マラテのガールズバーにて I

寒汰はこの日はマラテのガールズバーで飲んでいた。

サトーと呼ばれる男と一緒だった。

サトー氏は無理やり寒汰に付き合わされていた。寒汰と居ると、鬱陶しいしトラブルにも巻き込まれそうなのでとっとと帰りたかったのだが、

途中で帰ると恨まれて、寒汰ブログにどんな中傷を書かれるか分からない。

怖くて帰るに帰れないかわいそうなサトー氏だった。

この日は、寒汰はいつも以上に饒舌だった。

「尖閣諸島の中国漁船は悪くない!日本の巡視艇が中国漁船を捕まえたのは日本の領海の外だという!つまり中国の領海で捕まえたということだ!日本の巡視艇が領海侵犯したんだ!日本の巡視艇、けしからん!」

寒汰は領海の外には接続海域、排他的経済水域(EEZ)、公海があることは全く知らなかった。

日本の領海のすぐ外側は中国の領海だと思っていたのである。

そんな基本的な社会知識のすら男であった。

同意を求められてサトーは困ったが、ここで睨まれてはまた寒汰ブログで凄まじい中傷を浴びる。

実際、寒汰の中傷のおかげで職を失った人間もいるのである。

「はあ、そうですね」

サトー氏は適当に相槌をうった。

話題はパサイの日本食料理屋、エダモト(仮称)になった。

「ゲフッ。あのエダモト(仮称)はなあ、俺が作ってやったよなもんだ。分かるか?サトー?」

ネモトが繁盛しているのは俺のおかげだと言う人間はこの世に10人以上は居た。

その大半はただの客なのだが、寒汰もその一人であった。

いや、それどころか寒汰はエダモト(仮称)に迷惑をかけたことしかなかった。

寒汰は壊れてた中古のウォッシュレットを持ってきて、エダモト(仮称)の便器を壊しながら設置したのは魔尼羅にいる日本人の多くが知っていた。

凄まじく臭いウォッシュレットで、しかもすぐに壊れて使えなくなったためエダモト(仮称)にはいい迷惑でしかなかったのだが、寒汰はそれが大貢献だと思っていた。

サトーもそれを知っていたが、それを口にするとまた寒汰ブログに何を書かれるか分かったものではないので適当に相槌をうった。

なにせ一週間前も、知り合いのKTVが寒汰によって散々ボロカスに書かれていたばかりである。

「ゲフッ、やっぱりフィリピンではフィリピンの酒を飲むに限る。JINROはうまい!」

相変わらず、JINROがフィリピンの酒ではなく韓国の酒だとは知らない寒汰であった。

「サトー、分かるか?このJINROチャムシルは自然な甘さがいいんだ。お前には分からないだろう?ゲヒヒヒヒ」

事実はむしろその逆で、JINROチャムシルは人口的な甘味料が入っていて、日本の研ぎ澄まされた自然な焼酎とは全く違うのだが、味音痴の寒汰はそんなことが気づけるわけもなかった。

安ければなんでもうまいと思う男なのである。

「ゲフーーー!俺はな、エダモト(仮称)に客を紹介してるんだ。俺がエダモト(仮称)を大きくしてやったんだ。俺、偉い!ゲヒヒヒヒ」

実は、寒汰の紹介した客はトラブルメーカーが多かった。つい数ヶ月前も寒汰が紹介した客が大騒動をおこし、エダモト(仮称)は大損害を被っていた。

なぜ寒汰の紹介する客はことごとくトラブルメーカーが多いのか正確にはわかりかねるが、やはり類は友を呼ぶのであろう。

「クソっ、そんなエダモト(仮称)を作り上げた俺につれなくしやがって。あのマグロ子ババア(仮称)の奴、クソっ!」

寒汰は荒れてきたようだ。サトーはもう早く帰りたくてしょうがなかったが、うまくやらないと後で寒汰にブログでどんな中傷をされるか分からなかった。

なにせ寒汰ブログの凄まじい中傷のおかげで職を失った人間もいるのである。

寒汰の話はフィリピンの歴史や社会に及び始めた。

サトーは嫌な予感がした。尖閣諸島の件でも分かるとおり、寒汰には正しい歴史の知識も地理の知識も全くなかった。なにせローマ帝国の誕生を千年以上勘違いしているような男なのである。

未だにキリスト教はイスラム教より新しく誕生した宗教だと思っている。

寒汰は幼少の頃よりいじめられて、小学校にもまともに行かず、そもそも行っても授業を全く理解する頭はなかった。さらに生まれ持った勘違いだけが凄まじく強い男だった。

そんな男だから歴史に関する知識は凄まじいほどに間違っていた。レコンキスタを行ったのがローマ帝国だと思い込んでいるのは有名な話である。

寒汰は言った。

「いいか?サトー?フィリピンはな、市民革命をやってない国なんだ。日本と同じだ。」

EDSA革命は市民革命じゃないのか?日本だって明治維新が市民革命の側面が強いだろう。とサトーは思った。しかしすぐに言っても無駄だと思った。

寒汰がフィリピンパブにはまったのは2000年である。彼にとって自分がフィリピンに嵌る前のフィリピンの歴史はないのと同じなのである。

そもそも寒汰は市民革命の意味を全く分かっていないだろう。

「あのな、サトー、市民革命をしてない国はな、民衆が馬鹿なんだ!バカ!俺と違って、バカ!だけど俺は賢い!俺、偉いだろう?ゲヒヒヒヒ」

サトーは黙って酒を煽った。こんな男には何を言っても無駄だからである。

しかし、寒汰のトンデモ社会理論はこれからが本番であった。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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