寒汰とカラオケ(KTV) II – 婚約

寒汰は有頂天だった。

この世に天国があるとしたらまさにこのことだと思った。

なにせ、素人はおろか、ソープ嬢にすら裸足で逃げられるほど女性には嫌われている寒汰である。

その寒汰に、日本人ではないとはいえ、お色気ムンムンの若い娘が金さえ払えば脚が触れるくらいの距離で座ってくれて、しかも延長時間が迫ってくると必ず「アイラビュー」と機械的にささやいてくれるのだ。

寒汰は叫んだ「パライソ!」フィリピンパブはこの世の楽園としか思えなかった。

 

そして寒汰は狂ったようにフィリピンパブに通うことになった。

通ううちに、寒汰は多くのことを学んだ。

  • フィリピーナとの会話は日本語ではなくアコディバ語という外国語で行うのが紳士のマナーである。
  • アコディバ語とは日本語の「私」を「アコ」に変換し、語尾に「ディバ」とつけるだけなのだが、それだけでフィリピーナと親密度が500%はアップする魔法の言語である。
  • フィリピーナはお金のために嫌々仕事をしているのだが、俺のためだけには本気でサービスをしている
  • フィリピーナは純真。カトリックの教えで結婚するまでは絶対にセックスはしないのだ
  • フィリピーナはハンサムが嫌い。向こう側の席にいる若くてかっこいいお客にべったりくっついているのは無理やりさせられているだけで、内心嫌がっているに決まっているのだ
  • フィリピンパブの客はスケベばかり。店内で女の子の全身を触りまくったり、ぶちゅぶちゅキスをしてけしからん。俺は、そんな奴らを絶対に羨ましいとは思ってないぞ!絶対に思ってないぞ!
  • 俺は決して触らせてもらえないのではなくて、紳士としてわざと触らないだけなのだ。そんな紳士の俺に惚れてしまう女が多いに決まっている。
  • フィリピーナにシングルマザーが多いのは偏見。少なくとも俺が指名している女の子は、絶対に絶対に間違いなく結婚もしてない。もちろん子供なんかいるわけがないし、500%絶対にバージンなのだ。
  • フィリピーナは純真だから麻薬なんて絶対にしない。俺が指名しているこの子も60時間寝てないけど、それは異国の地で不安で寝れないだけなのだ。
  • フィリピーナは真の男らしさを見抜く力がある。俺が今まで日本で全く持てなかったのは、俺が国際派すぎるからだ

フィリピーナの純真さと自らのあまりの国際センスぶりに感動した寒汰は、早速パブの中でもダントツのポクポク娘(意味は分からないが、どうやらタガログ語での褒め言葉のようである)であるアイリーンに求婚した。

出会って3日目の求婚だったので、若干遅すぎる気もしたが、アイリーンは見事に求婚を受け入れてくれた。

翌日、婚約記念として携帯電話を5台、寒汰が持参したのは言うまでもない。

 

フィリピンパブにはまりきった寒汰は、自分にここまでの幸せを与えてくれるフィリピンと言う国に

とてつもない憧れを抱くようになった。

そして、自分がそのフィリピンにお返しできることは、フィリピンパブに巣食うスケベオヤヂたちの魔の手から

純真なフィリピーナを守りぬくことだと思い込むようになった。

「俺、フィリピンの守護者!俺、カコイイ!俺、偉いぃぃぃぃぃ!!」

釧路の地に夜な夜な寒汰の野太い声が鳴り響いていた。

ちなみに、フィリピン人のうち日本に来る所謂じゃぱゆきさんは、フィリピン人の中でも特殊な層であり一般的なフィリピン人とは相当かけ離れた存在であるのだが、

人並外れて先入観が強く海外経験も全くない寒汰にはそんなことは判る由もなかった。

 

フィリピンの守護者を自ら名乗りはじめた寒汰は、やがて毎日「パトロール」と称してネットを荒らすようになった。

フィリピンパブ関連のネットで、フィリピン人の悪口を書いている人間がいれば容赦なく攻撃し、

粘着に個人情報を調べ、それをネット中で晒し始めた。

もちろん、それは犯罪行為なのであるが、フィリピンの守護者を自認する寒汰にはそれは正義としか感じられなかった。

「俺、フィリピンのために働いている!!俺、正義の味方!俺、偉い!ぐふふふふふ」

釧路の空には前にもまして不気味な声が夜な夜な響きわたるようになった。

 

フィリピン関係のネットを荒らしまわっている寒汰であったが、とりわけ彼が気に入らなかったのが、

フィリピン娘の貞操観念を貶める輩であった。

「昨日マニラクイーンのKーナと同伴してホテル行っちゃいましたw」

「エタニティのシンディとはアフターで錦糸町のホテルに直行しました。当然いつものように中田氏w」

「新小岩のバ◯ナで昨日、店内でしゃぶられちゃいましたw あの店は本当に過激っすねえw」

 

世界一貞操観念に厳しいフィリピーナたちが、そんな破廉恥なことをするわけがないのである。

こういう書き込みをする奴らは嘘を書いているに決まっているのだ。

寒汰は怒りに震えてそんな輩の個人情報をいつもにもまして徹底的に調べ、ありとあらゆるサイトで晒しまわるのであった。

 

寒汰がそんな「正義の行為」を行っていたある日、得意先への出前に行った帰り道、寒汰はラブホテル街の前を通っていた。

ラブホテル街を見ながら寒汰は思った。

「俺も、アイリーンといつかは、こんなところに来て凸凹。いや、ダメだダメだ。

こんなラブホテルにお金を使ったらとんでもない無駄金使いと思われてしまう。

やはり記念すべき最初の凸凹は、吹きさらしの河原で青姦がいい。

ホテル代をかけずに凸凹したら、俺の節約家としての偉大さに彼女は惚れ直すだろうなあ。

くぅーーー!俺、カコイイ!俺、偉い!」

人類史上まれにみるドケチ人間の寒汰はどうしようもないくらい女性心理を履き違えている点が多々あった。

 

寒汰がキチガイじみた妄想をしながら薄汚いバイクをのろのろと走らせていると、

ホテルから突然出てきたカップルにぶつかりそうになった。

 

「コノヤロー! イカウ、気をつけるするナ!!」

しゃがれた声で怒鳴ったその女は、他ならぬアイリーンであった。

 

(続く)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

2 Responses to 寒汰とカラオケ(KTV) II – 婚約

  1. jumpojp says:

    すてきな夢のある展開ですね。
    続きが気になります。
    しかしながら素晴らしい勘違いの数々、あそこまで勘違いしていたら私なら「おみそれしました〜」とひれ伏してしまうかも^ ^;

    • jumpojp さん、夢はいっぱいありますね〜ww ま、夢というより単なる妄想ですけどww
      確かに寒汰の妄想は世界記録級です。ある意味偉大ですねw

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