結婚願望 III

寒汰は旧 LA Cafe (現 Manila Bay Cafe)に居た。

LA Cafe には今日も大勢の女が居た。しかし、誰ひとりとして寒汰には近寄ってこなかった。

「ケッ、絶対基準でなくても相対基準でも俺の眼鏡にかなう女は居ないだけだ!」

と、相変わらず酸っぱいブドウ(※)な寒汰であった。

(※ イソップ童話で自分がとれなかったブドウを「あれは酸っぱいブドウだ。どうせうまくない」と狐が負け惜しみを言う事が由来)

さらに、絶対基準はともかく「相対基準」と言えば、意味がおかしくなることに気づいてない寒汰であった。

そもそも寒汰は数学でいう「集合」の概念も正しく理解できてないので当然である。

慣れてない言葉を背伸びして使おうとしていつも馬脚を現してしまうのが寒汰の特徴だった。

 

「クソっ、どいつもこいつも幸せそうにしやがって」

他人の幸せが何より気に入らない寒汰であった。

寒汰は無断で持ち込んだJINROをまたガブガブと飲み始めた。

「ふーっ、フィリピンで飲むのはフィリピンの酒に限る!」

相変わらずJINROが韓国の酒とは知らない寒汰であった。

「クソッ、あいつらも結婚するのか。ふん!こんなカフェに居る売春婦と結婚なんかする奴は羨ましくともなんともないわ!ゲフッ」

買春から結婚に発想が凄まじく飛躍するのも結婚願望が異常に強い男の特徴であった。

通常、結婚の前には付き合いがあって、凸凹があって、その前に知り合わないといけないのだが、

寒汰に限らずフィリピンに嵌る痛いオサーンはその間のすべてのプロセスをすっ飛ばして考える傾向があった。

さらに、寒汰は自分がまさにその援交カフェにいる売春婦と結婚することを切望していたのだが、この手のオヤヂにありがちは「俺だけは例外」「俺のマハルコだけは例外」病にとりつかれていた。

完全に酔っ払った寒汰は子供時代を思い出していた。

寒汰は妾の子供で、父親とはほとんど会ったことがなかった。

そして、寒汰は自他共に認めるマザコンであった。

しかし寒汰が恋焦がれる母親はプロテスタントだった関係か、いつも韓国人を家に連れ込んでいた。

そして寒汰はほったかしにしてその韓国人たちといつも何やら親しげな行為を行っていたのである。

「クソっ、だから俺は韓国人が嫌いなんだ!」

寒汰は机をドンと叩いた。

元々寒汰の周囲には誰も居なかったが、寒汰の泥酔具合に危険を感じたのかさらに寒汰の周囲からは人が消え失せた。

ちょうどその時、窓の外に韓国パブのホステスらしき女が数名通りかかった。

綺麗な髪の女だった。

韓国パブから韓国を連想したのか、寒汰はボソッと言った。

「でも、俺、韓国人でもいいから結婚したい。俺、56歳。もうすぐ57歳になる。でも、まだ結婚できない。俺、寂しい

寒汰の異常に汚らしい目から涙が溢れ出た。

テーブルに落ちたその涙は、ジュッつと音を立ててテーブルを溶かし始めた。

どうやら酢酸入りのシニガンを飲み過ぎたせいで寒汰の異常に臭い涙は酢酸になっていたようである。

気がつくと、あまりの危険を悟ったのか、寒汰のいる半径10メートル以内には完全に誰もよりつかなくなっていた。

寒汰の人生を象徴しているかのようであった。

(結婚願望 完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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