魔尼羅の坊ちゃんルーピー – カラオケ(KTV)編 IX

ちょうどその頃、寒汰はルーピーと呼ばれる男と知り合った。

ルーピーは40代半ばの日本人。素っ頓狂な声が特徴で性格も変わり者だが、見るからに良い家の育ちの風貌は魔尼羅に買春に来る男達の中では目立っていた。

よく知られていることであるが、魔尼羅に来るオヤヂはブルーカラーや自営業者が多く、これは同じ風俗天国タイが比較的ホワイトカラー、勤め人が多いのとは好対照である。

そんな癖が強い魔尼羅の買春オヤヂグループの中で、見るからに育ちがよく(ルーピーの祖父は全国的にも知られた著名人であったそうだ)、口癖が「友愛」という拍子の抜けたキャラクターのルーピーはかなり例外的存在であった。

そんなに育ちがよいルーピー氏がフィリピンに通うようになったのもやはりきっかけはフィリピンパブ。

日本でも有数のぼっちゃんであるルーピーすらはめてしまうのであるからフィリピンパブの魔力はやはり凄まじいというべきなのか。

 

さて、寒汰は在日朝鮮人・韓国人に対して並々ならぬ憎悪を抱いていることは以前に説明した。

その寒汰は在日朝鮮人・韓国人に匹敵するくらい憎しみをいだいているのが実はエリートなのであった。

寒汰は高校卒業後、東◯デパートに勤めたが、すぐに追放になり、グループ企業である◯急建設で働いた。

やがてその東◯建設も首になってしまうのだが、その理由は寒汰が全く仕事ができなかったことに加え、あの根本的なコミュニケーション能力の欠如によるものが大きかった。

しかし、寒汰は勘違いしていた。

自分がすぐに職を追われ、立て続けに二社を首になったのは、自分の素晴らしすぎる才能を周囲が妬んだせいだと曲解していた。あの阿Qの精神勝利法である。

そして自分の素晴らしすぎる才能を妬むのは才能がないくせに偉そうにしている高学歴エリートなのだと考えていた。

実際には寒汰の仕事っぷりは学歴に関係なく、情けないくらいダメだったと当時の同僚は語るのだが、異常に自尊心の強い寒汰にはそんな客観的事実は全く理解できなかった。

そもそも中国皇帝の末裔でアイヌの王子だと自分で信じこんでいる寒汰がこの世で不遇を囲っているのは、高学歴エリートが力もないくせに威張っているからだと寒汰は固く信じ込んでいた。

寒汰は子供の頃からの激しいコンプレックスを在日朝鮮人・韓国人や高学歴の人間を憎悪することで癒してきたのである。

もちろん、寒汰が高学歴と言われる人間と親しくしてもらったことは一度としてない

だから寒汰は彼らが本当にどの程度すごく、どの程度力がないのか自分自身では全く知るわけがなかった。

それなのに、寒汰が高学歴エリートへの異常な憎悪を持ったのは、寒汰がゴミ箱で拾って愛読していた週刊誌の適当な記事の凝縮にすぎなかった。

自分で直に知りもしないことをさも知ったかのような気になって勝手に怒るのは寒汰の大得意のパターンであった。

 

さて、寒汰は当初からルーピーの見るからに育ちが良さそうな格好が気に食わなかった。

また、ルーピーの言葉の端々に現れる教養も寒汰の神経を逆撫でした。

寒汰はのようにコンプレックスの固まり人間にとって、ルーピーの言葉はすべからく自慢に聞こえた。

純粋培養育ちのルーピーにはそんなつもりは全く無く、ごく普通に話している言葉にも寒汰はいちいち反応し、一人勝手に憤慨していた。

また、ルーピーは金持ちの匂いがし、また実際カラオケで金を惜しまないことから女の子にも人気があった。

さらに調子のいいことを言う癖もフィリピン人には好相性だったようだ。

「僕の家から出るお金を2025年前に25%減らして、その分、君たちに寄付しようと思うんだ」

こんな演説をした直後にはカラオケの女の子の97%がルーピーを支持の席に集まってきたという。

これは、歴代最高の記録であった。

 

ルーピーの金を惜しまないスタイルは、ケチこそ人生と考える寒汰には全くあわないものであったし

それより何よりルーピーが女の子に人気があることが寒汰には許せなかった。

寒汰は釧路でのフィリピンパブ時代と同じく、カラオケの女の子には一度も凸凹どころか店外デートすらさせてもらえたことがなかったのである。

さらに、ルーピーは、寒汰が名前も知るわけがない高級ブランドのポロシャツにスラックス、革靴をはくのが常であったが、それがまた気に入らなかった。

渡比3回目にして、既に自分がフィリピン大ベテランだと盲信している寒汰は、偉そうに言った。

「お前!間違ってる!海外着たらTシャツ、短パン当たり前!これ、国際人の常識!俺、いつも安い汚い格好! なぜなら、俺、国際人!俺、偉いっぃいぃぃいぃぃ!」

ルーピーは驚いた。母親が外交官で米国で生まれ、海外居住歴10年のルーピーに国際人を語る人間は、彼の家族以外にはこれまでいなかったからだ。

通常の人間であればこの寒汰の失礼な態度に嫌気がさし、自ら遠ざかるものであるが、純粋培養育ちのルーピーはむしろ寒汰に興味を覚えたようであった。そのあたりがルーピーが変人と言われる所以であろうか。

それともルーピーの口癖である「友愛」の実践であったのだろうか。

しかし、それにしても日本有数の名家の人間に「Tシャツ・短パン姿のほうが偉い」というのもおかしいが、寒汰は魔尼羅に来る人間は全て買春だけが目的で、さらに寒汰と同じうように交通費をケチって日中も外に出歩くのが当たり前だと思っていた。

 

次に寒汰が人づてで聞いたことは、ルーピーが東大出身であるということであった。

それを聞いて寒汰は憤った。

「ルーピーは自分が東大出身だと自慢して回っている!けしからん!俺、ルーピーを懲らしめる!」

実は東大出身の人間は周囲の嫌がらせを受けないために自分から積極的に東大出身だということはまずない。あえて聞かれれば答える程度である。

しかし、極度の学歴コンプレックスの寒汰はそんなことが分かるわけもなかった。

寒汰の脳内では、高学歴の人間は、能力がないくせに自慢だけする、そんな人間でなければならなかったのだ。

ルーピーを自慢オヤヂと思い込んだ寒汰は彼を父祖伝来の仇と同様に認識し始めた。

 

ある時、買春ネット仲間で寒汰が事件を起こした。

「俺、コンピュータ詳しい!だから新しいMac買った!メモリが120GBある!俺、すごい!俺、偉い!!」

「俺、もっとメモリ買おうとした!300GBのメモリ!でも、店員理解しない!俺、困った!」

寒汰の知ったかぶりは買春仲間ではすでに有名であったので、あえて誰もツッコミはしなかったが

寒汰はコンピュータには全く詳しくなく、メモリとハードディスクの区別すらついていなかった。

誰もあえて何も言わない中、ルーピーは書いた。

「寒汰さん、勘違いしてますよ。120GBはハードディスクですよ。店ではメモリじゃなくて外付けハードディスクが欲しいって言えば通じますよ。」

KYなルーピーならではのアドバイスであったが、寒汰は感謝するどころか末代までの恥をかかされたと激怒した。

 

ある時、ホテルで寒汰が往生していた。

ホテルの水道が止まっているので、何とかして欲しいとフロントでスタッフに伝えようとしているのだが、

例の寒汰の凄まじい語学力では全く伝わるわけがなかった。

「アコ… イカウ、えええい!俺、困ってる!水だよ、水!なんとかしろ!ディバ!」

そこにルーピーが現れ、事情を聞き、寒汰のために流暢な英語で通訳した。

問題はすぐに解決した。

しかし、寒汰はルーピーに感謝するどころか、逆に恨んだ。

自分より遥かにうまい英語を(寒汰は実は一単語すらまともな英語を話していなかったが)見せつけられた。

高学歴エリートの見せびらかしを受けた、と勘違いした。

また、寒汰はルーピーが英語ができることをどうしても素直には受け入れられなかった。

高学歴エリートは必ずバカなはずだ。そんなバカが英語ができるなどとはおかしい。

そこで、寒汰が至った結論はこうだった。

「ルーピーは英文科卒だ!だから英語が少しできる!それだけ!英語以外は何もできない!高学歴人間、バカ!でも俺、賢い!俺、偉いぃぃぃいい!」

 

しかし、寒汰を地団駄踏んで悔しがらせる事件がまた起こったのである。

寒汰は自分のブログ「魔尼羅・盗撮バージン」でいつものように得意にのって書いていた。

「俺、歴史詳しい! イスラム教昔からあった!キリスト教、できた!ローマ帝国が生まれた!ローマ帝国がスペインからイスラム教、追い出した!これ、レコンキスタ言う!俺、博識!俺、賢い!!!」

この凄まじく歴史の順番を勘違いした寒汰のキチガイ論には誰も突っ込めなかったが匿名の誰かから突っ込みが入った。

「ローマ帝国の誕生を千年以上勘違いしていますよ。ローマ帝国はイスラム教が誕生する前のキリスト教すら誕生する前にできています」

誰がこのコメントを入れたかは今なお謎であるが、寒汰はこれをルーピーの仕業だと思い込んだ。

そして「ルーピーは世界史学部(そんな学部な実在しない)出身だ!」と思い込んだ。

 

さらに、寒汰はルーピーがコンピュータに詳しい(と言っても、ハードディスクとメモリの区別くらい誰でもつくが)のも知っていた。寒汰理論から行くとルーピーはコンピュータ学部(そんな学部は実在しないが)卒業でなくてはならなかった。

混乱した寒汰はこう結論づけた。

「ルーピーは在日朝鮮人で学歴詐称だ!コンピュータ学部出身で英文科卒で世界史学部出身、ありえない! ルーピーは学歴を詐称して自慢しまくっている!」

寒汰は大得意の2ちゃんねるでこの思い込みを書いて書いて書きまくった。

ルーピーは自分ではどこの大学卒業かすら寒汰には言っていないわけだし、学部については寒汰が勝手に思い込んでいるだけであった。それで学歴詐称と言われるのはいい迷惑としかいいようがない。

さらに、日本でも有数の家柄であるルーピーを純粋の大和民族でないアイ◯人の末裔の寒汰が在日朝鮮人よばわりするほど滑稽なことはなかったが、そこには寒汰独特の思考回路がまたも働いていた。

寒汰にとって憎い存在は全て同根でなければならなかった。

それゆえ根拠なくルーピーを在日朝鮮人だと思い込んだのである。

現実の世の中には英語ばかりか何か国語も流暢に話せ、プログラミングができ、歴史も地理も詳しく、スポーツもできるような人間は山のようにいるのだが、

低能な寒汰の周辺ではそんな人間は45年間誰ひとりとして居なかった。

もっといえば、あらゆることに低能な寒汰にはそんな何でもできる人間がいることは理解できる訳もなかった。

だから、寒汰はルーピーのような人間が存在することが本気で信じられなかったのである。

 

いつしか寒汰はルーピーを攻撃することが生きがいになっていた。

寒汰は徹底した粘着調査でルーピーの周辺情報を探った。

ストーカーで警察に捕まること4度を数えたが、寒汰はついにルーピーの弱点をつかんだ。

ルーピーの本名や勤務先、担当する得意先の名前を2ちゃんねるに書き込みほくそ笑んだ。

さらにルーピーがフィリピンパブ「海兵隊」で二股をかけていることもつかんだ。

ルーピーは「普天間子」と「への子」という二人の女の両方に気を持たせることを言っていた。

そこで、寒汰は二人にルーピーが魔尼羅で買春している写真を送りつけたのである。

これにはルーピーも困り果て、やがてルーピーは魔尼羅から退陣し、やがて入れ替わるようにイラ管&センゴクという二人組が魔尼羅にやってくるるようになるのだが、それはまた別の話。

ともあれ、寒汰はルーピーへの嫌がらせが一定の効果を収めたのをみて大喜びした。

「俺、正義の味方!俺、ルーピーやっつけた!俺、偉い!俺、偉すぎるぅぅうう!」

寒汰がやったことは正義どころがただの犯罪行為であったが、凄まじく自分に都合の良い妄想を抱いている寒汰にはそんなことが理解できるわけもなかった。

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

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