マラテのガールズバーにて II

この日、世界で最も不幸な日本人は間違いなくサトー氏であった。

マラテのガールズバーで、寒汰に捕まったサトー氏は、永遠とも思える寒汰のキチガイ話を聞かされるハメになったのである。

ガブガブとJINROを飲みながら寒汰は言った。

「おい!サトー!お前な、市民革命知ってるか?日本もなフィリピンもな、市民革命はなかった国なんだ。ゲフーーーッ」

寒汰は恐ろしく下品なゲップを吐いた。凄まじい悪臭が店内に漂った。

あまりの悪臭に他の客はそそくさと帰り支度を始めた。

『日本とフィリピンは市民革命がなかっただと?あの有名なEDSA革命は市民革命じゃないのか?日本の明治維新だって一種の市民革命だろ?そもそもお前は市民革命の定義を知っているのか?』

サトーは思ったが決して口に出さなかった。

寒汰に難癖をつけられて職を失った日本人も居るのだ。(※ 事実です)

下手に口答えをしたらどんな嫌がらせを受けるか分からない。サトーは言い返したいのをこらえた。

「ゲフッ、ふー、フィリピンではフィリピンの酒を呑むのに限るな。JINROチャムシルはフィリピンの酒だからな。おい!サトー!JINROチャムシルは自然な甘さがいいんだよ。お前に分かるか?ゲヒヒヒヒヒ」

寒汰は酔っ払うと同じ話を何十回でも繰り返すのだった。

それにしても未だにJINROがフィリピンの酒でなく、寒汰の大嫌いな韓国の酒であることを寒汰は知らなかった。さらにJINROチャムシルの甘みは自然どころか、人口の甘味料であることも気づいてないようだった。そもそも味音痴の寒汰にそんなことは分かるわけはなかった。

寒汰はまたJINROをガブガブ飲みながら言った。

「おい!サトー!フィリピンはな、カトリックだから偶像崇拝してるんだ。お前、知らなかっただろう?ゲヒヒヒヒヒ」

カトリックでは偶像崇拝を認めていない。そもそも聖書では偶像崇拝を禁じられているのだ。カトリック信者がイエスやマリア像を拝むことがあり、それをプロテスタントは「偶像崇拝」と批判しているのだが、カトリックはあくまで偶像崇拝とは認めていない

そもそも像を神格化しているわけではないので、少なくとも狭義の意味の偶像崇拝ではない。

もちろん、寒汰はそんな正しい宗教知識はなかった。いつもの知ったかぶりをしているだけだった。

「へ、へ、へー?カトリックが偶像崇拝とは新鮮な意見ですね。」

つい、耐え切れず、サトーは嫌味を言ってしまった。そしてすぐに激しく後悔した。寒汰に嫌味など言おうものならどんな嫌がらせをされるか分からない。

しかし、心配は無用だった。病的なまでに自己顕示欲の強い寒汰は嫌味を全部真に受ける男だったからだ。

「やっぱりお前は知らなかったな。カトリックは偶像崇拝だと覚えておけ!牛の像を作って拝めるのと同じだな(※)。ゲヒヒヒヒ。俺、博識だろう?俺、知恵者!俺、偉い!ゲヒヒヒヒヒ!」

藤岡弘のような野太い声の笑い声が店内にこだました。

入店しようとドアをあけた客がいたが、この寒汰の下品な笑い声を聞いて慌ててドアを閉めて走って逃げて行った。

(※ カトリックが偶像崇拝的な文化を持っているかどうかについては議論の余地がありますが、少なくとも日本に残る偶像崇拝とは全くレベルが違うものです。聖書の出エジプト記では明確に偶像崇拝が禁止されています。)

寒汰は突然、野太い声でガナリ始めた。

「『天にまします我らの父よ。願わくは御名をあがめさせたまえ。』おい!サトー、お前これ、知ってるか?これはな、カトリックの主の祈りと言うんだ。俺、博識だろう?ゲヒヒヒヒヒ」

カトリック信者のサトーは心の中で叫んだ。

『それはプロテスタントの主の祈りだ!カトリックでは”願わくは御名の尊まれんことを。”と言うんだ!カトリックとプロテスタントを一緒にするな!』

しかし賢明なサトーは口には出さなかった。

そもそも寒汰は教会に行ったこともなく、聖書も読んだことのないのだろう。何の知識もない男が知ったかぶりをしているだけだ。こんな男に反論しても何の意味もない。

「おい!サトー、お前知ってるか?聖書に出てくるマグダラのマリアってのはな、売春婦なんだ。ゲヒヒヒヒ。売春婦。俺、嬉しい。」

興奮した寒汰の体からさらなる悪臭が発せられた。

すでに店内に客はいなくなっていたが、店内の女もこの悪臭で見切りをつけて控え室に走って逃げて行った。

寒汰はまたガブガブとJINROを飲んでいった。

「ゲフー!おい、サトー!お前知ってるか?マグダラのマリアはな、売春婦だからカトリックでは話題にしないんだ。俺、博識だろう?ゲヒヒヒヒ!」

サトーはまたしても心のなかで叫んだ。

『マグダラのマリアなんてカトリックのミサの説教で一番多く引用される人物だろ!』

寒汰はミサに出たことなど一度もなかったから、そんな事情を知るわけもない。

そもそも寒汰にはカトリックとプロテスタントの区別も全くついていなかった。

それどころか、カトリックの国は世界でフィリピンだけだと考えているようだった。

しかし、思い込みと勘違いだけは凄まじく激しい寒汰は自分がカトリックのエキスパートだと勘違いしていた。

ここまで何も知らない自称エキスパートは世界広しといえども寒汰しかいないであろう。

寒汰の言説はまだまだ止まらなかった。

「ゲフーーー!おい、サトー、いいか?日本もな、フィリピンもな、市民革命してないだろう?市民革命がない国ではな、民衆がバカどもばっかりだからよ、偶像崇拝が盛んなんだ。」

サトーはやりきれずに酒をあおった。

『じゃあ、なんで市民革命が起こったフランスでカトリックが盛んなんだよ!このボケッ』

そう内心で思ったが

「へー、寒汰さんの新説はとても斬新でいいですね。本当に寒汰さんは博識なんですね。」

と、適当に言っておいた。それを聞いて寒汰は満足そうに頷いた。

「ゲヒヒヒ!俺、博識!俺、偉い!」

寒汰はさらに続けた。

「おい?サトーお前偶像崇拝の意味、知ってるか?ゲフーーー。俺が教えてやる。偶像崇拝ってのはな、仏教の他力本願と同じなんだ(※)俺、博識!俺、偉い!ゲヒヒヒヒ!」

(※ 仏教関係者のために言いますが、全く違います)

「そんな馬鹿な民衆のな、盗撮をするのは俺の権利なんだ。俺、盗撮するたびに神様に褒められることになってるんだ。俺、偉い!ゲヒヒヒヒ!」

もはや誰にも理解不能な理屈であった。

さすがにサトーはもう付き合いきれないと思った。

黙って席をたち、3千ペソを置いて帰ろうとした。飲み台はせいぜい数百ペソのはずである。三千ペソもあればすると寒汰が驚いた顔をして言った。

「おい、サトーなんだこの3千ペソは?」

『いいからとっといてくださいよ。』

サトーは吐き捨てるように言った。すると寒汰は本当に驚いたような顔をして言った。

「全然足りないよ。さっきお前、俺のJINROを一杯飲んだだろ。俺のJINRO、一杯5千ペソだ。それにな、お前は俺の持ち駒だから俺におごって当然だろ。1万ペソ払え。ゲヒヒヒヒ!お前、俺の持ち駒!俺、偉い!」

サトーはあまりのことに耳を疑った。

フィリピンでは

一度会ったら友人で、2度目会ったら親友。3回目から血が繋がる

と言われる。しかし、寒汰の場合は

一度会ったら親友で、2度目会ったら持ち駒

なのであった。

フィリピン関係で有名な著名人で運悪く寒汰に一度でも会った人間は寒汰の親友ということにされた。そして、二度以上会った人間は寒汰に「持ち駒」呼ばわりされるのが通例であった。

かつて、フィリピン夜遊び系サイトの代表格「あ・魔尼羅(仮称)」で騒動が起こったことがあった。

ご想像通り、異常に自己顕示欲の強い寒汰が起こした騒動であった。

「あ・魔尼羅(仮称)」を運営するデビル氏(仮称)は英断を下し、騒動の原因であった寒汰を追放した。

その際、寒汰は自分が追い出されたにも関わらず、何を勘違いしたのか「飼い犬に手を噛まれた」と言ってのけたのだ。

「あ・魔尼羅(仮称)」は誰が見てもデビル氏のサイトであって寒汰は途中からシャシャリ出てきた一メンバーに過ぎなかったのだが、寒汰はいつのまにか自分がサイトの主であると妄想するようになっていたのだ。そして本当のサイト主であるデビル氏は自分に使える下僕だと思い込むようになったのである。

この寒汰の異常な妄想はフィクションではなく事実である。しかし、あまりに異常すぎるため、読者の多くにはまだこれが事実だと信じられないであろう。

ともあれ、寒汰が「あ・魔尼羅(仮称)」で起こした数々の問題について触れると長くなる。これについてはまた別のエントリーで扱うこととしたい。

ともあれ、この日世界で最も不幸な日本人であったサトー氏は、寒汰のトンデモ社会理論を延々と聞かされた後、寒汰に呑み代を払うことを強要されたのである。

寒汰を激しく憎む男がまた一人増えた日であった。

(マラテのガールズバーにて 完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

2 Responses to マラテのガールズバーにて II

  1. デバンガーZ says:

    たしかにカトリックの教会にはイエスやマリアなどの像があるから「偶像崇拝」と思ってしまうのは(浅薄であるにせよ)分からないでもないが、「他力本願」はさすがに恥ずかしいwww

    それにしても職を失った話は気になる。いずれブログ主がエントリーを上げてくれることを願っている。

    • カトリックが偶像崇拝かは微妙なんですが、それでも公式にはカトリックは偶像崇拝を禁じている宗教です。
      それ以前のプリミティブな宗教とは一線を画す意味で「偶像崇拝禁止」と言っている訳ですからカトリック関係者に「おまえの宗教、偶像崇拝だろ」などと言うと怒られますよ。

      他力本願は、寒汰は仏教用語を完全に履き違えてますね。これまた浄土教の人に激しく怒られるレベルです。
      寒汰はカトリックも仏教も全く知識がないようです。

      職を失った方は、真っ当な仕事をされていた方です。
      ショックのあまり.. 本当にかわいそうです。

      ま、寒汰がやってることは本人が自称する「正義の味方」とは真逆で、世の中に対するテロ行為ですよ。

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