寒汰と女と覚せい剤 II

TOSHIYA氏のからかいで、寒汰はますます機嫌が悪くなった。

そして、ぶつくさ言いながら、机をドンとたたき始めた。

見るに見かねてTOSHIYA氏が言った。

「おい、寒汰のオッサン、まあええから飯でも食いに行こうや。オッサンの馬鹿の一つ覚えのシニガンでも食べたら気分もすっきりするで。」

促されて寒汰はLAカフェの外に出た。

寒汰のお気に入りの知恵(本当の名前は Cherry だが、英語が全くできない寒汰は「知恵」だと聞き違いしていた)のそばを通った。

知恵はうっとりとした顔をして噂のハンサム老人トミーにもたれかかっており、寒汰には一瞥さえくれなかった。

寒汰はさらに憤慨した。

寒汰とTOSHIYA氏は食事をしていた。

寒汰がオーダーしたのはシニガン。寒汰はフィリピン料理はアドボとシニガンしか知らなかった。

7年間フィリピンに毎月通っているが、英語もタガログ語も全く出来ず、一人では新しい店には入れない男なので仕方ない。

寒汰はレストランに入っても知恵のことをブツクサ言っていた。TOSHIYA氏は寒汰の気を紛らせようと言った。

「おい! ゴミクズみたいな寒汰のオッサン、ええこと教えたるわ。あのな、そのシニガンな、不味いやろ?

なんでか言うたらな、フィリピン人が作るからや。儂がシニガン作ったら旨いで〜。

シニガンもトムヤムクンも基本はそう変わらへんねん。辛みとかレモングラス使うかどうかは違うけどな。

こういう豆知識知っとったらオッサンみたいなキチガイでもちょっとはモテルようになるんちゃいまっか?がっはっはっは」

これを聞いて寒汰はまたしても大得意の勘違いをした。

「トムヤムクンはシニガンと全く同じ!違いは酸味だけ!トムヤムクンが酸っぱいのはレモングラス!シニガンが酸っぱいのは…酢酸いれるからだ!俺、物知りなった!俺、モテモテなる!俺、偉い!ゲヒヒヒヒヒ」

なにせ1を聞いて100を勘違いする男なのである。

TOSHIYA氏が言った内容と全然違う内容に変換されてしまったのである。

料理に関してはど素人以下の知識なのに「自称料理専門家」と名乗る寒汰は後に

「シニガンとトムヤムクンの違いはレモングラスを使うか使わないだけ。シニガンの酸味は酢酸をいれるからだ!」という、キチガイじみた主張をするようになる。

ちなみに、シニガンの酸味はタリマンドの果実を使用する。そもそも酢酸を入れる料理などこの世にない。

寒汰はそんな基本的なことも知るわけはなかった。

寒汰は機嫌がよくなってきた。

そこでTOSHIYA氏がまた寒汰に言った。

「寒汰のオッサンな、オッサンがモテへんのはしゃあないけど、気を落とすなや。他の男と仲良くする女はな、シャブでも食らってると思ったらええねん。だいたい知恵もシャブで頭おかしくなってなかったら、オッサンみたいな気持ち悪い男とは話もしたないやろ。ガッハッハッハッハ。」

それを聞いて寒汰はまた勘違いした。

「知恵があの男と仲良くしたのは、男にシャブを飲まされたからだ!男がジュースにシャブを仕込んだ!シャブ飲んだら男に惚れる!メロメロなる!シャブセックス!」

とんでもない勘違いだが、元々勘違いだらけの人間の上に、子供の頃から異常に麻薬に憧れている寒汰である。

これくらいの勘違いは当然と言えた。

 

その日以来、寒汰は誰かが羨ましくなるような女を連れていると「あいつはシャブで女をメロメロにしてるんだ!」と叫ぶのであった。

そして、寒汰に全くどの女もなつかないのは他の男が皆シャブを使って女を意のままに操っているのに、寒汰一人だけシャブを使ってないからなのだと思うようになった。

もとより、寒汰は自分がブラッド・ピット並の美男子で、世界の誰よりもモテるはずなのだと勘違いしていた。

自分の容姿についても麻薬に関しても大きく勘違いしている寒汰であった。

また、寒汰は「薬」と聞けば異常に反応するようになった。

東に風邪薬を飲んでる男がいると聞けば、それがごく普通の薬であっても「麻薬だ!あいつは麻薬を使って女をたらしこんでいる!」と勝手に勘違いし、そして自分がもてない怒りを爆発させた。

そして徹底的に粘着攻撃を行った。

また、西にモテる男がいると聞けば「麻薬だ!あいつは麻薬を使って女をたらしこんでいる!」と勝手に勘違いし、そして自分がもてない怒りを爆発させた。

そして徹底的にキチガイ攻撃を行った。

北に寒汰にそっけなくする女がいれば、「麻薬だ!あの女は麻薬で頭がおかしくなっているから俺の魅力がわからないんだ!」と勝手に勘違いし、そして自分がもてない怒りを爆発させた。

そして徹底的にストーカー盗撮を行った。

「あいつら!麻薬で頭おかしい!俺、麻薬やりたいのに誰も教えてくれない!俺、怒る!」

と寒汰はマニラの路上で怒鳴り散らした。

実際のところ、寒汰はもはや寝ても覚めても麻薬のことしか考えられなくなっていた。

シャブや麻薬をやって頭がおかしくなる人間は多いが、麻薬を想像するだけで頭がおかしくなった人間は人類史上初めてであった。

(寒汰と女と覚せい剤  完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

2 Responses to 寒汰と女と覚せい剤 II

  1. jumpojp says:

    寒汰の場合、麻薬をやると正常に戻ったりしてw
    彼にはすでに人間の常識は通用しないのであり得ますよ〜。
    特に脳の構造が違いそうですし、っていうかウサギのウンコ並のサイズの脳かもしれませんねw
    あっ、言い過ぎました。ウサギさんごめんなさい。

    • あっはっはっは!
      jumpojpさん、そのとおりかもしれません。

      寒汰の場合、麻薬をやると正常に戻ることは十分ありそうですねww

      はい、ウサギ並の脳みそは言い過ぎです!
      ウサギさんに失礼です!
      寒汰の脳みそはゴキブリよりは小さいことは確実ですからね〜w

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