フィリピン製ジンロ – カラオケ(KTV)編 XIII

ロラ子は28歳。15歳の時に大恋愛したフィリピン人の彼氏との間に子どもができた。

その後は高校にも行かず、働いてきた。

20歳の時から割の合よい水商売の世界に飛び込んだのは、フィリピーナにしてはかなり遅い方である。

しばらくフィリピン人向けのカラオケで売春婦をしていたが、やがて上客が多いという日本人カラオケに移籍してきた。

このマラテのバホレディーが初めての日本人向けカラオケなので日本語はまだ分からない。

ただ、水商売らしくない元来のおっとりした性格で、下心の薄い上客をつかみはじていた。

子供のアレックスももう13歳。物入りな年である。スクウォッター(不法占拠者)街の狭い家にももう飽き飽きしていたが、このまま上客をつかんでいれば、1,2年でコンクリート製の小さな家くらいは建てられそうである。

「私もなんとか運が向いてきたわね。」

そう、思っていた時であった。

寒汰と名乗る異常に臭くてケチで、そして恐ろしく勘違いした客が現れたのは。

この寒汰との出会いが、ロラ子がほのかに抱き始めていた淡い未来への希望を完全にぶち壊すことになった。

寒汰はマラテのカラオケ店バホレディーに現れ、ヤクザのいやらがらせかと思える程のゴリ押しをしようとした。

  1. 料理と酒の持ち込みを認めろ
  2. 持ち込み料の支払いは拒否する。むしろ値段を下げろ
  3. フルーツを持ってこい。量は1/4でいい。その代わり値段を1/3にしろ
  4. 店内を自由に盗撮させろ

店長のふくちゃんがなんとか断ったものの、寒汰は恐ろしく不機嫌になった。

そして、持ち込んできた腐ったバナナを無理やりロラ子に食べさせようとした。

「アヤウ!」

ロラ子が悲鳴にも近い声をあげた。

寒汰は機嫌悪そうに言った。「フィリピン人は滅多にバナナなんか食べられないだろう。それを俺が食べさせてやるって言ってんだ。ありがたく食え!」

(※ 酔うと饒舌になる寒汰であった)

ロラ子は泣きそうになりながら、店長のふくちゃんの言葉を思い出した。

『お客さんに嫌なことされそうになったら、お店のシステムだからダメって言っておきなさい』

そこで、ロラ子は半泣きになりそうながら言った。

「このお店、お客さんの食べ物食べるダメ」

それを聞いて寒汰は怒鳴りだした。

「この店は何でも『ダメ』と言うんだな!持ち込みもダメ、盗撮もダメ、フルーツの割引もダメ!」

「俺、客! 客のためにルール変える、当たり前!できない店ダメ!俺、怒る!」

周囲にいる誰もが「そもそも無理ばかり言うお前がダメな客だろう」と思ったが、逆切れを恐れて誰も言い出せなかった。

寒汰は持ち込んだジンロをグビグビ下品に飲みながらさらに続けた。

「ふー、ジンロはうまい。俺、ジンロ好きなんだ。だから持ち込みして節約する。どうだ? 問題あるか?」

ロラ子が完全に固まっていると寒汰は満足そうに頷いた。

「そうだ、問題ないだろう。俺、節約家。お前、俺に惚れたな。ゲヒヒヒヒヒ」

野太い気持ち悪い声が店内に鳴り響いた。

寒汰は女がケチに惚れると思い込んでいた。

そもそも、お大尽遊びの文化の上に成り立つカラオケ(KTV)は、ケチが最も嫌われる人種だということに未だ気づいてなかった。

酔っ払い寒汰節はさらに続いた。

「いいか!俺は、アイヌの王子!しかも中国皇帝の末裔なんだ!」

「いつかなあ、中国が日本を占領して、王子の俺を助けだすんだ!いいか!」

「その時にはなあ、俺をいじめた奴ら、みんな泣き叫ぶんだ。ゲヒヒヒヒ!俺、王子!」

日本語がほとんど分からないロラ子であったが、寒汰がとんでもないホラ話をしているのだけは分かった。

『ニッポンジンでもチャイナでもなんでもいいから、もう早く帰って!アコ、コワイヨ!』

またジンロをグビグビ飲みながら寒汰が店内に響き渡るような大声で怒鳴った。

「おい!酒のつまみを持ってこい!無料で持ってこい!」

店長のふくちゃんが駆けつけてきて、有料であることを伝えると、寒汰はカンカンに怒りだした!

「カラオケ店はなあ!安い居酒屋なんだよ!俺が決めた!食料は原価のまま出せ!俺、食料の原価知ってる!俺だけには原価のままで出せ!でなきゃ無料にしろ!」

ふくちゃんはじっとりと汗をかきながらこう思った。

『何様のつもりだ。原価で食べ物食いたいなら自分で市場に行って買い食いしてこい!カラオケは女と遊ぶところ!食事は二の次なんだよ!このキチガイ!』

しかし寒汰の傍若無人はまだ止まらなかった。ジンロをグビグビ飲みながら横でガタガタ震えているロラ子にこう言った。

「俺はなあ、韓国人が嫌いなんだよ。あいつら少数民族のくせに俺らアイヌよりいい目してやがる。

俺が子供の時からいじめられたのは、あいつら韓国人のせいなんだよ。

だからなあ、俺は大和民族として、あいつら韓国人に嫌がらせするんだ。ゲヒヒヒヒヒ!」

滑稽な話だが、寒汰には大和民族とアイヌ人の区別もついていなかった。

頭が弱すぎて正しく歴史が理解出来ないのか、子供の頃、あまりにいじめられた自分が加害者の側の大和民族だと思い込む妄想を持つようになったのかは定かではない。

「いいか?俺、愛国者なんだ。だからなあ俺は、サムスン製品を買う奴、許せない!」

寒汰はここで、ダンとテーブルを思いっきり叩いた。

「サムスン製品を買う奴はみな朝鮮人だ!俺、許さない!」

そしてまたジンロをグビグビと下品に飲んだ。

『ひーー! ジンロも韓国製だよー!』

と、ロラ子は心の中で叫んだ。

寒汰は在日朝鮮人や韓国のことを激しく憎悪していたが、実際のところ韓国・朝鮮のことは何一つ知らなかったし知り合いも一人もいなかった。

ジンロを初めて飲んだのがフィリピンパブだったので、寒汰はジンロはフィリピンの酒だと思っていたのである。

寒汰は飲食店「臭皇(くさおう)」の経営者であったが、実際のところ食に関する知識や感性は素人以下であった。

根菜と黄色野菜の区別もつかなかったし、シニガンの酸味は酢酸が入っているからだと思っていた。

フィリピンと日本で魚や牡蠣が、全く種類も形も大きさも違うのに気がついてなかった。

旬でない秋刀魚を食べて「この秋刀魚はまずい!産地偽装だ!」と大騒ぎを起こして笑いものになったことがあった。

そんな寒汰であるから、ジンロが韓国の酒ではなく、フィリピンの地酒だと思い込んでいるのも驚くべきことではなかった。

ともあれ、ロラ子の受難はまだ続くのであった。

(続く)

 

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

6 Responses to フィリピン製ジンロ – カラオケ(KTV)編 XIII

  1. AC says:

    > シニガンの酸味は酢酸が入っているからだと思っていた

    なんかブログでもえらそうに書いてましたねwww
    きっとタマリンドなんて知らないんでしょう。

    彼のラーメン屋で客が店内で注文せず、外で買ってきたビールを飲み、同じく外で買って持ち込んだ餃子を食ったらなんと言うんでしょうかwww

    商売人とはとても思えないですねー、はは。

    • ACさん、

      寒汰の食材の知識ははっきり言って素人以下ですよw タマリンドは彼には未知でしょうね〜w
      しかしスープに酢酸いれてどうするんでしょうね? 寒汰に酢酸飲ませてやりたいですw

      自分の店にビール、餃子を持ち込んだ客が来たら、寒汰は怒り狂うでしょうね〜ww
      これまた二重基準なんですよ。

      自分が客の時は例外ばかり認めろ、自分が店主の時は、例外は一切認めない。
      この恐ろしいまでの身勝手さが寒汰の寒汰たる所以ですねww

  2. キーニャオ says:

    >>「フィリピン人は滅多にバナナなんか食べられないだろう。それを俺が食べさせてやるって言ってんだ。ありがたく食え!」

    フィリピン人を心の底からバカにしてる奴がいます!フィリピンの救世主を呼んでこないと!
    ——————————————————-
    酒を持ち込んで「おい!酒のつまみを持ってこい!無料で持ってこい!」だと、もうお客ですら無いのでは・・・・・

    • キーニャオさん、

      はい、フィリピンを心底バカにしている奴にはフィリピンの救世主に粘着攻撃してもらわないといけないですねw

      酒のつまみを無料で出せ、というのは寒汰は自分で10/30のブログに本当に書いてますね。
      酒のつまみに別途料金を払うのは嫌なのだそうです。

      はい、もう客ですらないですwww

  3. jumpojp says:

    まぁ酒や食べ物の持ち込みはあり得ないですね。私は台湾では日本人クラブの周辺にある食堂などから料理を大量に持ってこさせて食事をウイスキーで流し込みながら大騒ぎしてました。日本人駐在者はそうやってその国のおねーちゃんだけでなく、周囲の食堂などにもお金を落としていくものだと信じバンバンお金を使ってました。おかげで帰国するときはほとんど貯まってませんでしたねw

    • jumpojp さん、ローカルカラオケでは一応持ち込みありなんですが、それもやはり条件をわきまえないと。
      カラオケはお客さんが気前よく金を使うことをみんなでちやほやする文化ですからね。
      ましてや、バホレディはマニラのカラオケの中でも高級な方ですからね。

      そう、どうせ食事を頼むなら周囲の人を楽しく幸せにしてあげないといけないですよね。
      まあ、帰国の時にお金がないのは…世界経済に発展したと思いましょう!w

      しかし寒汰には周囲を楽しませるという感覚がゼロなんですよね〜ww

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