結婚願望 II

寒汰は常日頃言っていた。

「結婚なんてしようと思えばいつでも出来る

全くその通りである。ほとんどの人間は、結婚なんてやろうと思えば簡単にできるのである。

相手が何人でも結婚するだけなら簡単なものである。

別に20歳の男でなくて、30歳や40歳、50歳のオサーンでさえ日本人女性にケコーンを迫られることは全く珍しくもない。

だから途上国の女相手の結婚など、その後の生活の大変さを考えなければ、ごく一部の例外を除いて誰でも簡単にできるのであった。

哀しいかな、寒汰はそのごく一部の例外であった。

さらに事実を事実として認められない寒汰は自分がなぜ結婚できないのか分からなかった。

そしてこう言うのであった。

「俺、結婚しないポリシー!俺、独身大好き!」

大嘘であった。寒汰は結婚したくてしたくてしょうがないのであった。

今日も寒汰は呑んだくれていた。

場所は魔尼羅(マニラ)の韓国料理屋。寒汰は持ち込んだJINROをガブガブ飲みながら言った。

「ガフー、やっぱりフィリピンで飲むフィリピンの酒はうまい!フィリピンではJINROを飲むに限る!」

相変わらずJINROは韓国の酒だとは知らない寒汰であった。

「おーい!ミス!ジャージャー麺持ってこい!ジャージャー麺な!分かるか!ディバ?」

ディバ以外は完全な日本語であったが、寒汰は自分が完璧なタガログ語を話していると固く信じて疑わなかった。

また寒汰はガブガブ下品にJINROを飲みながら言った。

「クソッ、俺以外の奴はどんどん結婚しやがって!なんで俺だけ結婚できないんだ!クソッ」

自らの猛悪臭とあまりに汚らしい風貌では、結婚以前の問題であることに全く気づいてない寒汰であった。

寒汰はウェイトレスが持ってきた麺を見て言った。

「やっぱり韓国料理屋ではジャージャー麺に限るな!ジャージャー麺は韓国の自慢の料理だからな!」

寒汰はジャージャー麺は韓国料理ではなく、中華料理だとは気づいてなかった。

寒汰の目の前にあるのはチャジャンミョンと呼ばれる韓国料理であった。

中華料理のジャージャー麺が基であるが、それとはまた別の料理である。

これを混同するのは、カリフォルニアロールを江戸前寿司というようなものである。

ウェイトレスは寒汰の間違いに気づいていたが、寒汰のようなキチガイの客に間違いを指摘して逆切れされてはたまらないので嫌なので黙ってチャジャンミョンを持ってきたのである。

寒汰はチャジャンミョンをバシャバシャそこら中に跳ね飛ばしながら食った。

寒汰の飛ばしたチャジャンミョンのスープは店の反対側にいた客にまでかかった。

その客は食事の途中であったが大慌てで会計をして出て行った。

「クソッ、どいつもこいつもフィリピーナやタイ人と結婚しやがって!でもな、あいつらが結婚してる女は売春婦だ!だから俺の方が偉いんだ!」

そういう寒汰自身が結婚しようとしている女も売春婦であった。それどころか、その売春婦の中でもどんな客とでも寝る最低レベルの売春婦であった。

もちろん、寒汰はそんな自己矛盾に気づく脳は持ちあわせていなかった。

知能指数85の低能さでは無理もないことであった。

寒汰はさがにグチャグチャと汚らしくチャジャンミョンを食べた。

汚らしく汁が店中に飛び始めた。

ウェイトレスは思わずカウンターの影に隠れた。

寒汰はまた言った。

「クソっ、あいつらは売春婦と気づかずに結婚してるんだ!ゲヒヒヒヒ、結婚しない俺の方が偉い!」

そもそも、フィリピン、タイの売春婦と結婚する男は、もう普通の結婚には飽きてわざわざ売春婦と結婚する人間もいる。

そう、彼らはわざわざより好んで売春婦を選んで結婚するのだ。

しかし、そんな趣向の人間がいることは結婚どころか一度も女性と付き合ったことのない寒汰には分かるわけもなかった。

「ゲフー!しかし、つけ出しがうまいな!ゲヒヒヒヒ!」

つけ出し(売掛金の請求書、あるいは相撲の「つけ出し」)とつき出しを勘違いしている寒汰であった。しかし人生間違いだらけの寒汰にとってはそんなことはもはや間違いのうちにすら入らなかった。

「結婚した奴ら、偉そうにしやがって!クソっ、結婚した奴ら、俺を見下してやがる!クソっ!ゲフー!」

別に結婚など誰でもできるし、ましてや何度も結婚している人間など、結婚を偉そうに思うどころかなんとも思っていない。

しかし、寒汰だけでなく結婚に異常にあこがれを持つオサーンは結婚した人間が勝ち誇っていると勝手に思い込んでいるのである。

これは筆者も少し驚いたことであるが、ある程度遊び慣れている人間でも未婚の人間はどうも結婚に過剰な憧れを持ち、既婚者に妙なコンプレックスを一方的にいだいているようである。

おそらく既婚者のほとんどはそんなこと考えもしてないし意識もしてないのである。

むしろ独身の方が自由で羨ましいとくらいに思っている人間が多いのではないか。

これは、高学歴者ほど学歴を意識せず、学歴がない人間ほど勝手に学歴を意識してコンプレックスを膨らませるのと似ているかもしれない。

寒汰は言った。

「クソっ、あいつらが結婚出来たのは、カネのおかげだ!カネがなければ奴らは結婚出来てないんだ!」

そういう寒汰自身はカネがあっても結婚できてないことに気づいてなかった。

「ん?麺が柔かいな。この店、麺と言うものがわかってないな。俺、麺のことよくわかってる!俺、偉い!ゲヒヒヒヒ!」

寒汰が一人得意そうにつぶやいた。もちろん、寒汰はフィリピン人が柔らかめの麺を好むことは全く知らなかった。

寒汰は自分が麺類のエキスパートであると思い込んでいたが、その実、思い込んでいるだけで麺類の基本も知らなかったのである。

麺というものをわかってないのは寒汰の方であった。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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