真夜中の食事 – アドボ子物語 IX

Apple 純正製品を買った後、もう用は済んだとばかりにアドボ子は寒汰と一切口を効かなくなった。

一方寒汰は考えた。

「念願のソフトを買ったから嬉しくてワクワクなんだろう。だから俺の声、聞こえない。俺、相手の気持ち分かる。俺、偉い!」

どこまでも見当はずれな勘違いをする寒汰であった。

「ホテルに早く行こうよゲヒヒヒヒ」

という寒汰に対してアドボ子は冷酷に言い放った。

「ソフト買うだけの約束でしょ。私帰るから。じゃ!」

全くふりかえりもせず小汚いスリッパを履いて立ち去るアドボ子の貧相な後ろ姿を見ながら寒汰はこう思った。

「やっぱり早くソフトを使いたいんだな! 俺の考え、いつも当たる!俺、偉い!」

しかし心のどこかに割り切れないものを感じていたのも事実である。

その日、夜中に寒汰はふと目を覚ました。アドボ子とまた凸凹をしたくて魔尼羅に通ってもう半年になる。

今回は凸凹するためにドケチの自分が大枚をはたいて純正ソフトを買った。

今度こそ凸凹できるはずだったのに結局また一人寝している。どうしてだろう。

腹も減った寒汰は近所のファーストフード店チョーキンで腹ごしらえをすることにした。

勝手に酒を持ち込んで一人酒盛りしていて注意をされたあの店である。

店員は誰もが寒汰を覚えていた。

寒汰が何を注文しようとしても「もう売り切れてありません」と冷たく答えるだけである。

かろうじて水だけ確保した寒汰は言い知れぬ寂寥感を感じるのであった。

テーブルの上のメニューをみるとアドボがあった。

寒汰手製のグロテスクな日本料理を食べて懲りたアドボ子が「やっぱり私が一番好きなのはフィリピン料理。アドボなら食べたいな。(だから金をもっと出せ)」

と言っていたのをふいに思い出した。

意識するともなく

「出会った頃は天使のようだったのに」

と寒汰はつぶやいた。

『そう、私素人の女子大生なの〜』

(※ アドボ子の本音 -> 「そんなわけねーだろ、このゴミクズ!金だけ出してとっとと死ね!」)

目を閉じるとアドボ子の演技力満点の猫なで声が聞こえてくるようである。

ふと、寒汰のいかつい目から液体がこぼれ落ちた。

その液体は寒汰の涙であったが、やはり異常に汚く臭かった。

深夜のファーストフードチョーキン。ドブ川より汚いパッシグ川の香りがする水を飲みながら、一人涙を流す買春オヤヂ。

彼が日本人社会で一番の嫌われ者の寒汰と知る者は誰もおらず、ただ店員たちは口々に「汚く臭いトラブルメーカーはとっとと帰れ」と言うのであった。

そして、それを聞いた寒汰は「俺、噂されてる。俺、偉い!」とまたまた大きな勘違いをするのであった。

(寒汰物語 アドボ子編 完)

About plastictakata
暗黒の国フィリピンやパッツン天国タイでばら撒き、自主パト、凸凹するのが趣味の57歳のオサーンです

4 Responses to 真夜中の食事 – アドボ子物語 IX

  1. AC says:

    そーだったんですね。
    あ、いや、小説、なんでしょうけど w
    寒汰、しばらく前にTwitterで(ほとんど英語でしかtweetしてない)ワタシをaddしてきたんですけど、もちろんblockしました www

    しかし、です。以前のブログから時々拝見させていただいていましたが、何故にそこまで寒汰にこだわるのか、ちょっとソコに興味がわいたりします。

    「小説」の続きが楽しみです w

    • 寒汰はいろんなところに出没してますね〜w

      私が寒汰という珍獣を研究するのはやはり人間の醜い部分をあれだけ一身に凝縮した存在は他にいないからでしょうねw

      寒汰の今後は私も気になりますね〜。

  2. jumpojp says:

    拝読いたしました。最高ですね。まるで見て来たようこれまでの寒汰の行動とつじつまが会いますね。最後は哀れですかきっと翌日には流したド汚ない涙のことも脳内変換されて「俺、本当は抱かれたいはずの娘に手を出さずに帰した。俺紳士」となるんでしょうねw

    • ははは。伊達に寒汰の観察を続けてないので、
      彼が書く文章の行間が読めるんですよ。

      ま、実際の場面を見たわけではないですが、遠くは外れてはないと思いますよ。

      彼も現実が頭の片隅では分かっていて、だからこそ文章の中に事実の断片が残ってるんですよね〜。
      それをつなぎあわせると、こういう物語になりますw

      >「 俺、本当は抱かれたいはずの娘に手を出さずに帰した。俺紳士」となるんでしょうねw

      ご名答! その通りのことが寒汰のブログに書いてありますw

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