JALマニラ便

2月16日。マニラに向かうJAL機のゲート付近。

そこに男は居た。

異常に気持ち悪い顔、凄まじい悪臭、先進国ではありえないようなファッションセンス、そう我らがスーパーヒーロー寒汰である。

日本人の女性も、フィリピン人も、素人も玄人も誰もが認める気持ち悪い男なのである。

「こいつ、見るからに気持ち悪い。4500ユーロもらってもこいつの相手だけはしたくない。性格の悪さが顔ににじみている。服装も髪の染め方もありえない」

写真を見ただけの女性に、そこまで言われるほどの寒汰である。

その姿だけで異様であるが、今日もゲート前でJINROチャムシルをガブガブ飲んでいた。(土産物店でJINROチャムシルを50本ほど買い込んだようだ。)

その異様な存在感は待合室の中でも群を抜いていた。

そんな寒汰のそばを、日比ハーフらしい娘が通りかかった。すると、寒汰はまた例によってブツクサと気持ちの悪い独り言を話し始めた。

 

「クソっ、なんであんな夏向きの靴(Crocsのシューズ)をはいているんだ。日本とフィリピンでは気温が違うだろう。ちゃんと日本に合わせた靴を履け。クソっ。ゲフッ。目にはつけ睫毛、爪にはツケ爪で、今風の小汚い娘か。衣服全体のカラーバランスを欠きやがって、クソっ。」

他人のファッションセンスにはよくケチをつける寒汰であったが、そういう寒汰自身のファッションセンスはおよそ先進国の人間とは思えぬほど凄まじかった。

上半身はもちろん例の10年間一度も洗ったことのない超悪臭漂うフィッシングジャケット。一キロ先からでも寒汰の接近がわかるという代物である。色は元はオレンジ色だろうか。ファッションセンスのかけらも感じられない色である。

そして、下半身は一枚95円で買ったかと思えるようなゲロダサブカブカのジーンズ。もちろん、こちらも超濃厚な悪臭が漂う。また、色の方もお洒落さのかけらも感じられないど汚らしい色だった。

髪の毛は、あまりにも不自然に染めた真っ黒で、周囲の日本人娘には「染め方ってものを考えた方がいいんじゃない?気持ち悪い」と言われる姿である。

そんな凄まじい格好の寒汰が他人のファッションセンスを語るのがまた、自称フィリピンベテランとしての面目躍如であった。

ちなみに、Crocs には冬用のものがあるのだが、観察眼が全くない寒汰はそんなことに気づいているわけもなかった。

マニラに向かう機内、寒汰の近くの席の男が、ビール、ワインなどのアルコールを何杯か注文していた。

それを見た寒汰はカンカンに怒りだした。

「おい!お前、もう酒は飲むな!無料だからってガブガブ飲みやがって!生活難民か? 安いSEXを求めて渡航した旅行者か?そんなに飲んだら俺の分がなくなるだろう!」

そういう寒汰はすでにワインの小瓶を20本にビールを10杯は飲んでいた。

あきれ果てたフライトアテンダントはもはやコールがあっても、寒汰の席には近寄らないようになっていたほどだ。

そんな自分のことは棚にあげて、他人が少々飲んだだけで気に入らない寒汰であった。

無料のものは何でも遠慮なく根こそぎ飲み食いしなければ気が済まない寒汰なのであるが、他人が無料で飲み食いすることは我慢できないのだ。

地球上でもまれな底なしのドケチであった。

.

「クソっ、こんなむかつく奴らがどうしてJALに乗ってるんだよ。あいつらみんなフィリピン航空にでも乗れ!クソっつゲホフグゲヒヒィ!」

しかし、それを聞いた周囲の客の誰もが、「それはお前のことだ」と心のなかでつぶやいたのは言うまでもない。

.

「クソっ、むかつく奴らばっかりだ。だいたいな、フィリピンでも日本でも衣服もスタイルも考え方も特に変える必要はないんだ。日本に居るのと同じような、考え方やスタイルがそのままフィリピンで通用するんだ。同じような過ごし方をしろ、クソっ」

寒汰はまた大声で怒鳴った。

「フィリピンでも日本と何も行動や言動を変える必要がない。」というのは寒汰の持論であったが、実際は日本とフィリピンでは何もかもが違う。

一般的な人間の態度、教育レベルも違う。ビジネスしても、モラルや integrity が全く違う。マナーも商習慣も全く違う。だいたい言語だって大きく違う。日本と大幅に意識を変えなければ同じ結果は得られないのだ。

こんなことはフィリピンに限らずどこの国でも常識である。

しかし、フィリピンでも「アコ・ディバ」の二単語以外は全て日本語で押し通し、日本でもフィリピンでも非常識極まりない存在の寒汰には、フィリピンでも日本でも変わらないのかもしれない。どちらの国でも異常に非常識な人間ということには変りないからだ。

また、ついさっき「日本とフィリピンでは気温が違うだろ!」と他人にケチをつけたばっかりなのに「日本でも衣服もスタイルも考え方も特に変える必要はないと、完全に矛盾したことを言っているのもいかにも寒汰らしいことであった。

この手の自己矛盾、論理的に破綻した考えも自称フィリピンベテランの特徴なのである。

彼らの脳みそには論理性というものがそもそもほとんど存在しないのであった。

寒汰を初め、彼らはホモ・サピエンスとしての必要要素が欠けているのだ。

.

「クソっ、あいつらムカつく。だいたいな、フィリピンじゃ、観たまんまのことが多いんだよ。外見が酷い奴は中身も酷いんだよ!クソっ、ゲフッ。グゲヘェヘッゲフーーーーーー」

ハイジャック防止用の分厚い扉で仕切られたパイロット席まで響き渡るような凄まじく大きな下品なゲップをしながら寒汰は言った。

『見たまんまの事が多い』とは、確かにあたっていた。

異常に気持ちの悪い外見、長年の意地汚い行動、性格の悪さが隠しようもなくにじみ出た顔、不摂生の塊のだらしなく太りきった体など、寒汰は見た目そのままに気持ち悪く性格が悪く不摂生な男であった。

ただ、本人だけは、その凄まじい外見には気がついてないようであった。

57年間生きてきて、周囲の誰からも気持ち悪い、汚らしい、意地汚いと言われ続けてきた寒汰なのだが、異常に自分に都合のいい考えしかしない思考回路のおかげでそんなことは一切聞こえてなかったようである。

.

「クソっ、あいつら! ムカつく! 普通に考え、判断し、フィリピン人とも礼を持って接しろよ、クソっ。人間性や常識をもって生きろよ。クソっ。ゲホフグゲヒヒィッッツ!」

異常に気持ちの悪いゲップをしながら寒汰はまた毒づいた。

寒汰はKTV(ホステスバー)に酒を持ち込んで、持ち込み料を払わず水と氷だけ無料で持ってこさせたり、

同じくKTVで「フルーツを出せ。量を1/4にして、値段は1/3にしろ」とゴネたり、

KTVを追い出された後も、閉店になって女が出てくるのを何時間も待ち伏せしてとうとう警察に連行されたり

マニラでは高級の部類に入るレストランで、突然米に水をぶっかけて汚らしく食べた後

「お前ら貧民はこうやって飯を食うんだろう?ゲヒヒヒヒ」

と、フィリピン人を挑発したりする寒汰が「人間性、常識、フィリピン人に対する礼儀」を唱えるのは甚だしく無理があったが、本人だけはそれを理解していなかった。

.

「ふん!俺はな、煩わしい人やしつこいタカリ・物乞からは距離を隔てやるぞ。クソっ」

友人が店に渡そうとしたチップをくすねたり、

KTV(ホステスバー)で自分が指名した女が席を離れた時間をストップウォッチで計ってその分の値引きを無理やり店に迫ったり、

アトリウムホテルでセキュリティの仕事にケチをつけて大騒ぎになり、めでたくアトリウムホテルの出入り禁止第一号になったり、

ネットで捨てハンをつかって荒らしまくり、ドメインがはっきり表示されていて誰の目にも犯行は明らかなのに「IPアドレス(ドメイン名のことを寒汰はそう勘違いしている)が表示されてるとは思わなかった。俺、弱った。頭抱えてしまった。そうだ!IPアドレスが改ざんされてしまったんだ!」と子どもでもあり得ない稚拙な嘘をついたり、

そんな寒汰は今や誰からも距離をとられ、相手にされず、いつでも孤独だったが、そんな寒汰が「距離をとってやる」というのも、ありえないほど説得力がなかった。

しかし、もちろん、寒汰はそんなことに微塵も気づいてなかったのである。

そんな寒汰と可哀想な乗客乗員を乗せて、その日もJAL機は、マニラへ向かっていたのである。

(※ 本エントリ中、ありえないほど論理的に破綻した寒汰のセリフが掲載されていますが、これは全て寒汰の本日のブログに載っているものそのままです。寒汰の文章そのままでは主語や述語が欠落しているので、それを補ったりしていますが、基本的な主旨は変更していません。信じがたいことですが、この論理的に破綻した思考は、実在の寒汰のものです。)

50ペソのラーメン II

自称フィリピンベテランのように頭が腐った人間スーパースターたちが来ない店、ターフーは今日も賑わっていた。

ターフー(仮名)は、ジョージ凹ボにある実在の居酒屋である。

仕事上がりのフィリピン警察官、米国大使館員、現役の総合格闘技でもやってそうなコケイジャンなどの客が多いのも、自称フィリピンベテランが寄り付かない理由だろう。

彼らは日本語が通じない環境にはめったに来ないのである。

それもあって、マニラ在住の本物のベテランたちは、この店で安心して楽しめるのである。

今日も皆が楽しく飲んでいた。

この日の話題は寒汰であった。

ネットの某所で公開された寒汰の写真を見ながら、在住者たちは品評していた。

「こいつ、気持ち悪いよ」

「この顔とこんな服はマニラにゃ居ないよ?どう考えてもかけらもモテナイもん。いくらなんでも、こんな見るからにモテませんって格好じゃマニラの道を歩くのも恥ずかしいよ。」

「こいつ、自称魔尼羅の有名人だって?俺らの間では誰一人として見たことないけどなあ。ここまでショボイ奴が居たら記憶に残るしなあ。」

「何?これがこいつのブログ? 魔尼羅・盗撮バージンだって?タイトルからして笑えるな。なんだこの中身。全部どっか他人の話を切り貼りしてるだけじゃん。こういう奴よくいるよ。」

「ネット番長って奴だろ。ネットで初心者相手にだけ強気。自分の化けの皮が剥がれるから絶対に初心者以外とは話しない。もっともこんな奴、俺らの誰も相手にしないけどな。あっはっはっは。」

凄まじいファッションセンスに加え、長年の意地汚い行動が姿にはっきりと現れた寒汰の姿は、本物のフィリピンベテランからも酷評大絶賛されていた。

そんな時、ガラっとドアがあき、店内に何やら凄まじい悪臭が流れこんできた。

.

その男、写真の寒汰とは違った外見であったが、何やら寒汰を思わせる瘴気をまとっていた。

見るからに陰気で鬱蒼とした粗大ゴミが大量に捨てられてる雑木林を思い出させるような顔である。

男は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、そのままニコリともせずに、ターフーの店主に怒鳴った。

雑木林男「ラーメン食べたいんだけど、いくら?」

店主「醤油ラーメンで180ペソです」

雑木林男「高いな。なんでそんなに高いんだよ。何で50ペソじゃないんだよ」

店に居た客は冗談かと思ったが、どうやら雑木林男は本気のようだった。

そして、次に雑木林男は信じられない言葉を吐くのである。

「フィリピンのラーメンは50ペソってフィリピーナが日本で言ってたぞ。」

店にいる日本語がわかる人間は全員が絶句した。

50ペソというのはコンビニでカップラーメン(マミー)すら買えない値段である。きちんとした店で出すラーメンの値段では到底ない。

この雑木林男はカップラーメンときちんとしたラーメンの区別もついていないのだ。

おそらく、フィリピンパブの女が適当にいう話を鵜呑みにしてきたのだろう。

さらにこの男、目の前のはっきりした現実を見てもそれが理解できないのだ。

そう、自称フィリピンベテランたちは事実を認識する能力に致命的な欠陥を抱えている。

その辺で適当に聞いたホラ話は信じるくせに、目の前ではっきりと見える事実は信じられないのだ。

文明人としてありえない能力を持っているのだ。

しかし、これはまだジャブであった。この男が次に放った言葉には店の温度は絶対零度にまで下がった。

「じゃあ量を少なくして50ペソにして食わせろ

.

これを聞いて、さすがの筆者も、なんともコメントのしようがなかった。

ドケチ狂人寒汰は、KTV(フィリピンパブ形式の店)で「フルーツを出せ。量を1/4にする代わりに値段を1/3にしろ」と言い放ったのは有名である。

指名した女が席を離れている時間をストップウォッチで計り、その分の値引きを要求したり、友達のチップをネコババするくらいの異常なドケチ根性の寒汰だから、それくらいは言っても周囲はもう驚かない。

しかし、寒汰以外の男がそんなことを言うと想像もしてなかった。

寒汰研究が長い筆者でさえそうなのだから、寒汰を知らないこのターフー(仮名)に居た客たちは腰を抜かさんばかりに驚いたことは想像に難くない。

いやはや、さすがフィリピンである。寒汰は別格としても、その亜種級のドケチ、勘違い男の観察もできるようである。

.

ちなみに、この後、近所のKTV(フィリピンパブ形式の店)の女の子がラーメンを食べに来た。

そんなにお金を持っているとも思えない女の子である。180ペソのラーメンは彼女にとっては、きっと高い食べ物である。

しかし彼女は先払いでちゃんと180ペソ払って食べていった。

間違っても値切ったりしなかった。

普段、フィリピン人の民度の低さ、暗黒の心を揶揄する筆者であるが、この話を聞いた時ばかりはフィリピン人の高潔さを知った気分になった。

少なくとも寒汰やこの雑木林男のような腐った人間よりは、フィリピン人のカラオケ嬢の方が遥かに真っ当な人間であることは間違いがないと思えるのである。

(50ペソのラーメン 完)

※ 本エントリは、マニラのジョージ凹ボにある実在の店、ターフー(仮名)で数日前に起きた事件を元にしています。

50ペソのラーメン I

自称フィリピンベテランとは不思議な生物である。

誰よりもフィリピンに詳しいはずなのに、日本語が通じない場所のことは全く知らない。

8年間もフィリピンに毎月通っているが、タガログ語も英語も全くできない。

EDSAがエッサに聞こえたり、モーニングセットが英語だと思っていたりと、この世の人間とは思えないほど言語能力が欠如している。

また、自称フィリピンベテランがブログ載せる情報は、新聞のコピーそのままか、JALのホームページから入国カードの書き方をそのままコピペしたようなものばかりなのだ。

オリジナルの情報はなぜか全くない。

そして、彼らが大好きで大好きで物凄く詳しいはずのフィリピンの歴史も地理もなぜか全く知らない。その辺の日本の中学生でも知っているようなことすら知らない。

寒汰のように400年以上に渡るスペインの支配すら知らなかったりする。

自称フィリピンベテランが知っている知識はせいぜい買春情報だけなのだが、その知識とて間違いだらけであった。

店の名前も、地名も、店のシステムも、発音も何もかも彼らの知識は間違い等だけであった。

何せ、英語もタガログ語も全くできない人間である。日本語で聞いた話を古かろうが間違ってようが数十年間信じ続けているのである。

先のエントリで書いた、スニークアウトショーアップなど、完全に日本人だけが意味を勘違いしている和製英語である。

SMがxxパーxール(※)になったのは数十年前だが、自称フィリピンベテランたちは未だにSMをシューマートと呼んでいた。

(自称フィリピンベテランがコピペして知ったかぶりしないようにあえて伏字にしましたw)

この数十年の間、フィリピンの新聞でもTVのCMでもSMは「xxパーxール」と発音されているが、自称フィリピンベテランたちは誰一人、この数十年フィリピンの新聞を読んだこともTVを見たこともないのだろうか。

自称フィリピンベテランたちはオロンガポのバリトを「バリオ・バレート」と呼ぶが、実はフィリピン人は誰一人そんな呼び方はしない。

フィリピン人は「バリト」と呼ぶ。ちなみに「バリオ」はマルコス政権以前に使われていた行政単位のことである。マルコス政権時代にバリオは全て廃止されバランガイに変更になっている。

自称フィリピンベテランたちはマルコス時代以降、フィリピンに訪れたことがないのだろうか。

いや、それ以前にマルコスはEDSA革命で追放された大統領と知らないのだろうか?

もしかすると彼らの頭の中ではフィリピンの大統領は未だにマルコスなのではないだろうか?

彼らの頭の中は4半世紀以上止まっているのではないだろうか?

そう思えるほどに、自称フィリピンベテランたちの知識は恐ろしく古く、そして多くの場合、間違っていた。

そんな自称フィリピンベテランと違う、本当にフィリピンに住んでフィリピンの表も裏も知り尽くしたような在住者は、自称フィリピンベテランを初めとする旅行者と関わることはあまりしない。

関わっても面倒なだけなのだ。耳にタコな騙された話、ぼられ話を聞かされるのがおちだからだ。

それだけならまだしも、異常なケチ自慢、勘違いにもほどがある「俺はモテる!」と言う自慢を耳にすると悪いカルマでも身につきそうである。

マニラベイカフェ(旧LAカフェ)は、そういう凄まじく呪われたカルマを背負った自称フィリピンベテランを鑑賞するには絶好の場所だった。

ストリートチルドレン同然の汚らしい女にたかられて相好を崩すオヤヂが、凄まじいケチ自慢をしあっているのである。

たとえば一泊850ペソのホテルに泊まってることを自慢するオヤヂがいたりする。

そんなチェックインした瞬間に手首を切って自殺したくなるようなホテルに泊まることがなぜ自慢になるのだろうか。脳みそが腐っているのではないかとすら思える。

過去に何度か述べたように、この種の暗黒のカルマを背負ったフィリピン嵌りのオヤヂたちは、自分たちが地獄に堕ちていくのを逆に高みに登っていると勘違いしている節があった。

(※ この現象については、ぶん左衛門博士が「死の樹」との関連性を指摘)

その代表はもちろん、我らがスーパーヒーロー、世紀の珍獣寒汰である。

.

話がすっかりそれた。

2,3日前のことだった。マニラ、ジョージ凹ボにある居酒屋、ターフー(仮名)はその日も賑わっていた。

寒汰のような自称フィリピンベテランたちはいない。

表立って宣伝してないこのターフーは、自称フィリピンベテランが滅多に来ないので、在住者たちも安心して話をすることができるのだ。

(続く)

(本エントリは特に「いもさん」と「GAGAさん」がくださる正確な情報を元に書いております。お二人には深く感謝いたします。)

モーセに並ぶ男 IV

KAZUYAたち一同が、マニラベイカフェを立ち去ると、ノボルがいそいそとし始めた。

さすがのノボルも寒汰の怪しさに気がついたのである。

誰が見ても、日本人の女性が見ても、フィリピン人が見ても、タイ人が見ても、

金持ちのお嬢が見ても、ストリートチルドレン同然の貧困娘が見ても、おばさんが見ても、幼女が見ても、

寒汰はどう見ても気持ちの悪い男である。

女からみて、いや、男から見てさえ生理的に受け付けない気持ち悪い男なのである。

当寒汰物語にコメントしてくれてる日本人女性たちも寒汰を「写真からさえ悪臭が立つような男」「どんなにお金がない時に、たとえ4500ユーロもらってもこの男とは無理。」とはっきり言う。

また、寒汰のようなオヤジは、二言目には「見た目じゃない。フィリピーナは心を見てくれる。俺は心が素晴らしいからモテる」と言う。

しかし、そういうオヤヂに限って、心の中は外見以上にどす黒く汚れているように見える。

昨日当ブログで紹介した日本人女性も寒汰の純粋な見た目云々だけではなく「性格の悪さが滲み出る姿が嫌」と感想を述べている。

そもそも、寒汰の今までの凄まじいまでの自分勝手な言動のどこが心が優れているのか理解できる人間がいたら見てみたい。

「心が大事」という人間に限って心が汚いと思うのは気のせいだろうか?

そして、フィリピーナが本当に心の中を見るのなら、寒汰のようなオヤヂは今以上に嫌われるとしか筆者には思えないのである。

ともあれ、そんな男が「モテ説教」をしても、全く現実味がないのはフィリピン初心者のノボルでさえ、そろそろ感じていた。

その証拠にマニラベイカフェのストリートチルドレン同然の売春婦でさえ、一度として寒汰に近寄ろうとしないではないか。

ノボルは寒汰のくだらない説教はもう聞かず、自分で今晩持ち帰る女を探し始めた。

ほどなくして、ノボルはなかなか可愛い元じゃぱゆき娘を連れて帰ってきた。

名前は瑠奈と言う。年齢は27歳と少々とうが立っていたが、かつて上野の名店でもランキング争いをしただけのことがあった色香ただよう、いい女であった。

今晩のLAカフェでは一番の掘り出し物だろう。

すると、寒汰は急に怒り出した。

「ダメだダメだ!ノボル!お前、こんな女なんか選んでたらダメだ!」

ノボルは面食らった。

「どうしてだすか?この子、オラは結構めんこいと思うですんけど。」

すると寒汰は顔を真赤にしながら怒鳴った。

「だからダメなんだ!かわいい女を選ぶようじゃダメだ!フィリピンベテランはな、ブサイクを選ぶもんなんだよ。こんな精子臭い女、性病を持ってるに決まってるだろう!俺が許さん!絶対に許さん!ゲヒーーーー!かわいい女は選ぶな!」

寒汰は自分が相手にされそうにない綺麗な女を見ると「精子臭い女」という癖があった。

いわゆる酸っぱいブドウである。

さて、精子臭い女と言われて瑠奈はカチンと来た。すでに日本語が怪しくなっているじゃぱゆきでも、悪口だけは100%理解できるのだ。

「うるさいよ、このスットコドイ!」

瑠奈は怒って去ろうとした。

すると、寒汰はその瑠奈の腕をむんずとつかんだ。

北海道で寒汰が通いつめたキャバクラのキャバ嬢たちが口をそろえて言う、あの異常に気持ちの悪い触りかたである。

汚らしい男のあしらいにはさんざん慣れたはずの瑠奈でさえ、ぞぞぞと、全身に鳥肌がたった。

「ゲヒヒヒ、お前、俺には携帯番号を教えろ。ゲヒヒ。200ペソでどうだ?ゲヒヒ」

瑠奈は言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。怒りより気持ち悪さの方が優先したのだ。

爬虫類より数十倍は気持ち悪い寒汰に腕をつかまれていると、吐き気さえ催してくる。

瑠奈は、ひぃと声にならない声をあげて必死で腕を振り払い、出口めがけて全力で駈け出して行った。

そして心のなかで神様に懺悔した。

「そうだ、これは天罰だ。日本で稼いだ金がなくなったからって、こんな暗黒カフェまで商売に来た私に神様は罰を与えたんだ。

あの気持ちの悪い生物は、きっと地獄から遣わされた地獄虫なんだ。ああ、気持ち悪い。触られて腕が腐るようだ。

神様、ごめんなさい、アコは反省しています。もうLAカフェなんかで売春は二度としません。明日から真面目にKTVで

日本人オヤヂにボラボラします。アーメン」

去っていく瑠奈を全身舐め回すように見ていた寒汰は、ニヤニヤ笑いながらノボルに言った。

「あの女、俺に惚れたな。今度会ったら200ペソで俺にやらせるそうだ。」

英語タガログ語能力以前に、日本語の聞き取り能力にも致命的な欠陥がある寒汰であった。

.

ノボルが次々に連れてくる女に対して、寒汰は全てダメだしをしていた。

「ダメだダメだ!こいつも可愛いだろう? 可愛い女はダメだ!絶対にだめだ!」

そして、JINROチャムシルをガブガブと不機嫌そうに飲んだ。

ノボルは意を決して寒汰に聞いた。

「メンコイ女だとどうしてだめなんだすか?」

「当たり前だ!俺より可愛い女を連れて言ったら俺が腹がたつだろう!」

ノボルは呆れた。酔っ払った寒汰が吐いた本音があまりにもひどかった。

寒汰が可愛い女を嫌いというのは、意味が違うのだ。

自分以外の男が可愛い女を連れていたら気に入らない、単に他人を妬んでいるだけなのだ。

ちなみに寒汰は、他人が生中出しをしていると怒り狂うが、自分は生中田氏したくてしたくてしょうがない男であった。

一切自分のことしか考えないわがままなだけの男なのである。

「はぁあ、もう、オラ諦めただ。寒汰さ、先に選んでくだせえ。フィリピンベテランの味つうのを見せてくだんせ。」

ノボルは少し嫌味を込めていった。しかし寒汰には伝わらなかったようである。

寒汰という人間は嫌味が一切きかない珍しい男なのである。

「フィリピンベテラン」と褒められたと勘違いした寒汰は上機嫌になって女を探しまわりはじめた。

その後、数時間がたった。寒汰はようやく一人の女を見つけてきた。

数時間もかかったのには理由がある。LAカフェ中の女が寒汰の傍に寄ることさえ嫌がるのである。

寒汰は女性が典型的に生理的に受け付けられない男なのである。何人から見ても異常に気持ち悪い男なのだ。

そばによるのさえ嫌なのに、寒汰と一緒に帰りたいと思う女などいるわけもなかった。

最終的に見つけてきた女は40歳は超えたおばさんであった。

思わずノボルは言った。

「ブサイクだすな」

それを聞いて寒汰はかんかんに怒った。

「うるさい!フィリピンベテランは可愛い女が嫌いなんだ!ブサイクと言うな!ゲハーーー!」

寒汰の論理は完全に破綻しているが、要はこういう事だった。

寒汰が常日頃から「美人が嫌い。美人は持って帰らない」と言うのは大嘘である。

寒汰は本音は美人が好きで好きで大好きでたまらなかった。

ただ、他に客のあるような女は寒汰などには絶対に見向きもしないだけなのだ。

寒汰が持って帰れる貴重な女は、誰もが見向きもしないようなブサイクな女だけだったのである。

美人が嫌いなのではない。ブサイクしか持って帰れないだけなのだ

それを他人に揶揄されるのが悔しい寒汰は「美人なんか精子臭いだけだ!病気持ってるから俺は連れて帰らないんだ」とうそぶいていた。

典型的な酸っぱいブドウ(負け惜しみ)なのである。

.

ところで、「ブサイク」という言葉を聞いて40歳女は不機嫌になった。彼女は日本語が話せる元じゃぱゆきであった。

寒汰は「俺、じゃぱゆき嫌い」と言っているがLAカフェでもどこでも日本語が話せる女しか持って帰ったことがなかった。

当たり前である。寒汰は本当はタガログ語も英語も全く話せないのだ。

普段偉そうなことを行っておきながら、じゃぱゆきを選ぶ寒汰にノボルは完全に失望した。

「寒汰サ、じゃぱゆき嫌いなんでないんゲスか?」

「うるさい!ノボルの癖につべこべ言うな!」

都合が悪くなると怒鳴り散らすのは寒汰の悪癖であった。

.

ノボルの女も含めて4人で帰ろうとすると、40歳女が寒汰に言った。

4500ペソ。さっき決めたお金、ここで払って。」

これを聞いてノボルは二重に驚いた。ホテルに入る前に金を請求されるのも前代未聞なら、LAカフェでしかもショートで4500ペソなど聞いたこともない値段だからだ。

いや、さらに言えば、あのドケチの寒汰が4500ペソも出すことを既に約束しているのに驚いた。

寒汰は普段から

「フィリピンでSEXは200ペソも出せばできる!500ペソ以上払う奴は馬鹿だ!」

とさんざん威張り散らしているのである。

それが実は4500ペソも払うと約束していたのだ。言っていることとやってることが全く違う。

.

実はLAカフェにいる女の中ではひそかにカルテルが成立していた。

異常に気持ちの悪いオサーンにはショートで4500ペソ以下では絶対にやらせないことになっていた。

そして寒汰は散々偉そうなことを行っておきながら、LAカフェで連れて帰る女に4500ペソ以上毎回払っていたのだ。

それがバレてしまった寒汰はさすがに狼狽した。

「ええと、あの、アコ、4500ペソ、まいったな。頭抱えてしまった。ゲヒヒヒヒ。そうだ、お前、3000ペソでどうだ? ダメか?ゲヒ。じゃあ、3001ペソでどうだ? じゃあ、3002ペソだ。」

これには周囲の人間も呆れ返った。

一ペソ単位で買春代を値切る男など前代未聞である。

ドケチもここまで来ればつける薬はなかった。

.

ノボルも40歳女も皆去った。マニラベイカフェには寒汰一人が残された。

相変わらず寒汰の周囲には誰一人寄ってこない。

当たり前である。日本人が見てもフィリピン人が見ても、男が見ても女が見ても気持ちの悪い男なのである。

そばに寄りたいと思う人間などいるはずもない。

暇で仕方のない寒汰はとうとうカウンターで居眠りをはじめた。(実話)

数時間後、寒汰を起こしたのはセキュリティであった。(実話)

他の客ばかりか、店のウェイトレスさえ、寒汰に触れるのを嫌がったのである。(実話)

そのセキュリティさえも、寒汰に触れた手をその後トイレでゴシゴシと10分以上洗っていたことは言うまでもない。

寒汰はそのゆく所で必ず豪伝説を残す男なのである。

(モーセに並ぶ男 完)

地球上で最もモテる男 (モーセに並ぶ男 III)

昨日、筆者は数枚の寒汰の写真を、ある日本人女性にお見せした。

(写真と本文は全く関係ありません)

それが寒汰の写真とはあえて言わなかった。先入観なしでどんな印象を持つか確認したかったからである。

この女性、妙齢の綺麗な方だが、買春をするような加齢臭オサーンにも理解がある希少な日本人女性である。

彼女は、気持ち悪いオサーンたちの扱いもなれているので、甘めの感想が返ってくるとは予想していた。果たして、彼女の寒汰の外見に関する感想は以下のものであった。(以下、一切修正なし)

正直な感想ですが…

(1) 不節制によるだらしない太り方

(2) 性格が悪そう

(3) そのジーンズはないだろう

(4) 髪の色が不自然に黒過ぎる

(5) 上手に年を重ねてないな

(6) 全体的に重力に負けている

一番目につくことは (2) かなぁ…。

私も4500ユーロ(※約5万円)でも無理だなぁ…。お金に困っていても、頑張るな、他で。

髪の色に関してですが、凹は見てますよ~。キチンと理美容院で染めないと、貧乏くさくなります。しかし匂い、じゃないや、臭いたつ画像でした…。

ファッションや髪の不自然な染め方に目が行くところはさすがに女性の目線だと思われる。

一方、不摂生によるだらしない太り方、性格が悪く57年間過ごしてきたその嫌らしさがにじみ出た外見というのは、男性が見ても女性が見ても、やはり一緒だということだ。

年を取るのは仕方がない。しかし年をとれば、それまで生きてきた人生が顔や外見に刻み込まれる。

その大事さを改めて実感させられる言葉である。

.

寒汰がまだ30歳の頃、毎日のように通いつめたキャバ嬢たちは寒汰のことを下記のように評している

物凄く気持ち悪い男だった。私たちみんな、絶対にあいつの席にはつきたくないといつも話していた。」

また、寒汰がかつてフィリピンのLAカフェで持ち帰ろとした売春婦はこう言った。

「ショートで4500P(※ 約9千円)でも無理。あいつの相手なんかできるワケがない。I HATE HIM!!」

※ LAカフェでショートの相場はその9分の1の500Pと言われる

さらに、マニラ在住20年以上の日本人の方々数人に寒汰の写真をお見せしたところ、こんな感想が帰ってきた。

この顔とこんな服はマニラにゃ居ないよ。どう考えてもかけらもモテナイもん。

またまた、ススキノのソープランドでは、寒汰を見て、ソープ嬢が裸足のままで逃げ出したり、タイではアラブ人専門売春婦(※)でさえ、寒汰との凸凹は拒否してホテルから逃げ帰ったという。

(※ 一番安い売春婦。タイ売春婦が嫌う悪臭アラブ人ですら受け入れるから売春婦仲間からは恐ろしく見下されている)

.

ここまで証言や証拠が揃っていれば、もう十分だろう。

寒汰はモテない。日本でもフィリピンでも、年上にも年下にも、売春婦にも素人にもキャバ嬢にもモテない。ストリートチルドレンにも上品なお嬢さんにも、誰からも全くモテない男である。

ここまで女性に嫌われる男も稀有である。

まさに、女が生理的に受け付けない男とは、寒汰のような人間を言うのであろう。

しかし、おかしなことにフィリピンではそんな寒汰がフィリピン、あろうことかモテ学の講義をするのである。

「おい!いいか? ノボル!俺みたいにモテモテになりたかったら、俺を見習え!」

寒汰はJINROチャムシルをガブガブ飲みながら怒鳴った。場所はご存知 Manila Bay Cafe (aka LAカフェ)である。

地球上で最もモテない男と思われる寒汰がどの口で「モテたかったら俺を見習え」というのだろうか。

しかし、そんな摩訶不思議なことが起こるのがフィリピンという不思議な暗黒ワンダーランドだった。

寒汰が同じことを東京のカフェで叫んでいたら、即座に頭がおかしいと思われて救急車を呼ばれるだろう。

しかし、ここフィリピンでは幸運にも日本語を理解する人間がほとんどいないのだ。

いや、それ以前に、地球上で最もモテない男でも「俺、モテる!俺、イケてる!俺、カッコイイ!」と勘違いさせる猛毒の瘴気が立ち込めているのがフィリピンなのだ。

.

ちょうどその時、マニラベイカフェに、数人の日本人が入ってきた。

フィリピン在住のKAZUYAとその仲間たちだ。

KAZUYAは、寒汰とは顔見知りであった。KAZUYAは、軽く寒汰に会釈して寒汰から離れた席に座ろうとした。寒汰のようなクズ人間にも挨拶を欠かさないのがKAZUYAのよいところである。彼は男にも女にも、誰からも好かれる人間であった。

すると、寒汰はあの地の底から響いてくるような大きな声で怒鳴った。

「おい、KAZUYA、俺の隣があいてるぞ!座れ!」

あまりに偉そうな態度にKAZUYAの仲間たちは気色ばんだが、KAZUYAは温厚だった。少し苦笑いしながら、「じゃあ、ちょっとだけお邪魔させていただこうかな」と、素直に寒汰の隣に座った。

どんなクズ人間にも礼をつくすのがKAZUYAである。KAZUYAは、長身だったし男でも見惚れるようなハンサムであったがそれでいて誰にも妬まれないのはその腰の低い態度が大きいのだろう。

仕方なく、仲間たちもKAZUYAの周辺に腰を下ろした。

「おい!KAZUYA、お前、ちょうどいい所に来た。俺はな、このノボルに女扱いの講義をしてたとこなんだよ。ゲフッ」

寒汰は汚らしいゲップをしながら言った。KAZUYAは嫌な顔ひとつせず、寒汰にもニコニコと応対した。

「いやあ、寒汰さんのモテっぷりはマニラの日本人で知らない者はいないですからね。」

微塵も思ってもないことをニコニコしながら言えるのは、KAZUYAが数年前歌舞伎町で有名なホストであったこととは無関係ではないだろう。

そのホストじこみの褒め技に寒汰はすっかり機嫌がよくなった。

「ゲヒヒヒヒヒ、KAZUYA、やっぱりお前分かってるな。俺、モテるだろう?」

KAZUYAは深々と頷きながらニコニコ笑いながら言った。

「はい、寒汰さんは、マニラで、いや、世界で一番モテる人です。僕、昔からずっと憧れたんです。」

KAZUYAは伊達に世界中で何百人もの女を転がしてきてなかった。歯の浮くようなセリフを言ってのけるくらいは序の口なのだ。

「ゲヒーーーーー!ノボル、聞いたか!俺はな、世界で一番モテる人間なんだ。俺、凄い!俺、偉い!ゲヒーーーッヒッヒッヒッヒッヒ!」

ノボルは信じられないという顔をしていた。見たこともないほどの整った美しい顔のKAZUYAの横に並べば、気持ち悪い寒汰はいくらふんぞり返っても、ただの出歯亀である。その出歯亀に貴公子のような男が憧れることがあるのだろうか。しかしKAZUYAは、相変わらずニコニコと笑っていた。

「おい!KAZUYA、今日は特別だ。俺が今からお前に、女にモテる秘訣を教えてやる。どうだ?嬉しいだろう?ゲヒヒヒヒ」

KAZUYAは、寒汰の後方から秋波を送ってくるウェイトレスに華麗にウィンクを送りながら寒汰に答えた。

「はい、ぜひ聞きたいです。僕はいつも寒汰さんのようになりたいって憧れてますから。」

寒汰はゲヒヒと、恐ろしく嬉しそうに笑いながら、ガブガブとJINROチャムシルを飲んだ。

汚らしい口元から酒が溢れてテーブルや床に飛び散った。KAZUYAの綺麗な顔にもしぶきが飛んだが、KAZUYAは事もなげに涼しい顔をしていた。

「よーし、じゃあな、教えてやろう。まず一番大事なことから教えてやろう。それはな、タガログ語だ。KAZUYA、お前も

ちょっとはタガログ語を練習しろ。」

周囲の者は驚いた。KAZUYAは在住日本人の中でも一二を争うほどのタガログ語マスターなのだ。アコとディバ以外のタガログ語を知らない寒汰が、そのKAZUYAに対してどの口で「タガログ語を学べ」というのだろうか。

しかし、KAZUYAは、呆れた表情も見せず、照れくさそうに頭をかきながら答えた。

「いやあ、これは痛いところをつかれました。やっぱり寒汰さんは鋭いですね。すいません、これからはもっと精進します。」

そして、そう言いながら、寒汰に気づかれないように、そばに立っているウェイトレスの尻を巧みに撫でた。ウェイトレスは憧れのKAZUYAに尻を触られて恍惚とした表情をしている。

なにせKAZUYAは男前である。日本でキャバクラに行けば、キャバ嬢たちが全員パンツを脱いで襲いかかってくるほどのモテ男なのだ。

一方の寒汰は、ススキノのソープ嬢でさえ裸足で逃げ出してしまう。二人は対極の人間であると言っていい。

しかし、そんな地球でもトップクラスにモテる男が地上で最もモテない男に説教される。そんな摩訶不思議な現象が唯一起こるのがフィリピンという国なのだ。

寒汰のKAZUYAに対するモテ説教はなおも続こうとしていたが、そこでKAZUYAが涼し気な目を寒汰の後方にふとやってから言った。

「寒汰さん、すいません。寒汰さんの素晴らしいご講義は僕、徹夜してでも、いや、何週間でもずっと聞いていたいんですけど、周囲の女の子が寒汰さんと話したくてウズウズしているようです。これ以上、彼女たちを待たせたら僕、嫉妬で殺されちゃいますよ。ほらっ」

寒汰は背後を振り返った。その時、KAZUYAは寒汰の頭越しに並み居る女にウィンクをした。

すると、女たちは皆、狂喜して飛び跳ねた。寒汰はそれを見て女たちが自分を見て喜んでいるのだと勘違いした。

生まれてこの方、一度としてモテたことのない男は、女が自分を見て喜んでいるのか違うのかすら見分けがつかないのである。

寒汰が勘違いして喜んでいる隙にKAZUYAはすっと席を離れ、仲間たちをまとめて店外に出ていった。

さりげなく、寒汰の前のテーブルには千ペソを置いていた。

KAZUYAは店外に出ると連れの者たちに言った。

「ああいうキチガイには、下手にさからわない方がいい。恨まれたら俺達にさえ何をしでかすか分からないからな。それよりうまく手なづけておけば、いつか使える時もある。自殺テロって奴にな。ハッハッハ。」

実はKAZUYAはマニラに群居するヤクザを束ねる若きボスであった。しかし、その裏の顔を寒汰ごときが知るわけもなかった。

さっそうとKAZUYA一同はマニラベイカフェから去っていった。

ドブ川より臭いマニラ湾の悪臭に包まれたマニラベイカフェに一陣のさわやかな風が吹き抜けて入ったかのようであった。

(続く)

言語マジック (モーセに並ぶ男 II)

モーセが割れた紅海を進むかのごとく、寒汰はLAカフェ(現マニラベイカフェ)の中を進んだ。

あの混み合った店内が、寒汰の行く手だけさーーーっと人がいなくなる光景は圧巻であった。

寒汰に付き従うのは、マニラに来るのがこれが二回目というノボル(暗黒アルピニストNOBORUさんとは全くの別人です)であった。

「寒汰サは、ほんに凄い人でげすな〜。オラは感心しただ。」

と、ノボルは変な東北弁でしきりに感心していた。

そこにいる誰もが、寒汰を異常に嫌っていて我先に逃げ出そうとしているだけとは、フィリピン初心者のノボルには気がつかなかった。

やがて、寒汰はマニラベイカフェのカウンターに陣取ると、持ち込んできたJINROチャムシルをガブガブ飲み始めた。

そして、こうノボルに愚痴り始めた。

「クソっ、小向美奈子が俺の知っている店に現れたというから、予定を早めてマニラに来たというのに、小向美奈子なんかいやしない。俺の予定では今頃小向美奈子と変態SEXをしてるはずだったのによ!クソッ!」

寒汰は、1) ケバイ色っぽい姉ちゃん 2) シャブ好きの女 3)有名人が何より大好きであった。

その三拍子揃った小向美奈子が「俺の行きつけの店」の日本料理店に居たと報道されたものだから、寒汰はこれを運命と感じた。そして居ても立ってもいられなくてマニラにやってきたのだ。

ちなみに、寒汰をはじめとしてフィリピンに通う日本人の多くの行動範囲は異常に狭い

日本語の通じる環境から30分以上離れては生きていけない人間たちだから、行く店も恐ろしく限られる。

マニラが初めての小向美奈子がその恐ろしく狭い範囲内の店に立ち寄るのは運命でもなんでもなく必然であった。

語学ができない人間が住む世界は異常に狭いのである。

「そうでやんす。寒汰さがせっかく、マニラまでお越しになったというに、小向は全くけしからんでゲスなあ」

ノボルが相槌を打った。ノボルは寒汰のあまりに偉そうな態度を見て、寒汰がフィリピン買春界の巨人だと思い込んでいた。正確には巨人というよりは狂人であるのだが。

「クソっ、俺が来たのに小向美奈子は店にいないじゃないか。俺がわざわざ来てやったというのに。クソっ。あれは店がガセネタを流したんだ。客集めのためにガセネタを流したに決まっている! 俺、怒る!ゲフーーーーー!」

別に小向美奈子は寒汰のことを知ってるわけではないし、たとえ知っていても絶対に寒汰のことを待つわけがない。

ましてやどんなに金を積まれても、寒汰のような気持ち悪い男と変態SEXをしなければならない義理など微塵もない

しかし、ギネスブック級に自己中心的な寒汰は、こういう常軌を逸した計画を勝手にたてて、思い通りにならないと(思い通りになるはずもないのだが)すぐに周囲に当り散らすのが常であった。

そもそも、店が客集めのためにガセネタを流したなど、濡れ衣もいいところである。どんなことでも他人のせいにしないと気が済まない寒汰は、こういう濡れ衣をかぶせるのも大好きであった。

こういう狂った寒汰の行動のせいで売上が落ちた店も少なくない。寒汰はまさに歩く害悪であった。

寒汰はまたJINROチャムシルをガブガブ飲んだ。

「ゲフーーー!おい!ノボル!お前もな、俺みたいな立派なフィリピンベテランになりたかったら、もうちょっとタガログ語を覚えろ!」

「はいっ!そうでやんすな。オラのタガログ語じゃ、まだまだ寒汰サのよな立派なフィリピンベテランには程遠いだ。」

またしてもノボルは変な東北弁で答えた。

実のところ、今やノボルの方が寒汰よりタガログ語ができるのであった。しかし、日本語環境にいる時の寒汰の態度のあまりのでかさに、ノボルのような初心者は案外簡単に騙されるのであった。

ところで、アコとディバの二単語しかタガログ語ができない寒汰が「タガログ語を学べ」と偉そうに説教する話はフィリピン関係のネットでは有名な笑い話であった。「あ・魔尼羅(マニラ)」(仮称)のメンバーも、パライソ(仮称)のメンバーも、TOSHIYAさんも裏では嘲笑っていた。

他人に偉そうに説教するくせに自分は全く英語もタガログ語もできない寒汰は売春婦ともろくにコミュニケーションできなかった。

だから寒汰が連れて帰る女はいつも日本語が話せるじゃぱゆき経験者ばかりだったのである。

寒汰はブログでいつも「俺はじゃぱゆきが嫌い!」と書いていたが、その実、寒汰はそのじゃぱゆきとしか会話できないのであった。

寒汰がじゃぱゆきが嫌いというのは、例によって「俺、じゃぱゆき以外が好き -> 俺、英語もタガログ語も堪能」というありもしない能力を喧伝するためのごまかしなのだろう。

だいたい、EDSAが「エッサ」に聞こえたり、モーニングセットが英語だと思っている程度の語学力で英語やタガログ語が堪能というのには無理がありすぎるのだが、寒汰本人にはそれが全く分かってなかった。

「クソっ、あのコーヒーショップのウェイトレス。俺がモーニングセットと言ったのに無視しやがって。クソっ、ゲフッツ!」

寒汰は今日、朝に立ち寄ったカフェで起こった出来ことで愚痴っているようである。

寒汰はモーニングセットをオーダーしようとしたのだが、ウェイトレスが理解できなかったのである。

ちなみにウェイトレスは無視したのではない。モーニングセットなどという和製英語が理解できなかっただけである。

「あんな女、どうせ精子臭い女、こっちから願い下げだ!クソっ、ゲフーーーーーー!」

願い下げもなにも、ウェイトレスは寒汰に最初から気なんかないのである。

金をいくら貰っても寒汰のような気持ち悪いオヤヂの相手をするのだけは勘弁だった。

なにせまだ30歳の頃、毎日キャバクラに通いつめたのに、店の女全員に「気持ち悪い。あんな奴の席には絶対につきたくない」と蛇蝎のように嫌われていた寒汰である。

57歳になった今は気持ち悪さをさらに増していた。いくら金のためならなんでもするフィリピーナでも、寒汰みたいなオヤヂとだけは絶対に接触すらしたくないと思っていた。

寒汰に直に会ったことのある女性は皆言うのだが、寒汰はこの世のものと思えないほど気持ち悪い。

女が生理的に受け付けない気持ちの悪い男とは寒汰のことを言うのであろう。

自分が相手にされないと、すぐに「ヤリマン」とか「パンパン」「精子臭い」など、とんでもない負け惜しみを言うのも寒汰の特徴であった。

世界中の子供さえ知っているイソップ童話の sour grapes すら寒汰は知らないようである。

「いいか?ノボル?俺のようなモテモテのフィリピンベテランになるのに修行は厳しいんだぞ!俺みたいに女心をつかむのは、お前みたいなボンクラでは簡単ではないんだよ!」

日本でもフィリピンでも女性に蛇蝎のように嫌われている寒汰がどの口で女心のつかみ方を偉そうに説明するというのだろうか。

しかし、これは実は寒汰に限らなかった。日本では女性に死ぬほど嫌われている男が、フィリピンに通いだした途端に偉そうに女の口説き方を語るようになるのは珍しくない。

理由は二つあるだろう。一つはフィリピン・スーパーマン効果

フィリピン人はあまりに見え透いたお世辞言う。あまりに見え透いているので普通は吐き気がする。

しかし中にはそれを真に受ける男が居て、そういう男はだんだんと自分が素晴らしいモテモテ男と勘違いするようになるのである。

母親以外の女性から声をかけられたこともない醜い気持ち悪いオサーンが、「イカウポギーな」と一万回言われるうちに本気で自分が男前だと信じこむよになるのである。

まさに豚も木に登る。いや、豚が太陽圏外まで飛び出していくようなものである。

このフィリピン人独特の過剰なお世辞に加え、フィリピン嵌りの日本人のスペックがあまりに低いことも勘違いに輪をかける。

(ごく一部、素晴らしい外見や才能をもった人もいますが、やはり例外的存在です。)

周囲のフィリピン嵌りの男もあまりにレベルが低いので、自分が素晴らしい人間になってしまったと、どうしても勘違いしてしまうのである。

さらに加えて、オサーンたちは、自分たちの低スペックぶりを自慢しあうのが勘違いに拍車をかける。

フィリピン嵌りのオサーンが、呆れるほどに女扱いがひどかったり(女心云々以前に人間としてのマナーがなってない)、凄まじいファッションセンスをしていたり、異常にドケチだったり、ワガママや非常識が甚だしかったり、そんなことは世間からみれば人間としてクズにも等しいことなのであるが、寒汰のような人間は、逆にそれが偉いことだと勘違いしていた。

フィリピンに嵌りたて人間は、オサーンたちがファッションの趣味の悪さを自慢しあったり、ドケチ自慢しあったりするのに最初は凄まじく違和感を覚えるのだが、いつしかそういう人間も同じように堕落自慢をするようになるのが常であった。

(オサーンたちが低スペックを自慢しあったり、例外的に高スペックな人間を攻撃するのは、堕落した自分を直視しない、堕落した自分を安心さえるための自己防衛とも言えるだろう)

そもそも、買春ベテランを自慢する時点で人間のカスである。暗黒のオーラに囚われた人間は、そんなごく普通の常識にも気づかないようになっているのである。

かくいう筆者も、今やどれほど正気を保っているのか全く自信がない。少なくとも今の仕事をしておらず、フィリピンとしか接触がない人間なら、自分が寒汰すら超えるスーパーマンだと思い込んでいただろう。

なにせ、ハードディスクとメモリの区別もつかない男がコンピュータのエキスパートを名乗り、モーニングセットを英語だと思っている男が「俺、英語が流暢!俺、偉い!」とふんぞり返る世界なのである。

勘違いしない方が不思議なほどかもしれない。

さらに、もう一つ、寒汰のような人間がが勘違いする理由がある。それはミスコミュニケーション、ディスコミュニケーションだ。

たとえば寒汰のような汚い臭いオサーンにはフィリピン女どもも露骨に嫌悪感を示す。しかし未だに英語もタガログ語も全くできない寒汰は彼女らの嫌悪感あらわの言動を全く理解出来ないのである。

いや、理解出来ないどころか、逆の方に勘違いすらするのである。

「バホバホモタラガ!プータンイナモ!」

という罵詈雑言が、寒汰の耳にはこう聞こえる。

「私、あなたのことが好きで好きでたまらないの。私バカになっちゃたと思うくらいなの。寒汰様、私、あなたと早く結婚したいの。早くあなた様専用の性奴隷になりたいの」

言語の境界を越える時に起きる言語マジックである。

実のところ、国際結婚や国際恋愛が意外とうまくいく理由は、こういう都合の良い勘違いがあるからだと筆者は考えている。

いや、男女の仲に限らず人間同士のコミュニケーションというものは、多少のミスコミュニケーションがあった方が円滑になるのである。

全部相手に正確に意味が伝わったら、とげとげしいし、いつまでたっても話が終わらなくて大変である。

ただ、それにしてもだ、寒汰のような自称フィリピンベテランの勘違いは、想像を絶するものがある。

180度違うどころか、全く別のストーリーに変換してしまうのである。

その証拠に、寒汰のブログに書かれる女性の発言は、フィリピン人なら絶対にしないような発想、変な和製英語だらけである。寒汰の脳みそには、実際の女の言葉は1%すら伝わっていないのであった。

たとえば、寒汰が数カ月前にマニラのカラオケを連れ回した女がいる。名前を明美(仮名)と言う。

明美は寒汰のことを嫌で嫌でしょうがなかったが、数日間客もなく、やむにやまれず、寒汰に買われることになった。ただ、さっさとやることだけやって早く帰りたかった。

それなのに、寒汰は何時間も明美をマニラ中引っ張りまわしたあげく、最後には500ペソぽっちだけ渡したのである。

明美は憤慨した。激怒した。半端なく怒り狂った。

そして、寒汰に「数時間も連れ回したのだから、その分の対価はちゃんと払え」と文句を言った。

数時間、異常に気持ち悪く臭くて汚いオヤヂに付き合わされたあげく、たったの500ペソしかもらえなかたのである。

明美が怒るのも当たり前であった。

ところが、この件に関して寒汰ブログには、こう書いてある。

(明美が)「ホテルに連れて行け!」「朝まで泊めろ」「3Pで楽しませるから、もっと金をくれ」と言うのを振り切った。「ホテルに連れてけ!」と言われても「嫌だ!」なのだ。

実のところ、明美はホテルに連れていけなどと、一言も言っていない。

「何時間も連れ回したのだからその対価をくれ」と言っているだけである。

それが、寒汰の脳内では上記のように、明美がSEXしたくてたまらないように聞こえるのである。

ここまでの身勝手な解釈ができるのは、さすがのフィリピンベテランの中でも寒汰くらいであった。

ともあれ、これほどまでに女から嫌われている男が、「女心とは…」と説教をたれることができるのがフィリピンという国の摩訶不思議さであった。

.

さて、さすがに、この頃になるとノボルもだんだん、寒汰のことを少し不審に思い始めていた。

そもそもあまりに偉そうだし、その割には、肝心の情報もテクニックも全く披露しようとしないのである。

披露しないどころか、そもそもそんなものは全く知らず、ただハッタリをかましているだけではないかと思えてきた。

モーセに並ぶ男 I

今日もマニラベイカフェ(旧LAカフェ)は、賑わっていた。

まともな風俗店では働けないようなストリートチルドレン同然の売春婦と、魂が暗黒にとらわれきった買春オサーンの醸しだす怪しい瘴気に包まれていたのだ。

その時、マニラベイカフェの前にタクシーが止まり、以上に臭く汚らしい男が降りてきた。

この男、普段はジプニーを使う。なぜならタクシーと違って運転手と話をしなくてすむからだ。

この男は8年間毎月フィリピンに通っているにも関わらず、未だに英語もタガログ語も全くできないのだ。

そう、男の名前は寒汰。フィリピン買春界のスーパーヒーローである。

この男が今日珍しくタクシーを使ったのはわけがある。

今日は連れがいたからである。連れの名前はノボル(※ 暗黒アルピニストの NOBORU さんとは別人です)。マニラに来るのが二回目の現地初心者のオサーンだ。

寒汰は小心者で一人だとタクシーの運転手と話すことすらできないが、連れがいると異様に気が大きくなり、タクシーに乗るのも平気なのであった。

寒汰は相変わらず偉そうな態度をとりながら、マニラベイカフェへと入っていった。子分のようにノボルが付き従った。もちろん、タクシー代はノボルが払ったのである。ドケチで有名な寒汰は、他人と一緒にタクシーに乗った際、料金を払ったことなどなかった。

マニラ初心者のノボルを案内してやるのだから、タクシー代などノボルが払って当然と寒汰は思っていた。

しかし、その実、すでにノボルの方が寒汰より遥かに英語もタガログ語もできることには二人とも気づいてなかった。

.

話がそれるが、寒汰のような自称「フィリピンベテラン」と何度か会って筆者が気づいたことがある。

筆者が英語で他の人間で話しだすと途端に面白くなさそうな顔をするのである。

まるで「チッ」と舌打ちしたいような顔である。

これは、鴨にしようと思っていた旅行客が実は英語ができる(筆者の英語など大したレベルではないが)ので、

鴨にしづらいと分かって不機嫌になるのだとばかり思っていた。

しかし、最近フィリピン暗黒学の権威からある指摘があった。

彼らが不機嫌になるのは、鴨にしようとかそういう以前の問題なのである。

基本的に自称「フィリピンベテラン」は英語ができない。それも信じられないほどできない。

はっきり言って全く英語ができない。

挨拶さえまともにできないレベルである。

確かに筆者もびっくりしたことがある。

あるフィリピンコミュニティである自称フィリピンベテランが得意げな書き込みを見た時だ。

「俺は長年フィリピンでビジネスをやってるが “Nice to meet you” なんて聞いたことがない!挨拶は『ハイ、どうもどうも』と適当にするだけだ!」

これには二重に驚いた。まず、教科書に初対面の挨拶として載っているのはたいがい “How do you do?” である。確かにこれは滅多に使わないが “Nice to meet you” とは違う

つまり、このフィリピンベテランは、中学校の英語の教科書の最初の一ページ目に書いてあることさえ正確に覚えてないのだ。義務教育の日本で中学校一年すら学校に行ってなかったのかと思えてしまう。

これには本当にたまげた。

しかしもっと驚いたのは、このフィリピンベテランは “Nice to meet you” を聞いたことさえないということだ。

筆者がフィリピンのオフィスに居て経験した限り、フィリピンでもまともな会社で初対面の挨拶をする時は、必ず “Nice to meet you”, “Great to meet you”  言う。100%言う。中には “How do you do?” と、教科書そのままの挨拶をする人間もいるほどだ。

そのフィリピンベテランは、フィリピンで長く自称ビジネスをしているのに、”Nice to meet you” さえ一度も聞いたことがないというのだ。

そもそも「どうもどうも」は日本語である。

こんなことはありえない。

このフィリピンベテランが「ビジネス」というのは、ビジネスはビジネスでもモンキービジネスのように怪しいものなのか、それとも彼は英語の聞き取りが全くできないのか、あるいは周囲のフィリピン人からまともな英語が一切通じない人間だとバカにされて、一番基本的な挨拶さえしてもらえないのどれかだろう。

こういう自称フィリピンベテランは奇っ怪な英語を生み出すことでも有名である。

以下はその一例である。

(いもさんが作成してくれたフィリピンベテラン英語リストがあるのですが、以下はその一部です。)

スニークアウト (バーファインせずに外で待ち合わせて会う意味で使う)

-> sneak out は「抜け出す」の意味。待ち合わせして会うの意味は全くない。どこかのオサーンの勘違いが sneak out の意味を勘違いしたのが広まったのだと思われる。

ショーアップ (KTVで女の子を並べる意味で使う)

-> show up は、現れる(ある場所にやってくる)の意味。KTVで女の子を並べるのは line up それと混同した勘違いが広まったと思われる。

モーニングセット

-> モーニングセットは和製英語。英語なら breakfast menu だろう。

これらは完全におかしな英語だが、自称ベテランは普通の英語だと思い込んでいる。

そして自称ベテランに説教されたかわいそうな初心者も、それがフィリピン英語だと信じて使っている。

しかし、これはフィリピン英語ですらない。

日本人の買春オサーンしか使わない完全な和製英語である。

そんな英語で話しかけられて、理解しないと怒鳴られるフィリピン人も可哀想である。

しかし、驚くことはさらにある。

こういう人間に限って「俺、フィリピンベテラン!俺、英語できる!」と自慢していることである。

はっきり言って中学校一年生以下の英語力のオサーンが自慢する気になるのは理解出来ない。

たとえば筆者は外資で長年勤め、今は米国に在住して英語環境の中で仕事をしているが、それでも自分の英語ができるとは全く思わない。

貧弱で恥ずかしいレベルだと思っている。日々勉強し続けていて、それでも全く足りないと感じている。

筆者の周囲のノンネイティブスピーカーも同様である。

そんな筆者からすると挨拶さえろくにできないのに「俺、英語できる!」と自慢する自称フィリピンベテランの度胸には、ある意味羨望すら覚える。

.

ともあれ、暗黒学の権威は、なぜフィリピンベテランは、そばで英語を話す日本人がいると不機嫌になるかを説明してくれた。

自称フィリピンベテランは、普段、「俺、英語ができる!」と自慢している。それは彼らにとって数少ないレゾンデートルなのである。

しかし、現実には彼らは英語ができない。全くできない。絶望的なほどにできない。

だから自称フィリピンベテランも、自分が英語ができないのは薄々自覚もしている。

普段は初心者相手に虚勢をはってごまかしているが、たまに英語が普通程度にはできる人間がいると、自分の実像を嫌というほど見せつけられた気になって、不機嫌になるというのである。

自称フィリピンベテランにとって英語が少しでもできる人間は鬼門である。

自分たちの大切なレゾンデートルを崩壊させかねない危険な存在なのである。

.

凄まじく英語ができない自称フィリピンベテランたちだったが、その遥か上を行くのが

かのスーパーヒーロー寒汰だった。

寒汰はタクシーの運転手と必死で会話しようと思っても、カタカナが単語レベルで思い浮かぶだけだった。

「ミー….まにらべいかふぇ…ウォント……..ごー…プリーズ」

寒汰のタクシーに同乗したことのある売春婦も、寒汰のこの凄まじいばかりの英語には失笑をこらえるのが大変だったという。

「あの太った気持ち悪いオサーン(寒汰のこと)、いつも、えっらそうな態度してるけど、英語もタガログ語も全然できないんだよ。女の子とも会話が成り立たないから日本語が話せる女の子しか連れて帰れないんだからw」

57年間、地道な努力は一切せず、全てのエネルギーを他人を妬むことにしか費やしてこなかったツケであろう。

なお、寒汰が最近、「マニラがつまらない」と言い始めているのは、彼が唯一会話できる日本語が話せる女の子が減ってきたからなのである。

.

バナナマンの日村 勇紀そっくりの寒汰がマニラベイカフェの店内にはいると、店に居た女たちが一斉に飛び退いた。

あたかも、モーセが紅海をきりひらいたかのように、寒汰の行く手に道ができるのである。

寒汰はそれを見て、連れのノボルに言った。

「おい!見たか?俺は人気者だから皆が道をあけるんだ。お前も俺のようになってみろ。ゲヒ!」

日本語環境の時だけは異常に強気な寒汰であった。

LAカフェで寒汰は異常に嫌われており、皆我先にと逃げ出そうとしているだけなのだが、超人的なほどに自分に都合のいい思考しかしない寒汰はそれに全く気づいてなかった。

あまりに寒汰の自信たっぷりさにノボルも

「はぁ?オラ、こんなの初めて見ただ。寒汰サは偉いお人なんでやんすね〜。」

と、妙な東北弁混じりの言葉でしきりと感心していた。

(続く)