盗撮ブロガー – カラオケ(KTV)編 XII

寒汰はマラテで最近評判のカラオケ店、バホレディーを追い出された。

当然である。

寒汰は店内で盗撮しまくり、女の子のみならず、他の客の顔写真や踊っているダンサーのスカートの中、使用中のトイレのまで撮影したのである。

それ自体も問題であったが、寒汰は盗撮した写真をブログに掲載して、店や女の子、はては他の客の悪口まで書きまくるのでマニラの多くのカラオケ(KTV)店では困り果てていた。

店長のふくちゃんは柔らかめに「店内は撮影禁止。盗撮した写真をブログに掲載してひどいことを書くのは困りますし」と言った。

しかし寒汰はそれが自分のことだとは全く気づきもせず、

「俺は安心。俺は正義の味方だからブログに自由に盗撮写真を掲載する権利がある」

などと、わけのわからないことを言い始めたのである。

店を追い出された寒汰は怒った。自分のために規則が曲げてもらえなかったのが不満なのである。

フィリピンに関わる日本人の少なからぬ人間は、妙な二重基準(ダブルスタンダード)をもちあわせている。

自分以外の人間がルールに従わないのは許せない。ただし、自分だけは(あるいは自分の仲間だけ)はルールをいくらでも破って良いのだ。恐ろしく自分勝手である。

さらにそれが認められないと逆切れして暴れだすのだ。

 

寒汰はそういうフィリピン嵌りの人間に多い二重基準思考を極端にしたような思考の持ち主だった。

初めて来たカラオケ(KTV)、それも指名料すら値引きしようとしたとんでもなく迷惑な客のくせに、10年来の超上得意のように扱われないと怒り出すのである。

逆切れした寒汰は、10月21日の自分のブログ「魔尼羅・盗撮バージン」で

「バホレディーでは客を狙ったセットアップを行っている!」と書きたてた。

とんでもない言いがかりである。

もはや営業妨害で訴えられてもおかしくない犯罪行為であるが、寒汰は「俺、正義の味方!俺、悪いヤツやっつけた!俺、偉い!!」と、勘違いして悦に浸っていた。

凶悪犯罪を起こす人間は自分が正義漢だと思い込んでいる例が多いらしい。

寒汰はまさにその典型なのだろう。

 

さて、2日後の10月23日、寒汰は再びマラテのカラオケ(KTV)、バホレディーに現れた。

今度は一人である。数少ない友人であるプロペラキッド氏も、さすがにまずいと思ったのか寒汰の誘いを断っていた。

寒汰は何やら重たげな汚らしいビニール袋を手にしていた。

途方もなく嫌な予感がしながら、ふくちゃん店長や店の女の子は「いらっしゃいませ」といつもよりかなり小さめの声で迎えた。実際、全くいらして欲しくない客だった。

果たして、汚らしいビニール袋の中に入っているのは安物のジンロと、半分腐ったバナナであった。

そして、あっけにとられて店員、スタッフが立ち尽くしていると、寒汰が偉そうに言った。

「おい、イカウ!水と氷だ!早く持ってこい!」

今から出来事の予感に恐れおののきながらスタッフが寒汰に水と氷を渡すと、

寒汰はスタッフのポケットに恐ろしく汚い1ペソをねじ込みながら下品に笑った。

「俺、チップ渡す!俺、気前いい!俺、かっこいい!俺、偉い!!」

フィリピンでは1ペソでは、ホームレスすら喜ばない。ホームレスに1ペソを渡してみると投げ返させることさえある。

そんなフィリピンで、仮にもお大尽遊びの流れを組むカラオケ(KTV)で、1ペソでスタッフが喜ぶわけがない。

しかしスタッフは問題に巻き込まれるのを恐れて、極度に顔を怖がらせながらなんとか作り笑いを浮かべて言った。

「さ、さ、サラマポ」

それを見て寒汰は満面の笑みを浮かべながら「俺、気前いい!お前、俺、尊敬する!俺、偉い!!」と叫んだ。

 

さて、寒汰は持ち込んだジンロをグビグビと下品に飲みながら、腐ったバナナをお気に入りのロラ子に無理やり食べさせようとした。

「おい、フィリピン人、バナナ滅多に食べられない!俺、お前にバナナ食べさせる!お前、俺に感謝する!お前、俺にもっと惚れる!お前、俺とSEXしたくなる!俺、賢い!俺、偉い!」

「このバナナ、道で拾った!バナナ、店でオーダーしたら高い!でも、おれ、ただで手に入れた!俺、賢い!俺、偉い!」

寒汰の話す日本語はよく分からないロラ子であったが、腐ったバナナなど食べたくもない。

だいたい、バナナはフィリピンの最重要特産物であり珍しくともなんともないのだが、寒汰はそんな基本的なことも知らなかった。

寒汰は仮にも食品関係者であり、本人の意識の中では自分ほど食べ物に詳しい人間はいないと思っていたが、実は魚の種類も野菜の種類も見分けがつかず、しかも根本的に恐ろしいほどの味音痴であった。

 

さて、腐ったバナナを無理やり食べさされかけたロラ子はトイレに行くふりして逃げ出し、店長のふくちゃんに泣きついた。

「テンチョー、あのオカクサン、頭オカシイヨ!アコ、コワイヨ!」

ふくちゃん店長もほとほと困りながらこう言った。

「とにかく、持ち込みは駄目だといいなさい。店のシステムだと説明すればいいから。怒られたら店長が怖いから、って言っておけばロラちゃんが殴られることはないから大丈夫。」

「テンチョー、アコ、あのオカクサン、もう嫌だよ〜!」

泣く泣くロラ子は寒汰のテーブルに戻っていった。

さて、持ち込み禁止だと聞いた寒汰は激怒した。

「お前、店長の言うなり、ダメ!俺の言う事聞く、当たり前!俺、偉い!」

大声で怒鳴りだした寒汰を見て、店長のふくちゃんがすっ飛んでいき、持ち込みは固くお断りしていることを説明した。

しかし寒汰は収まる様子もなくなおも大声で怒鳴り散らした。

「俺、店のルール嫌い!店のルール、変えろ!俺のため、ルール変える、当たり前!俺、偉い!後でブログに書いてやる!」

このあたりの騒動は寒汰が自分で10/23、10/30のブログに書いている。

自分のためにルールを変えてもらえないことがよほど悔しかったようだ。

 

ともかく持ち込みを断られた寒汰は今度は、フルーツをオーダーすることにした。

「俺、バナナだけ欲しい。」

ふくちゃんはほっとしながら、答えた。

「はい、バナナだけですね。かしこまりました。」

しかし、次の瞬間、耳を疑うような言葉を寒汰は発した。

「バナナだけならフルーツの量は1/4。だから値段は1/3にしろ!」

この言葉に店全体が凍りついた。

さらに寒汰は続けた。

「俺、バナナの原価知ってる!市場で買ったら安い!この店、原価よりフルーツ代高い!お前、ボッタクリ!」

ふくちゃんもほとほとあきれ果てた。

そもそも、カラオケ(KTV)店は女の子とお酒を飲みスキンシップを楽しむ場である。

別に食べ物が食べたくて来るところではない。

食べ物が食べたければレストランに行けばいいし、原価で食べたければ自分で市場に行って買い食いしてくればいいのである。

そもそもこういう店のフルーツは食べるためにあるものではない。

お大尽ぶりを示すための道具の一つに過ぎないのだ。

カラオケ(KTV)店で、フルーツの原価を言い出すのは、パチンコ店で銀玉が原価より高いと、因縁をつけるようなもの、どんな無茶苦茶な理屈だよ、とふくちゃんは思った。

「それは致しかねます」

さすがに堪忍袋の緒がきれたのか、ふくちゃんが凄みながら言った。

それを見て寒汰はしゅんとなり諦めたようである。

素より喧嘩はからっきし弱い寒汰であった。

弱いものには徹底して強いが強いものには徹底して弱い男なのである。

一方、ふくちゃんは思った。こんな狂った客の相手もしないといけないから店長はつらいよ。

さて、フルーツはなんとか諦めた寒汰であったが、今度はまた盗撮写真をバシャバシャと撮り始めた。

店にいる全員がにらめつけてもやめようとしない。

「皆、俺のカメラ、見てる!俺、かっこいい!俺、偉い!」

しかし、写真を見れば、店の女の子たち全員がカメラを睨みつけているのは明らかであった。

そして、店長のふくちゃん、寒汰の指名子であるロラ子の苦悩をよそに、寒汰の非常識な暴れっぷりはまだまだ続くのである。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

2 Responses to 盗撮ブロガー – カラオケ(KTV)編 XII

  1. AC says:

    小説なのか事実なのか頭が混乱してきましたwww

    しかし勘違いが服を着て歩いているよーな人なんですねえ。
    そういえば寒汰氏はブログでフィリピン人は野菜が嫌いで食べないとか何度か書いていたような記憶がありますが、他人の財布=金だと思って普段クチにできない(高価な)肉を食いたいと言う女たちが「アコたちフィリピンジン、野菜タベナイ、嫌いダカラ」と言ってるように勝手に解釈してるんですね、きっと。

    でも、これは同じ勘違いしてる人が他にもたくさんいるのかも w

    • ACさん、

      これは事実を元にしたフィクションですw
      まあ、事実と一致する点が多いかもしれませんがww

      フィリピン人の肉と野菜に関してはどうも単純ではないようです。

      フィリピン人が野菜を相対的に好きではないのは確かなようです。
      実際、フィリピン料理では野菜が主役の皿ってかなり数が少ないですよね。
      また、私の知り合いの金持ちフィリピン人でも野菜はほとんど食べず肉ばかり好んで食べる人が多いです。

      一方で、ACさんがご指摘のように、彼女らが客と食事をする時は財布をあてにしてとりわけ高価な肉を食べるのも確かです。
      おかげでオサーンたちはそれがフィリピン人全ての傾向だと思って勘違いしてますね。

      またさらに、最近はフィリピン人の食生活も健康問題も変わってきていて
      (一般に後進途上国から中進国にすすむと成人病が社会問題になってきます)
      以前より野菜を食べるようになってきているようです。

      つまり、時代、また所得レベルによって事情が変わるので、簡単には言えないということですね。

      で、寒汰はそんな複雑な背景を全く知らずに
      「マハルコが野菜嫌いと言った!フィリピン人は野菜が嫌いだ!」
      「スーパーに野菜が売ってあった!フィリピン人は野菜が大好きだ!」
      と、短絡的に考えていることだけは確かでしょうねww

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。