テキサスから来た臭肉王 II

テキサスで安かろうまずかろうのステーキ屋を営むサムータは買春目的で戦後直後の日本に来ていた。

サムータの馴染みの売春婦(パンパン)である亜土墓子(あどぼこ)は、そのサムータに連れられて新橋のアメリカンレストラン・ネモタリアンにやってきていた。

サムータが注文したコンボ(※定食)が運ばれてきたが、なんと二人いるのにコンボは一人前であった。

サムータは言った。

「ゲヒヒヒヒ。コンボ一つなら二人いても値段は半分。俺、食事には50銭以上使わない主義だからな!俺、偉い!ゲヒヒヒヒ。お前、腹減ってるだろう。だったら後で俺の食い残しを食べろ。嬉しいだろう?ゲヒヒヒヒヒ」

ああ、と、亜土墓子(あどぼこ)は心のなかで叫んだ。彼女はサムータの異常なドケチさを忘れていた。

そんな男にほんの少しでも期待した自分が馬鹿だったのだ。

『バカバカバカ、私のバカ。こんな汚いアメリカ人は生涯の敵!一瞬足りとも油断してはならない鬼畜だと大和撫子として忘れてはならないことだったのに!』

だが、亜土墓子(あどぼこ)の苦難はまだ始まったばかりだった。

サムータは、そばで苦々しい顔をして立っているネモティおばちゃんに声をかけた。

「おーい!例のあれ、持ってこい、『あれ』だ。分かるな?ゲヒヒヒヒヒ」

藤岡弘のような野太い声で笑うサムータに亜土墓子(あどぼこ)は嫌な予感がして、背筋が凍った。

果たして、運ばれてきたのは、ミキサーであった。

もちろん昭和21年当時の日本人はそんなものを知らない。亜土墓子(あどぼこ)もミキサーを見るのは初めてであった。

固まっている亜土墓子(あどぼこ)をサムータはニヤニヤみながら、おもむろにご飯をそのミキサーの中にぶち込んだ。

そしてさらに水と塩をぶち込みミキサーのスイッチをいれた。

けたたましい音がしながら、ミキサーは回転しはじめた。そして、すぐに白米はドロドロに分解された。

亜土墓子(あどぼこ)は呆気に取られた。

滅多に手に入らない白米、大切な大切な白米、当時の日本では貴重な白米にいったいなんということをするのか。

これは日本の文化への冒涜である。

ガタガタと怒りに亜土墓子(あどぼこ)が震えていると、サムータはミキサーのスイッチを止めた。

そして、ミキサーの瓶をもちあげて、なんとそのままグビグビと飲み始めたのである。

これには亜土墓子(あどぼこ)だけでなく、ネモタリアンに居た客の誰もが驚いた。

グキュッ、グキュッ、たとえようもなく嫌な音をさせながらサムータはその白米をすりつぶした液体を飲んだ。

亜土墓子(あどぼこ)は愛する祖国の文化への冒涜、そしてあまりの気持ち悪さに気も狂わんばかりになった。

半分ほど液体を飲んだところでサムータは飲むのを中断した。

そして、あの野太い声で話し始めた。

「おい!俺、知ってるぞ!日本人の貧乏人はこうやって飯を食うんだろ!ゲヒヒヒヒ、俺、物知り!俺、偉い!」

サムータの口から飲みかけの液体が飛び出し、店の端にまで飛んだ。

泣く子も黙るGIが隅の席に座って居たのだが、関わらないほうがよいと思ったのか、そそくさと会計をして出て行った。

それにしても、この白米ミキサージュースは一体どういうことなのか?どうやら、サムータはお茶漬けのことをどこかで聞きかじったらしい。それをを恐ろしく勘違いした形で理解しているようであった。

日本人は白米をミキサーで潰して飲むことなど絶対にしない。そもそも当時の日本にはミキサーなどないのだ。

亜土墓子(あどぼこ)は母国の日本文化を冒涜された怒りに身を震わせ、サムータを睨みつけた。

それを見て、サムータは言った。

「ゲヒヒヒヒヒ、目が点になってるな。俺は日本の貧乏文化を熟知しているからな。俺の博識ぶりに惚れ直したか。」

凄まじいまでのサムータの勘違いであった。

サムータは半分ほど残ったその汚らしい白米ジュースを汚らしそうなビニール袋にドボドボと入れた。

そして、それを亜土墓子(あどぼこ)に渡してこう言い放った。

「おい、持って帰れ。貧乏日本人は残飯を持って帰る習慣があるんだろ?俺、物知りだろ?ゲヒヒヒヒヒ」

亜土墓子(あどぼこ)はその汚らしい液体をサムータの顔に投げつけたくなった。

でも、それはできなかった。家ではお腹をすかせた子どもが待っているのである。亜土墓子(あどぼこ)はどんな屈辱にも耐えて金を手にしなければならないのだ。

それが敗戦国・日本に生まれた大和撫子の運命なのだ。

屈辱に気丈に耐える亜土墓子(あどぼこ)にサムータはまたこう言い放った。

「ゲフッ、これで相互理解が深まったな。ゲヒヒヒヒ」

店内にいる誰もが感じた。相互理解どころか決して修復のしようがない深い亀裂、そしてたとえようもなく激しい憎しみが生まれたことを。

時は昭和21年の冬、敗戦後の日本で起こった悲劇の一つであった。

(テキサスから来た臭肉王 完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

10 Responses to テキサスから来た臭肉王 II

  1. キーニャオ says:

    これは極端な例ですねw

    ただ弁護する訳じゃないですが、アジア旅行の楽しみの一つとして、日本(先進国)で食べれないものを食べたいってのはあると思うんですよ。
    フィリピンは未だにフィリピン童貞なんで分かりませんが、タイとかに行って、日本にもある様なレストランで食事したくないです。やっぱり屋台の料理、雰囲気が好きなんですよ。地元の人が食べてる所で食べたいっていうか。

    でも、現地の子を誘って食事だと、向こうからすれば、せっかく金持ち日本人と一緒なのに、どうしていつも食ってるものを食べにいかないといけないのか?って思うんでしょうから難しいですね。
    別に見下してる訳じゃなくて、アジアっぽい雰囲気に浸りたいだけなんですが。

    だからって水かけご飯を食いたいとは思いませんけどw

    • キーニャオさん、

      海外旅行をすれば、その国ならではの料理を食べたいと思うのは自然なことです。
      ただ、料理は料理そのものだけでなくて、その料理をとりまく文化や環境もあわせて味わうものです。

      たとえば、たこ焼きを食べるならやはり大阪や明石に行って大衆的な店で味わうのが何よりの貴重な海外体験でしょう。
      赤坂にある Hooters でたこ焼きを食べてもそれは、本当の意味でたこ焼きを味わったことにはならないと思います。
      (そもそもHooters にたこ焼きはおいてないですが、エダモト(仮称)でも水掛けご飯を食う人間はいませんから)

      また、タイ王室指定の宮廷料理レストランに行って、「おい、メニューにないけどカオマンガイ作ってだせ!」という客がいたら、恐ろしく失礼ですよね。

      カオマンガイは屋台料理であって、宮廷料理ではありませんから。

      もし、その客にタイ人の連れがいたら、恥ずかしくてすぐにでも帰りたくなるでしょうね。

      そもそもフィリピン人でも滅多に水掛けご飯は食べません!w (少なくとも寒汰のようにお茶漬けのようには絶対にしません)

      それをおいておいても、貧しいスタイルの食事がしたいなら、スラム街に家を借りて自分の家でやるべきでしょうね。
      それをレストランで、しかもわざわざフィリピン人に見せびらかすようにやるのはフィリピン人を辱めているのと同義でしょう。

      ま、寒汰にはそんな人の感情は全く理解出来ないでしょうけどねw

  2. kohta says:

    写真が元に戻ってる(笑)
    そう云えばクリスマスから年末年始にかけて、オイラのアンへでの痴態も某ブログに載っていたらしい(恥)

    ちゃち入れる訳じゃないけど、ここと前の記事サムータが所々で寒太になってる。
    本人に突っ込まれなきゃ良いけど(笑)
    まさか日系2世でサムータ・寒太って名前だったってオチかな?

    • あはは、お言葉に甘えさせていただいて戻させてもらいましたw

      アンヘのも写真載っちゃってるんですか?
      やつに狙われてるんですかね?

      肖像権の侵害で一回訴えてやりましょうか?w

      サムータ/寒汰の指摘、ありがとうございます。
      サムータ寒汰には笑いましたwww

      一応、サムータに統一させていただきましたw
      また、コメントをお願いします。

      (通報の方もいつでもお待ちしていますww)

  3. wasabi says:

    老師、ご無沙汰しております。目黒のタイレストランでお目にかかって以来で御座います。(と言っても覚えてらっしゃらないかと思いますが、、、、)

    以前カンボジアで卒業間際の大学生と話をしました。

    「フィリピンにボランティアに行ってました。ストリートチルドレンの気持ちが分かるように一緒に道で寝たりしてたんですよ。」

    NGOの指示でしたのか、娯楽の延長でしたのか分かりませんが、いい気持ちはしませんでした。

    期間限定のホームレス。未来を約束された野宿。

    体のいい海外旅行、美しい物語。

    彼は分かり合えたといっていましたが、、、、

    身なりの綺麗な金持ちがホームレスと一緒にゴミ箱の残飯漁っても「俺たちの気持ち分かってくれてる。」とはならないですね。

    仕事柄深夜の公園で一服なんて事とするのですが、しばしホームレスにタバコをねだられます。日本だと恐ろしく卑屈に頭を下げてきます。ゴミを見るような目で見られたり、無視されるのが日常なんしょうね。

    こっちも下層日本人ですので(ホームレスの方も分かっていると思いますが)大した事は出来ないのですがこれも縁なので残りのタバコをタンブンします(最近は高いので辛い)。

    偉ぶらず卑屈にならず。

    「大変そうですね」

    の一声とタバコでおもちゃを貰った子供のように嬉しそうな顔をします。こっちが驚くくらい。

    サムータさんも日本語で書かれたマザーテレサの本でも読んで少しは変わればと思います。

    最近は見かけませんが珍獣がマニラの下層階層と道で話しているのをしばし見かけました。実際に話していたのかは不明ですが何か関わっていました。恐ろしく不自然な作り笑顔が気持ち悪かった。

    昔、たまたま知り合った人に「この人ブログの超有名人だから」と紹介されました。

    「初めまして。」

    と挨拶すると右上に目線を反らして無視されました。

    長くなりましたが老師のリアルタイムな翻訳記事を楽しみにしております。

    • wasabi さん、

      ご無沙汰です。
      日本を離れる前のオフ会でお会いできるかと思ったのですが、お会いできなくて残念です。

      そう、先進国の人間が途上国の生活をほんの一瞬だけ真似をしただけで一体何がわかるのか疑問です。
      殆どの場合は、ただの自己満足でしょうね。
      その土地で生まれ育たなければ分からない何かがあると思います。
      日本の中だって、自分が生まれ育った地区の外の文化を根本的に理解することは難しいと思いますよ。

      だから表面的なことをやっただけで「分かった気になる」のが一番避けるべきことなんでしょうね。
      寒汰はまさにその最悪の例です。
      何も知らないのに、しかも勝手に妄想するだけで分かった気になっている人間ですww

      wasabi さんの貧困層に対する視点は私なんかよりもずっと真に迫っていると感じます。
      それでいて謙虚さを失わない点は寒汰に凸の恥ずかしいカスでも飲ませてやりたいですねw

      寒汰はマザーテレサなんて読んだことないでしょうね〜w
      私はカソリックの学校出身なので中学時代に読まされましたが。

      しかし、wasabi さん、寒汰と会われたことがあったんですね!
      挨拶したのに無視ですか。ははは、相変わらず失礼な奴ですね。

      寒汰は本当に偉そうですからね。
      どうやったらあそこまで偉そうになれるのか、寒汰研究家の私でも分かりませんw

      ともあれ、今後もコメント、レポートぜひお願いいたします。

  4. wasabi says:

    老師、早々の御返事有難う御座います。

    先日のオフ会は非常に楽しみにしていたのですが、目覚めると宴の終わりの時間!目覚ましはなった形跡があるのに、、、、

    とても残念でした。

    急遽、電話をしたBOBさんに快く無断欠席したことをお許しいただけたことが幸いで御座いました。

    私の知人にもサトーさん(仮名)という方がおります。写真の方とは瓜ふたつの他人だと思いますが、誠実な方だけにマニラでの安否が気に掛かります。もちろん欠片も恨みを買う様なことが無い方である事は重々承知しておりますので犯罪がかった安否の事ではありません。

    今月末よりしばらく自由の身になります。ベトナム、カンボジアを目指しますが、予約済みの航空券のためだけにマニラに寄ります。

    ホエールウオッチングで鯨に遭遇するのは難しいですが、悪臭を辿っていけば何かレポートできるかもしれません。

    • wasabiさん、

      はい、オフ会は本当に残念でした。

      ベトナム、カンボジアにいらっしゃるんですか〜。いいですね!
      悪臭男ウォッチングは離れて見ている分には面白いですよ。
      あんなおかしな珍獣は他には居ませんから。

      ちょっとこっそり話ししたいこともありますのでメールしますねw

  5. AC says:

    水かけご飯、現地の貧困層の多くは食べたり食べていたことがあるんだと思います。コーヒーを白飯にかけて食す、なんてことも。

    ただ、その食事自体あるいはそうした食事を採っていたことを、お涙頂戴話のネタに使う以外で外国人に言うことはないんじゃないでしょうか。それが普通のメシなんて彼らだって誰も思ってないですよ。中にはメシは三日に一度、なんていう本当の貧困家庭ではそれでも腹が満たせる大事な一食な時もあるんでしょうけど。

    いずれにしてもそれを仮にもお金をとって食べ物を供する店で、というのは常軌を逸しいていること甚だしい。

    そして今度は偶像崇拝とか意味も分ってないのに書いてるし>寒汰 w

    • ACさん、

      おっしゃるとおりだと思います。

      ちなみに、水掛けご飯ですが、お茶漬けのように食べることはないと思います。
      そもそもフィリピンではお茶碗がないですから。

      他の方とも議論したのですが、せいぜい少量の水をかけて分量を膨らますならあるかもしれない、ということです。
      ただ在比が長い方やその周辺のフィリピン人ですら、それを見たり体験したことはありませんでした。
      ACさんが仰るとおり、単に少量の水をかけるだけの水掛けご飯でさえ、かなりレアなケースだということは間違いないでしょうね。

      そんなレアな貧乏スタイルを高級店の部類に入る日本食レストラン(フィリピンの標準からすれば十分高級店)で
      人目もはばからず、これ見よがしに見せつけるのは、尋常ではないですね。
      エントリ中にも書きましたが、フィリピンやフィリピン人に対する侮辱です。
      相互理解とは真逆でしょうね。

      「カトリックは偶像崇拝だ」というのも、恐ろしい勘違いですね。
      少なくともカトリックは公式には偶像崇拝を禁止しています。
      この勘違いについては昨日のエントリで書かせていただきました。

      寒汰はフィリピンの事実は何も見ずに本当に妄想の中だけで生きてますねw

      ところで、ACさんにメールさし上げたのですが、届いていますでしょうか?

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