すばらしき無料の世界 I

この日、寒汰は有名フィリピン情報サイト「フィリピン保育園」(仮称)に書き込んでいた。

寒汰は自称「フィリピンベテラン」だったが、実のところフィリピンの事情は保育園児以下にしか知らなかった。しかし今更、「寒汰」の名前では恥ずかしくて誰にも質問できない。

そこで、別の名前をかたって、初心者が有益な情報をえられる良心的なサイト、フィリピン保育園(仮称)で質問していたのである。

ちなみに、フィリピン保育園はかつて寒汰がさんざん攻撃していたサイトである。

しかし、園長のレモンさん(仮名)の人徳もあってサイトが盛り上がってくると、寒汰は自分の名前を隠して潜り込むようになっていた。

寒汰のポリシーは、強いものにはとことん弱く、弱いものにはとことん強く、であった。

当初、初心者だとなめていたレモンさんが人格も優れ、支持者が多いことに気がつくと、自分が執拗に攻撃していたことをすっとぼけて、図々しく入り込んできたのである。

厚顔無恥な寒汰らしい行動であった。

寒汰はかつて「あ・魔尼羅(マニラ)」(仮称)、「パライソ」(仮称)、「マラテクラブ」(仮称)などの名だたるフィリピン系サイトを荒らしまくり、次々に閉鎖に追い込んできていた。

異常に自意識が過剰で、人にかまってもらいたくて仕方がないのに、誰にもかまってもらえない寒汰は、サイトを荒らすことでしか他人にかまってもらえなかった

サイトを荒らすことは寒汰にとって当然の権利であるから、悪いことをしているという意識は全くなかった。本人は自分がサイトを荒らしているという意識はなかった。

この日も一通り、フィリピン保育園(仮称)の掲示板を荒らし終えると、寒汰はゲヒヒヒと笑った。おぞましく気持ちの悪い笑いであった。

そして、寒汰は常宿のホテルを出て、ジプニーに乗ってLAカフェ(現マニラベイカフェ)に向かった。

もちろん、手には例のJINROチャムシルの瓶を持っていた。

この日もサトーはついていなかった。いや呪われていたと言ってもよい。

寒汰に会うのを警戒して、この日はLAカフェに来たのに、今日は寒汰もLAカフェに来たのだ。

寒汰はサトーを見つけると、ゲヒヒヒヒと笑いながら近づいてきた。

「おい!サトー!大親友の俺に会いたくてLAカフェに来たんだろう。俺に会えて嬉しいだろう。俺、人気者!俺、偉い!ゲヒヒヒヒ!」

サトーは寒汰など友人とすら思っていなかったが、寒汰は一度あった人間は誰でも親友、二回目に会うと誰でも自分の持ち駒と思う人間だった。

「おい!サトー、お前水と氷をもらってこい!勿論無料でな。俺、無料でLAカフェで酒を飲む!俺、偉い!ゲヒーーーヒッヒッヒッヒ!」

サトーは泣きそうになった。

「おい!サトー!お前嬉しいだろう。金持ちの俺と今日も一緒に飲めて。俺の店、臭皇(くさおう)はな、年間3千4百万円の売上があるんだ。すごいだろう?ゲヒッヒッヒッヒッヒッヒ!」

3千4百万円の売上は金持ちと自慢するほどでもない。本人の収入などその半分にも満たないであろう。さらに、仮にも売上が年間3千4百万円ある店のオーナーが、水や氷ごときケチる神経が信じられなかった。

寒汰は酔っ払っていた。サトーはさっきから逃げ出すタイミングを見計らっていたが、寒汰はそれを許さなかった。

「おい!サトー!お前、資本論を知ってるか!知らないだろう?俺が教えてやる。お前、嬉しいだろう?ゲヒッヒッヒッヒッヒッヒ」

サトーは飽き飽きしていた。寒汰の勘違いした理論もどきには飽き飽きしていたからだ。しかしまだ逃げ出すチャンスは来なかった。

「いいか、サトー!商品の価値はな、原価にな、労働という付加価値を加えたものなんだ。」

サトーは少し感心した。寒汰のような低能な人間でも付加価値という言葉を覚えたらしい。

「木を切って机にすれば値段があがるし、小麦をこねてラーメンにすれば値段があがるんだ。」

サトーはもう少し寒汰の話を聞いてみることにした。今日は意外にまともなことを言うのかもしれない。

「だからな、外国で安く売ってるものを日本に輸入して高く売ることは労働じゃないんだ。分かるか?」

サトーは驚愕した。寒汰はどうも貿易や商社の商売を真っ向から否定するつもりらしい。これは人類の経済活動を否定するのにも等しい。

「いいか?ソフトウェアはな、無料なんだ。テレビ番組も無料なんだ。だから俺はテレビ番組を録画して無料でネットでばらまくんだ。俺、偉いだろう?」

サトーは思い切って聞いてみた。

「どうしてソフトウェアやテレビ番組は無料じゃないといけないんですか?ソフトもテレビ番組も作るのには莫大な費用がかかるんですよ。」

寒汰はびっくりした顔をして言った。

「なんで?ってお前、あたりまえだろう。ソフトウェアもテレビ番組も実体がないだろう。そんなので金を取るほうがおかしいんだ。ソフトなんてCDとパッケージの原価は数十円くらいだろう。だからマイクロソフトの Windows も一枚数十円が適正価格だ。俺、賢いだろう?ゲヒヒヒヒ

サトーは驚愕した。どうも寒汰は眼に見えない物、形がないものは全て値段がゼロだと思っているらしい。

「じゃあ、サービス業はどうなんですか? 店でお客さんに料理を運んだり、コンサルティングするのは無料じゃないといけないってことですか?」

寒汰はきょとんとした顔をしていった。

「馬鹿かおまえ、形が変わらないんだから、無料で当然だろう。料理を運んでも料理の形はかわらないぞ。俺、賢い!俺、偉いだろう?ゲヒヒヒヒヒ」

サービス産業を根底から否定する寒汰の発言は衝撃であった。しかし、実際のところ寒汰に近い考え方をする日本人は多い。

日本の経済の特徴的なところは、サービスの質はきわめてよいのに、それが無料で当たり前だと広く思われていることである。それが日本の産業構造を不健全にし、経済的に停滞を招いていることは近年明らかになりつつある。

また、箱物、ハードウェアには金は払うがソフトウェアには金を払いたがらない日本人は多い。ましてや「使い勝手」というさらに形にしにくいものには金を払おうとしないのだ。

その結果が、日本のソフトウェア産業を遅らせ、ガラパゴス携帯(ガラケー)が海外のスマートフォンに呆気無く駆逐される大きな要因となっている。

中国や途上国では知的財産が軽視され、違法コピーが当然のように販売されているが、日本のような昔からの先進国で知的財産が軽視されているのは日本の産業の発展を阻害していることは間違いない。

目に見えないものには金を払わない」という国民は、やはり知的レベル、民度が低いのだと考えられる。

偶像がなければ神を信じられないのと同じように、「目に見えないものには金を払いたくない」という人間は蛮族なみの知性だと言えばいいすぎだろうか。

「おい!サトー!」寒汰が怒鳴った。

かなり酔いがまわってきたようだ。サトーは逃げ出したくて仕方がなかった。

「俺のことをな、歴史も何もしらないと馬鹿にする連中が居ただろう? だからな、俺は今日のブログでは歴史自慢してやったぞ。歴史を全く知らない俺がどうやったか知りたいか?知りたいだろう?ゲヒヒヒヒヒ」

サトーはもうこんな知恵遅れの言う事など全く聞きたくもなかったが、口では「はい、そうですね」と答えた。

寒汰に絡まれて職を失った人間もいるし(※事実です)、閉鎖されたサイトも数多くあるのだ。サトーには妻子がある。寒汰のようなキチガイに睨まれれば何をされるか分かったものではない。

「今日の俺のブログはな、今日は地球の歩き方のイントラムロス観光案内のページから適当に切り貼りしたんだ。これを見れば俺が歴史博士のように見えるだろう?皆、俺を褒める!俺、偉い!ゲヒーーーヒッヒッヒッヒ!」

サトーは心の底から呆れた。その間違った努力をほんの少しでも、真っ当な方向にまわせば寒汰にも友人ができたかもしれないのに。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

4 Responses to すばらしき無料の世界 I

  1. デバンガーZ says:

    この論に従った場合、某飲食店の従業員は調理担当はさておきホール担当(注文・配膳・レジ)は無給ということになると思われ。

  2. GAGA says:

    寒汰氏自身、性的サービスを散々受けているのに中多死していない=付加価値がないという理屈になるのでしょうか?

    LAカフェのウエイトレスが私に尋ねてきました。

    Do you have a condo ?(コンドミニアム)

    Do you  need condoms? OK! I go to buy.

    ということで岡本さんを買ってきてあげました。

    Hindi ! (こんな物使うわけ無いでしょ。気持ち良く無いディバ?)

    と叫んでいました。沢山のストリートチル、、、、じゃなくてウエイトレスがやってきてポーチの中にしまわせました。持ち歩いてるとグッドラックなんだそうです。

    皆、持ち歩いていないのは生中田氏だからだと思います。その結果、バッドラックだからここで働いているのだと思います。

    ある日タクシーに乗っていたらドライバーがLAを指差し、ここを知ってるか?と聞いてきました。マニラにいる日本人であるというだけで恥ずかしいのに、LAカフェに行ったことがあると言ったらドライバーに金いらねーから降りろといわれても仕方がないので知らないとだけ答えました。

    Dont go. terrible.

    とだけ彼は言いました。フィリピン国内にこんなものがあることが彼自身恥ずかしいのだと思います。

    綺麗な海も美人が集う高級クラブもあるフィリピンがこんなもので評価されるのはフィリピン国籍の彼にとって屈辱なのでしょう。

    久々にローカルKTVに行きました。軽く食事して帰ろうかと思っていたのですが気が付くと私1人に3人のGROになっていました。

    テキーラ飲んでGROの頭をシェイクし続けるのも疲れます。

    子供がいないGROにコンドーム使うから子供がいないのか?と聞きました。

    違う!コンドームを使ったこと無いからわからないの。でも妊娠したこと無いよ。

    と笑顔で勝ち誇った様に答えました。

    言い換えると

    アコ、コンドーム使ったこと無いから生中田氏が気持ちいいか判らない。でも妊娠したこと無い。これ自慢。

    と言うところでしょう。生中田氏は議論の余地が無いくらい当たり前のことなんですね。

    • GAGAさん、

      そうですね、寒汰は中田氏させてもらえず、形に何も変化させられないので、付加価値がつけられない、つまり価値がない男だということです。
      私の友人で、百発百中で当てる男がいます。子どもが欲しくて頼まれれば一発であてますし、
      自分の奥さんと離婚するつもりで最後の旅行に行けば、それで当ててしまって離婚がお流れになるなど
      凄まじい的中率を誇る男です。

      そんな彼は寒汰と逆に価値が高い男ですねw

      コンドミニアムのボケでコンドーさんをあげるとはなかなか洒落が効いていますね。
      コンドームは彼女らにとっても大事です。
      普段は当然中生だし当たり前、避妊なんて一切しない彼女たちですが、
      異常に汚くて臭い客とどうしてもしなければならない時にはコンドームは必須ですから。

      > 生中田氏は議論の余地が無いくらい当たり前のことなんですね。

      全くそのとおりですw

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。