、彼らの用法による意味を当てはめながら読むことにしよう。

    それにしても、英語ができないなら、「LAカフェ、プリーズ」で良いと思うのだが<タクシーwww

    • 無理に難しいことを言おうとして、ぼろを出すのが寒汰の常ですねww

      フィリピン嵌りの日本人にしか通じない変な英語、変なタガログ語は多いですよ。
      あと、フィリピン人にしか通用しない変な英語(Miss, CR, Xerox)も。

      変な和製英語、和製タガログ語はいもさんがリストを作ってくれています。
      まとめてブログに掲載しようかと考えています。

  4. いも says:

    フィリピン人だって  Nice to meet you。

    セブ州民の巨大掲示板 日本語学習スレから。
    括弧内 日本語は 僕の訳です。

    moshi moshi minna-san
    Hello everyone

    watashi wa nitesky-desu
    I’m nitesky

    Dozo yoroshiku
    Nice to meet you

    genki de minna-san ^_^
    Have a nice day everyone!

    05-10-2009, 11:17 AM

    Angel Sky
    Senior Member

    Join Date: May 2009
    Posts: 684
    ーーーーーーーーー
    Hajimemashite.
    (how do you do?)

    Enjeru Sukai to mooshimasu.
    ( I’m Angel Sky )

    Minnasan , Doozo yoroshiku .
    ( I’m pleased to meet you, all.)

    Ohayoo gozaimasu.(good morning )

    Konnichiwa. ( hello. / good afternoon.)

    Konbanwa. (good evening. )

    Itadakimasu. ( set phrase before eating )
              ( 食べる前の決まり文句)
    Gochisoosama. (set phrase after eating )
               (食べた後の決まり文句)

    congrats
    unsa ka nga level?
    (セブアノ語 おめでとう、 どの級に進級したの?)

    #730 02-25-2009, 05:43 AM

    menatsu
    Senior Member

    • そう、フィリピン人でもごく普通に Nice to meet you と言いますよ。
      それをフィリピンで何年もビジネスしていて聞いたことがないって、異常だと思います。
      まあ、エントリ本文で書いたとおり、日本語以外は全く聞こえてないのか、
      相手に思いっきりなめられてるかどちらかだと思います。

      セブ州民の掲示板情報、ありがとうございます。
      > Nice to meet you
      > how do you do?
      > I’m pleased to meet you

      めちゃくちゃはっきり書いてますよねwwww
      フィリピン人が普通に使う言葉としてフィリピン人が書いてますねww

      「初めましての挨拶は『はい、どもども』だ!」と豪語する自称フィリピンベテランに見せてあげたいですwww

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