Harbour Square CCP Complex の『Hap Chan』

寒汰はマニラのベイサイドを歩いていた。相変わらず異常に臭くて汚い格好である。

10年間洗ったことないフィッシングジャケットは以前以上に凄まじい悪臭を放っていた。

傍を通り過ぎるフィリピン人は一様に顔をしかめ「バホ!」と吐き捨てるように言っていたが、寒汰は一向に気にしている様子はなかった。

実は寒汰はフィリピンパブでバホとは「臭い」ではなく「よい薫り」という意味だと教えられていて「バホ」と聞くたびに褒められていると思っていたのである。

あたりは暗くなってきていた。

寒汰は相変わらず一人だった。

寒汰が婚約者と信じている自称女子大生の主婦、アドボ子は今回も寒汰には会ってくれなかった。

ついさっきも電話で「おまえなんか、100万ペソもらったって凸凹する気はしねーんだよ!ボケ!」と怒鳴られたところであった。

もちろん寒汰の耳には

「あら、ごめんなさい。寒汰さんには会いたくて仕方ないのだけれど、今日はお母さんが病気で家を出られないの。また明日誘ってくださいまし。」

と、完全に別のストーリーが聞こえていたことは言うまでもない。

相変わらずタガログ語が全く出来ず、妄想と現実の区別がつかない寒汰であった。

ふと見ると、そこに数軒のレストランがあった。

寒汰がよく入る Hap Chan もあった。寒汰は初渡比以来、自分一人で新しい店に入ったことはなかった。

元来語学力もゼロで新店開拓する度胸もない小心者なのである。

友人と頼むTOSHIYAさんか、プロペラキッド氏が教えてくれる店だけが寒汰の知っている店の全てだった。

Hap Chan はTOSHIYAさんが教えてくれた店であった。

「ここなら俺でも入れる」

寒汰はそう思った。

周囲のテーブルではみな、楽しそうにワイワイ食事をしている。

一方、寒汰はテーブルにぽつんと一人で座っていた。

まるで寒汰のテーブルだけ温度が周囲より低いかのようである。

料理がやって来た。

はたして見事なほどに真っ黒焦げであった。寒汰は落ち込んだ。

寒汰は真っ赤な顔をして怒鳴りだした。しかし周囲の誰も、店員さえも寒汰を相手にしなかった。

しゅんとなった寒汰は今度は「ゲヒヒヒヒ」と下品な声で笑いだした。

どうやらいつもの阿Qの「精神勝利法」が始まったようである。

まず、寒汰は考えた。

「この黒焦げの料理、実は滅茶苦茶うまいことにする!絶妙な焼き方!そう思って食べたら味音痴の俺にもうまい!俺、精神的に勝った!俺、偉い!」

料理に文句ひとつ言えない寒汰であったが、ブログでは最強であった。

ブログでならどんな強がりでも嘘でも知ったかぶりでもできるからである。

しかし、最近、寒汰の凄まじい味音痴と食文化へのセンスのなさっぷりがバレかけていた。寒汰はそれを焦っていた。

そこで寒汰は思いついた。

「俺、ブログに書く!俺、火加減が分かるベテラン! ブログなら嘘書いてもバレない!皆、俺をグルメだと思う!味音痴がバレない!俺、偉い!」

そう思うと寒汰はだんだん機嫌がよくなってきた。

精神勝利法は寒汰のような、どうしようもないダメ人間が唯一機嫌がよくなる方法なのである。

今度は、隣のテーブルの女に目をつけた。

先ほどSMショッピングモールで、寒汰がスカートの中を盗撮しようとした女に似ていた。

「ゲヒヒヒヒ」

寒汰の嫌な笑い声が漏れ聞こえた。

「俺、あいつと一緒に食事したことにする。俺、SMでナンパしたらあの女、ついてきたことにする!俺、賢い!俺、偉い!」

「女、俺と一緒にめし食ったことにする!料理食ったかわりに俺のホテル来ることにする!ゲヒヒヒヒ!俺、作り話の天才!俺、偉い!」

寒汰の嘘は今やブログ読者の大半にはばれていたが、寒汰だけはバレていないと思っていた。

幼稚園児並の知恵の寒汰であった。

寒汰は勝ち誇って、妄想の中の女と食事をした。

「俺、ひとり分の食事代で、女と食事した気分なれる!安上がり!俺、賢い!俺、偉い!」

ゲヒヒヒと一人ニヤけながら下品に食い散らかす寒汰はあまりに気持ち悪く、ゴキブリさえ近寄ろうとしなかった。

寒汰は真っ黒焦げの料理を食い終わった。

そこで寒汰は思い出した。

「俺のファンが作ったブログ(※ このブログのこと)で言ってた!フィリピンのレストラン、持ち帰りできる!俺、知らなかった!」

寒汰は以前、嫌がる自称女子大生の主婦アドボ子25歳と食事をした時、

「お前ら豪勢に食え!安いカニで腹をいっぱいにしろ!隣のテーブルは見るな!安いカニだけ食え。食べものは残すな!」と

偉そうに言って恥をかいていた。

そもそもフィリピンでは食事はわざと残して家族などのために持って帰るのが文化である事なぞ、寒汰は知るわけがなかった。

しかし、当ブログを毎日食い入るように見ている寒汰はようやくそれに気づいたのであった。

「俺、持ち帰り試したい!でも、俺、頼み方分からない、俺、困った!」

さらに問題があった。食べ物を持ち帰る癖のない寒汰は既に食事を完全に終えていたのである。

ふとその時、寒汰の目に隣のテーブルが目に入った。

そしてウェイターを呼んだ。

「おい、イカウ!あそこのテーブルのあまりあるだろう?あれ、俺、持って帰る、分かるか?持ち帰り!ええっと、てーくおんだ!てーくおん!

アコ、てーくおん、イカウ、OK?」

take on は持ち帰りの意味にはならないし、そもそもアコとイカウ以外日本語であるこの言葉がウェイターに通じるわけもない。

しかしウェイターは満面の笑顔を浮かべながら「OK ラン」と言った

フィリピン人得意の「分かったふり」であった。

ウェイターはニコニコしながら隣のテーブルに残った食事をゴミ箱に入れ始めた。

結局、失意の寒汰はそのまま店の外に出た。

寒汰は考えた。

「どうせブログは嘘書いてもバレない!俺、食事を持ち帰りしたことにする!」

ただ問題は誰のための持ち帰りにするか、である。寒汰にはもはや魔尼羅で口をきいてくれる人間はいなかった。

「そうだ!ホテルの『ガードマン』にする!ホテルのガードマンだけ俺に口きいてくれる!俺、あいつに食事をやったことにする!完璧なストーリー!今日も俺の架空ストーリー絶好調!俺、偉い!」

ちなみに、フィリピンではホテルの「ガードマン」という呼称は使わないが、英語もタガログ語も全くできない寒汰は7年間毎月フィリピンに通っても未だにそんなことは知るわけもなかった。

「ガードマン、俺に『ありがとう』言う!誰も俺にありがとう言わないけど、今日はガードマンが俺に『ありがとう』言う!俺、偉い!」

日本でもフィリピンでも「ありがとう」など誰にも言われない寒汰であった。

そう思いながら寒汰がゲヒヒヒヒヒと、例の嫌な笑いをしていると、子どもが二人走ってきた。

よくいるストリートチルドレンである。

一人の女の子が寒汰に向かってニコっと笑った。

幼女性愛の傾向のある寒汰は思わず立どまってニタニタしながら少女の全身を舐め回すように眺めた

するとその時、もう一人の子どもが寒汰の手にあった財布を素早く奪った。

それを合図に寒汰の正面に居た女の子も急いで逃げ出した。

寒汰は呆気にとられ立ちすくんだ。そんな寒汰を小馬鹿にするように子供は走りながら叫んだ。「サラマ〜(ありがとう)!」

彼らが走っていく先には仲間らしい子どもが数人立っていた。

どうも寒汰のような色ボケしたマヌケな観光客を集中的に狙う子供集団らしかった。

あるいは、さっきの店で寒汰がじろじろ眺めていた女が怒って寒汰を襲うように指図したのかもしれない。

ともかく、ジプニー代もない寒汰はトボトボと歩いてホテルに帰ることになった。

しかし寒汰は例によって精神勝利法を働かせていた。

「子供たち、俺のおかげで今頃食事してる!俺、悔しい!でも、俺、考える。俺、子供に食事与えただけ!俺、財布盗まれたマヌケと違う!

俺、今日のブログでは持ち帰りの食事を子供にあげたことにする!そうすれば皆、俺をベテランだと思う!」

「俺、持ち帰りのベテラン!俺、慈善事業の偉人!俺、子供にも『ありがとう』言われた!俺、偉い!」

そして、寒汰はブログにこう書き綴った。

これまた久しぶりですね。食べ物を上げて「ありがとう」の言葉。
親に捨てられたという子供だけでなく、躾がされていて突然親や身内を失った子供も居るんだろうな? そんなことを想っていました。

一個師団とはいかないまでも、一個小隊くらいなら、子供たちと一緒に食事をする。これもアリかな。
目のくりっとした、髪を染めても居ない小奇麗な子供たちでありました。

自分を美化することだけは一流の寒汰であった。

なお、相変わらず全く知識が無いくせに知ったかぶりだけは得意な寒汰は一個小隊が30-50人を意味することは全く知るわけがなかった。

30人以上の子どもに100ペソずつ食事をさせたら少なくとも3千ペソになる。

年に一回のクリスマスの食事の席で、女の子が300ペソ(約600円)のラプラプをオーダーしたいと言った時、寒汰は

「ラプラプは贅沢だ!安い不味いカニで腹をいっぱいにしろ!食べ物は残すな!」

(※ フィリピンでは残した食事は持って帰るのが当たり前。寒汰はその文化を先週当ブログで指摘されるまで知らなかった)と怒鳴り散らしている。

そんな異常にドケチな寒汰が3千ペソ分も見知らぬ子供に食事をおごるわけはありえなかった。

せいぜい子供に

「お前ら、生意気!俺、おごるのやめた!俺、一人1ペソならおごる!お前ら、自分で残り99ペソを払え!俺、情け深い!感謝しろ!俺、偉い!」

と、訳の分からないドケチさを発揮するのがオチであろう。

相変わらず現実から完全に遊離した妄想の中で生きている寒汰であった。

「俺、ブログの中では最強のフィリピンベテラン!皆、俺を褒める!俺、偉い!ゲヒヒヒヒヒ。」

今日もあの気持ちの悪い笑い声が、ホテルの部屋から漏れ聞こえてくるのであった。

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

9 Responses to Harbour Square CCP Complex の『Hap Chan』

  1. kohta says:

    可笑しすぎて我慢出来なくなっちゃったので、コメを書き込みます。
    フィクションともノンフィクションとも、どちらで読んでも笑えるネタです。

    でもネモトレストランやマビニ通り、アンへでフィッシングベストを着たオイラと寒太を間違えないで下さい、
    これだけは言っておかなきゃいけないな(笑)
    狭いマニラじゃ徘徊するエリアが近いからねぇ。

    • kohtaさん、

      ごぶさたですね。お元気ですか。
      これは事実を元に脚色してますが、おおかたの人が思うよりも事実の割合が多いですよ。
      「これは脚色だろう」と思われるようなありえない部分ほど事実です。

      kohta さんもフィッシングジャケット着てるんですか?
      でも、kohta さんは寒汰みたいに汚らしくないですからね。
      全然違いますよ。

      実はLAカフェでフィッシングジャケットを着た日本人、でも寒汰のような臭くはなかった人の目撃情報が私のところに届いたのですが、もしかしたらkohtaさんだったかなw

      ともあれ、この寒汰物語を今後ともよろしくお願いします。

      また、魔尼羅で寒汰に関する情報を入手したらぜひお知らせください。
      寒汰の顔をご存知でなければお知らせください。
      写真を送ります。

  2. AC says:

    > 自称女子大生の主婦

    自称某私立大卒、自称高校卒もわんさかいますね。「西部劇に出てくるインディアンの片言英語」程度しかできなくても。それでも寒汰には違いなんかわかるはずもなし? w

    > 「ガードマン」という呼称は使わない

    ガードマンは日本語ですしね。

    > 一個師団とはいかないまでも、一個小隊くらいなら

    ほう。てことは「4,50人のガキならメシぐらいおごってやる」ですか? 一人あたりP10程度の食い物をやるとしてもP400~500。寒汰氏はそんな金をただのガキどもに使うんでしょうか。それとも分隊と小隊を勘違いしてる? w

    • ACさん、

      そもそも寒汰にはタガログ語と英語の区別もつきませんw
      西部劇のインディアンの英語とはまたうまいことをいいますねw
      寒汰は英語は本当に全くできません。
      「OK」が入っていれば英語と思い込むレベルですよ。
      LAカフェで援助交際している自称女子大生のセールストークを丸っ切り信じこむのは痛いオサーンの典型ですねw

      一個小隊のご指摘、ごもっともです!
      P400なんて金を異常にドケチの寒汰がおごるわけないです!
      「お前ら、P9にまけろ!」
      と、一ペソ単位で値切り始めそうですwww

      小隊の件、エントリ本文に反映させていただきます。

  3. てっちゃん says:

    自称女子大生の主婦アドボ子25歳との出会いから一連のストーリーを拝見しました。
    かなり笑えますね。。。

    • てっちゃん、

      これ、私が作った話ではなくて(多少の脚色してますが)、現実の寒汰そのままですからね〜ww

      Hooters に行ってもないのに「青山の Hooters に行った!」には大笑いしましたが、寒汰の人生一から百までそんな感じですw

      笑われるために生まれてきたような人間ですねww

  4. ぐーす says:

    ふと思い出したのは昔からフィリピンにはフィッシングベストを着た日本人が多かったような気がします。確かフィリピンで約1年間ベジタブル、その後 往生された知り合いの日本人の人も・・・。その時は大変でしたよ。その方の親戚の日本人(どうやらフィリピン通だったらしい人)とその一味のフィリピン人がやってきて銀行口座やら航空券やら換金できそうなものをハイエナのように物色してました。当の日本人の彼女(フィリピン人)と日本から飛んできた娘さんと私とは、私の知り合いの弁護士さんと一緒にあっけにとられて見てましたっけwwww

    • ぐーすさん、

      そうなんですか?元々フィリピンにはフィッシングジャケットの日本人が多いんですね。
      フィリピンベテランにはそういうファッションが流行りなんでしょうか?

      ところでベジタブルってなんでしょうか?

      ハイエナはなんとなく想像がつきます..w
      フィリピン化した日本人にはそういう人が少なくなさそうww

  5. goggle says:

    あれ、タイの売春婦をトシヤのおっさんに恵んでもらい結婚してしまったタカタくんではないか。魔韮(まにら)でサル売春婦をサルのように買いあさって妊娠させたタカタくんではないか。そのサルから移された性病でくよくよ悩んでいたがもう治ったのかい?あ、不治の病だったよな。

    あれ、寒汰(さむた)と変わらないなお前も。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。