サントニーニョ信仰 II

魔尼羅(マニラ)パサイの日本食レストラン、エダモト(仮称)で寒汰(さむた)は今日も呑んだくれていた。

「おい!サトー!性病にかかる奴はけしからんだろう?あいつらは生でやってるってことだ。絶対に許せん!クソっ。生でやれるのはな、女が金を期待してからだ。金のおかげであいつらは生でやれてるんだ。羨ましくねーぞ!クソっ」

サトーは思った。これはただの妬みだな、フィリピンでなら、どんな女でも生で中田氏するのは容易なのに金を出しても生でやれないのは、よほど女に嫌われているのだろう。生理的に受け入れられないほど嫌われている男も惨めなものだな、とサトーは感じた。

寒汰はまだまだ荒れた。

「クソっ、俺はどんなに金を出しても生でやらせてもらえない!クソっ俺は性病にかかりたいわけじゃないぞ!絶対になりたいわけじゃない!クソっ、俺は、性病が羨ましいわけじゃないぞ!クソっ、俺だって一度くらいは性病にかかってみたいわい!クソっ、ゲフーーーーー!」

サトーは思った。世の中に性病になりたがっている人間も稀だが、性病になりたくて金を払い、それでも性病になれない人間はさらに希少だな、と。

ふと、寒汰が携帯電話を取り出し、どこかに電話しはじめた。

そして、藤岡弘のように低い声の寒汰が気持ちの悪いネコナデ声を出しはじめた。

「もしもし?アドボ子ちゃん?アコだよアコ。アコはね〜、今、エダモト(仮称)で食事してまちゅよ。アドボ子ちゃんも日本料理大好きでちょ?アコがこの前フィリピン貧乏スタイルで食事したから相互理解が深まったでちゅねー。アコ、他に女がいないからアドボ子ちゃんエダモト(仮称)に来て一緒に食事しようよ?ディバ?」

エダモト(仮称)の天井でガタガタと音がした。どうやら寒汰のあまりの口調の気持ち悪さに天井に居たネズミが集団で脱走してったようだった。

ちなみに、寒汰の話す言葉はアコとディバ以外は全て完全に日本語であったが、寒汰は自分が流暢なタガログ語を巧みに使いこなしていると信じて疑っていなかった。

「ボケーーー!私の携帯に電話してくるなって何遍いったら分かるんだ、このスットコドイ!テメーはあんな屈辱(寒汰が水ぶっかけご飯を見せつけながら食べたこと)を私に味あわせておいて、まだ何か望んでんのか?いいか、お前と私の関係は最初からないんだよ!このクズ!テメーと会うくらいなら、くだらねーサントニーニョ祭りでも行くわ!死ね!ゴミクズ男!」

「なんだあ、アドボ子ちゃん、サントニーニョ祭りに行きたいのか。ゲヒヒ。イカウ、アコとそんなにデートしたい!アコ、嬉しい!」

「ボケっ!てめーとなんか誰が行くか? いいか、私は絶対にお前とは会わない。絶対にあ・わ・な・い!分かるか?この貧弱言語野郎!もう二度と私のところにもアリサ(友人の名前)のところにも電話してくんな!ドブネズミ野郎!」

「なんだあ。サントニーニョ祭りに行くのはアリサちゃんでちゅかあ。でも、アドボ子ちゃんはアコのところに会いに来る、俺、嬉しいでちゅ!ディバ?」

「相変わらずテメーが何言っているのか全然わかんねーんだよ。私は日本語わかんねーって何度言えば分かるんだ!フィリピンに8年間も通ってるならいい加減、タガログ語か英語覚えろ!クズ!百回死んで来い!」

「まいったなあ、アコのタガログ語、そんなに完璧ディバ?褒められてアコ嬉しいでちゅ。そうか、8時に来るんだね。アコ、待ってるでちゅよ。アイラビュー」

「知るか!死ね!」ガチャッ。

電話を切った寒汰はサトーに言った。

「おい!サトー、参ったな。アドボ子は俺に会いたくて仕方ないらしい。ゲヒヒヒヒ。8時にエダモト(仮称)に来るそうだ。友達のアリサはサントニーニョ祭りに行くらしいがな。ゲヒヒヒ。今夜は二人きり。俺、半年ぶりにSEXできる!俺、興奮する!ゲフーーー!」

サトーは思っていた。この手のミスコミュニケーションは寒汰に限らず、言語能力のほとんどないフィリピン嵌りのオヤヂに共通だな、と。

彼らは全くコミュニケーションがとれないどころか、相手の言ったことを完全に勘違いして自分の都合のよいように完全にストーリーを組み替えてしまう。

言語能力が致命的にないこと、そしてあまりに自分勝手なことが原因だった。

今回のように、相手は「会わない」と言っているのに勝手に「◯時に待ち合わせ出来た」と勘違いする。

そして相手は当然来るはずがないのだが、そうすると烈火のごとく怒りだし「遅刻だ」「約束を破られた」と怒鳴りだすのである。

約束を破られたのではない。そもそも最初から約束など成立していないのである。

オヤヂたちも、自分たちが語学能力が低いことを頭のどこかでは分かっているのだが、くだらないプライドがそれを認めたくない。

そして、自分の言語能力の無さが露呈するのが恥ずかしいからこそ相手のせいにして怒り出し、自分の恥ずかしさをごまかしているのではないか、そうサトーは考え始めていた。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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