カガヤン・デ・オロ旅行記 I

寒汰が一人では、タクシーにすら乗れなかった話は何度か書いたとおりである。

(今はさすがに乗れるようになったようだが)

フィリピンに7年間毎月通っているが、いまだにフィリピン国内線の飛行機にも乗れない。

だからマニラ以外ほとんど、どこにも行ったことがない。

数回だけ友人に付き添われて地方都市に行ったことがあるだけである。

2006年9月、寒汰は数少ない友人Tさんから声をかけられた。

「あのな、寒汰のおっさん、カガヤンデオロには美人が多いで〜。儂が連れて行ったるから心配するこたあない。一緒に行こうや、な。どうせあんたは友達一人もおらへんし、暇やろ?な?」

友人からの誘いなど滅多にない寒汰である。一にも二もなく返事をした。

一人では怖くて乗れないフィリピン国内線(※ 海外旅行初めての人間でも普通は乗れます)も、友人と一緒なら怖いものは何も無い。

興奮した寒汰はいつも以上に機内でも盗撮写真をバシャバシャ撮りまくっていた。

隣の席で授乳する女性の姿をみかけると、狂ったように喜び勇んで、遠慮無くバシャバシャ盗撮していた。

あからさまな盗撮に困惑した女性はそっと胸を隠し、寒汰の方に背を向けた。

隣で見ていた友人Tさんも、さすがに見かねて寒汰に注意した。

「おい寒汰、写真好きなんもええけど、機内で女の胸の写真とかとるんはルール違反やで」

すると、寒汰はまた逆切れして言った。

「俺、盗撮してない!俺、目のカメラで撮ってるだけ!俺、偉い!」

これにはTさんも呆れて以後何も言う気がおきなかった。

一方、寒汰は母乳をあげてた女性がしくしくと泣き出しても一向に盗撮をやめず、着陸してもまだバシャバシャと写真を撮り続けていた。

カガヤンデオロについた寒汰とTさんは、路上のカフェでのんびり座っていた。

「どや?寒汰のおっさん。マニラとはまた違うやろ?フィリピンの田舎も町もまたええもんやろ?」

寒汰はとても興奮していた。なんせ海外はフィリピンしか来たことがなく、そのフィリピンには何十回となく来て居ながら田舎に来たことはなかったからだ。

「田舎、いい!フィリピンは田舎素晴らしい!俺、フィリピンの田舎味わう!俺、偉い!」

どこの国でも田舎は首都とはまた違ってよいものだし、フィリピン以上に田舎が素晴らしい国はいくらでもあるのだが、外国といえばフィリピンだけしか行ったことがない寒汰にはそんなことは当然分かるわけがなかった。

呆れたTさんは話題を変えようとした。

「ほれ!寒汰のおっさん、向こうからべっぴんさんが来たで。よく見てみいや。顔のつくりとか心なしかマニラとはまた違うやろ。鼻がすっとしとるあの女はスペイン系の血が濃いな。其の次の丸顔の女はインドネシアに近いで。こういうの研究しとったら骨格の専門家にでもなれる気がするな。がははは。」

それを聞いて寒汰はまた興奮した。

「俺、フィリピンの田舎来た!骨格違うの見た!俺、骨格人類学者になった!俺、学者になった!俺、歴史に名を残す!俺、偉いぃぃぃぃ!」

異常に短絡的な寒汰であった。数人の骨格、それも顔の表面を見るだけで骨格人類学者になれるなら誰も苦労はしない。

しかし、寒汰に限らず、フィリピンに嵌る日本人はなぜか恐ろしく短絡的で自分がスーパーマンになったように勘違いする人間が多いのだ。

  • 英単語を数単語知っている -> 英語のエキスパート
  • お札を数えたことがある -> 経営のエキスパート
  • 海外旅行したことある -> 超国際人
  • 買春したことがある -> 恋愛のエキスパート
  • フィリピンパブに行ったことがある -> フィリピンのあらゆることを知っている
  • 売春婦に大目に金を渡したことがある -> 国際援助のエキスパート。超正義漢

もちろん寒汰もその例に漏れなかった。それどころか、寒汰はそういう短絡的な勘違いが誰よりも激しかったのである。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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